土曜日, 10月 09, 2004

需要予測の方法

ABCD
1($M)ICT支出移動平均法(3期移動平均)
219931,347,609
319941,437,290
419951,610,296
519961,736,0281,465,065=sum(B2:B4)/3
619971,827,0721,594,538=sum(B3:B5)/3
719981,982,7931,724,465=sum(B4:B6)/3
819992,153,2111,848,631=sum(B5:B7)/3
920002,328,4691,987,692=sum(B6:B8)/3
1020012,415,0982,154,824=sum(B7:B9)/3
1120022,492,3812,298,926=sum(B8:B10)/3
1220032,592,0762,411,983=sum(B9:B11)/3
132,499,852=sum(B10:B12)/3
 
出所:WITSA

この方法だと当然ながらICT支出が増加基調にある場合には控えめの予測結果になってしまいます。
そこで、今度は傾向を織り込んで予測してみます。

ABCD
1($M)ICT支出トレンド法
219931,347,6091,339,842=FORECAST(C2,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
319941,437,2901,470,461=FORECAST(C3,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
419951,610,2961,601,080=FORECAST(C4,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
519961,736,0281,731,700=FORECAST(C5,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
619971,827,0721,862,319=FORECAST(C6,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
719981,982,7931,992,938=FORECAST(C7,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
819992,153,2112,123,558=FORECAST(C8,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
920002,328,4692,254,177=FORECAST(C9,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
1020012,415,0982,384,796=FORECAST(C10,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
1120022,492,3812,515,416=FORECAST(C11,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
1220032,592,0762,646,035=FORECAST(C12,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)
132004 2,776,654=FORECAST(C13,$B$2:$B$12,$A$2:$A$12)


だいぶもっともらしい数値になってきました。
そこで、この場合に移動平均法とトレンドを加味した方法とでどちらが精度が高いのかを比較してみます。

ABCDEF
1($M)ICT支出移動平均法トレンド法
219931,347,609 1,339,842
319941,437,290 1,470,461 =ABS(D5-B5)/B5
419951,610,296 1,601,080=ABS(C5-B5)/B5
519961,736,0281,465,0651,731,7000.1560820.002493
619971,827,0721,594,5381,862,3190.1272710.019292
719981,982,7931,724,4651,992,9380.1302850.005117
819992,153,2111,848,6312,123,5580.1414540.013772
920002,328,4691,987,6922,254,1770.1463520.031906
1020012,415,0982,154,8242,384,7960.1077690.012547
1120022,492,3812,298,9262,515,4160.0776190.009242
1220032,592,0762,411,9832,646,0350.0694780.020817
13 12.01.4
14 =AVERAGE(E5:E12)*100
15 =AVERAGE(F5:F12)*100
16 平均絶対誤差率


移動平均法とトレンドを加味した方法とを実際の値との違いで比較してみると格段の違いがあるということが分かります。

金曜日, 10月 08, 2004

米消費減速

国際ショッピングセンター協会の"Monthly Mall Merchandise Index"によると、米主要小売業71社の9月の売上高伸び率は、前年と比較可能な既存店ベースで前年同月比2.4%増となり、米国の消費減速傾向が継続していることが裏付けられた。
発表された統計によると、売上高合計は598億ドル、既存店ベースでは564億ドル。前月比伸び率は8月の1.3%増を上回ったものの今年2番目の低水準。
消費減速の要因としてはガソリン価格の高止まりとハリケーンの影響が指摘されている。

月曜日, 10月 04, 2004

現金給与総額、8月0.2%減少(毎月勤労統計調査)

厚生労働省が4日発表した8月の毎月勤労統計調査(速報)によると、従業員5人以上の企業の月間平均の現金給与総額は28万8524円で、前年同月比0.2%減と4カ月連続の減少。一方で、物価の変動の影響を除いた実質賃金は前年同月水準と同じに。実質賃金は2001年、2002年、2003年とマイナスが続いている。これは物価の下落よりも賃金水準の下落のほうが大きいということになる。果たして、実質賃金がプラスになるような動きになるのか。
なお、従業員5人以上の企業の月間平均の現金給与総額の減少はパート社員の拡大などで、基本給に当たる所定内給与が0.6 %減ったことが影響している。
正規従業員からパートへのシフトという現象が賃金水準を下げている。
常用雇用は、前年同月比0.6%増となった。このうち、一般労働者は
このシフトは、常用雇用者自体は前年同月比0.6%増であっても、そのうちの一般労働者が0.1%減なのに対して、パートタイム労働者が3.7%増というところにも表れている。
こうした中で総務省が、現在は課税漏れとなっているフリーターやパートなど1年未満の短期就労者から個人住民税を徴収するために、企業に短期就労者の給与支払い実績の報告を義務付ける方針を固めたというニュースを耳にすると、いくら実施が2006年度適用、2007年度実施とは言っても、どういう影響が出てくるのか。
フリーターという雇用環境から締め出された若年層に対する対策とのセットなしに、足りないから税金払えというのは如何なものか。

静かな地殻変動

モルガン・スタンレーのウィークリー・インターナショナル・ブリーフィングの9月20日付記事はStephen Roach氏による『グローバル:生産性の最終段階?』というもの。
この中で氏はITは生産性上昇に貢献したが、その生産性上昇が限界に達しつつあるという指摘を具体的な数値を挙げて示している。

まず、

「情報処理機器およびソフトウエアは現時点で実質企業設備機器投資の58%を占め、1995年の35%から著しく増加」

したことでITそのものが飽和状態になっているとする。
しかし、こうした"飽和論"は狼少年的に繰り返されてきたので、これだけでは肯定するわけにはいかない。
とはいえ、

「生産性回復が「容易に達成される」局面がほぼ終了した可能性がある」

という指摘には耳を素直に傾ける必要がある。

次に、

「単位労働コストは2002、2003両年に平均0.75%減少した。少なくとも第2次世界大戦以降、労働コストが2年間でこれほど著しい減少を示したことはない」

という事実と

「2003年における企業設備投資のうち「純」投資の部分、すなわち投資総額から減価した資本の更新に係る支出を控除したものは、2000年のピークを約60%下回った」

つまり、米国企業は過激なコスト削減に走って、生産能力増強投資を行わなかったという事実を挙げて「コスト削減が限界に近づいた可能性」があるとする。

それでは、果たして生産性上昇トレンドの低下という現象は実際に発生しているのか。
米国労働統計局の統計によると、過去11四半期の企業の生産性上昇率の平均は年率4.5%。
2002年平均は4.4%、2003年も4.4%。
しかし、2004年第1四半期は3.7%、第2四半期は2.5%と上昇率が鈍化してきている。
([参照])

コスト削減による生産性上昇という効果は、こうした数値を見る限りでは剥落しつつあると言える。
そして、その代わりに売上を増加させるためのITというのが重要性を増してきている。見掛けの生産性上昇という意味では同じように映るけれども、このコスト削減のためのITと売上増加のためのITはかなり違う側面を持っている。

その典型的な例とも言えるのが
"Amazon to build, run Bombay Co. Web sites"
という、年商6億ドル、うちオンラインセールスが1700万ドルの家具雑貨販売チェーン、Bombay Co.のサイト構築およびホスティングをAmazonが受けるという記事。
Bombay Co.はIBMのユーザーだった点も重要だけれども、何と言っても、この契約が売上増加に応じてAmazonにフィーを払うという形態を採用している点。
サイトの最下部の" bombaycompany.com powered by Amazon Services"という一文の"powered by"の意味が違う。

IBMが唱えるオンデマンドは、こうした静かな地殻変動に耐え得るのだろうか。疑問の余地があるところ。

IT支出の伸びの関係

売上と総支出との伸びの関係は次のように表現することが出来ます。

△(総支出/売上)=△総支出/総支出(-1) - △売上/売上(-1)

また、

△総支出/総支出(-1) = IT支出の伸び + 非IT支出の伸び

IT支出の伸び = △IT支出/IT支出(-1) * IT支出(-1)/総支出

となります。
これらを合わせると、

△IT支出/IT支出(-1) * IT支出(-1)/総支出
           = △売上/売上(-1) - 非IT支出の伸び

となり、
ここで短期的な変動を無視して中期的なことを考えると、
△売上/売上(-1) つまり売上の伸びの期待値は一定。
非IT支出の伸びも売上の伸びに対応して一定ということを仮定出来ます。

すると、売上の伸びに変化が期待出来ない場合には
総支出に占めるIT支出の比率が上昇するとIT支出の伸びが鈍化するということが言えます。
逆に言うと、IT支出のが伸びるのは期待される売上高の伸び率が上昇した場合とIT支出の総支出に占める割合が減少した場合となります。

企業価値の源泉

ゴールドマン・サックスの
日本株のリスク・プレミアム:市場レベルから銘柄選択までの応用
というレポートの中で興味深い結果が出されています。


EVA = f (投下資本、投下資本利益率、総資本コスト率)

なので、EVAで収益性を代表しているのは投下資本利益率( ROC )。

投下資本利益率(ROC) = NOPAT ÷ 投下資本
= ( NOPAT ÷ 売上高 ) × ( 売上高 ÷ 投下資本 )
= NOPATマージン × 投下資本回転率

このROCが業界平均へと収斂する速度を求めることで、何が企業価値格差の源泉となるのかを分析しようというのがGSのレポートの趣旨。

情報通信セクターは、NOPATマージンの収斂速度、投下資本回転率の収斂速度ともに最も高く、さらに投下資本成長率の収斂速度も公益セクターに次いで高いという結果。
公益セクターはバリュー・ドライバーの格差が小さいことが投下資本成長率の収斂速度を高めるという結果に結びついているという側面があるので置いておくと、情報通信セクターは3つのバリュー・ドライバー全てで業界平均への収斂速度上位ということに。

これは
(1)一度優位性を確立すると相当期間優位性が持続する
(2)(1)のために常に新規参入圧力が働く
(3)投下資本成長率の収斂速度が高いということから、市場規模の期待成長率が企業価値に重要なファクターとなる
ということになります。

テクノロジー・セクターの場合は、丁度、情報通信セクターと素材セクターの中間。

NOPATマージンの収斂速度が上から4番目であるのに対して、投下資本回転率の収斂速度は上から2番目、投下資本成長率は4番目。

これは、テクノロジー・セクターでは投下資本回転率こそが企業価値の源泉ということになります。

日本のSI市場はどっちに流れている?

日本のSI市場はどう動いていくのでしょう。
単価の下落によって市場の拡大スピードが落ちているということが指摘されています。
しかし、経済産業省の「特サビ統計」では、明確な形でSI市場の拡大スピードが落ちているということを確認出来ません。
しかも、単価の下落という現象も日銀の「企業向けサービス価格指数」では確認出来ません。

公式な統計であれ、民間の統計であれ、完全な統計というのを期待するのは無理で、そこには何らかの推定の誤差が多かれ少なかれ含まれています。
これが民間の調査ではなおさらということになります。
そうだからといって、それらの数値を全く信用しない、あるいは自分のストーリーに都合の良い結果だけを採用するというのも考え物。
こうした場合は、一つの調査結果で全てを上手く説明しようという方針を捨てて、幾つかの結果を組み合わせて推論を行ってみるべきでしょう。
定性情報に頼りたい気持ちになりますが、100の定性情報を積み重ねても1つの反証としての定性情報が出てしまうと仮説が脆くも崩れ去ってしまいます。

というわけで、一体、SI市場がどう動いていくのかということを考えて見ます。


まず、「IT関連統計資料集」の

表26 情報サービス業の事業所数,従業者数及び年間売上高等(平成8~13年)

を見ると従業員一人当たり売上高は上昇しています。
(※最新の統計数値)

単価(人月単価)も大きく下落せず、SIの売上総額も伸びていて、かつ1人当りの売上も減っていない。
ここまでだと、日本のSI市場に関する各種の定性情報とは食い違います。
但し、IT系アナリスト以外の各種の情報を見てみると「足下の旺盛な設備投資によってSI市場の単価も上昇、SI市場も伸びている」とする見解も僅かにあります。

一方で、同じ資料集の

表45 コンピュータ利用企業の1企業当たりIT関連諸経費年間支出額(平成8~13年)

1企業当たりIT関連諸経費年間支出額を見ると少し減っています。
但し、最新の統計では上昇しています。


ここまでですと、
これは、少なくとも、日本のSI市場は(成熟しつつあるとしても)拡大している。
その中で利益が出ないということはSIer自体の生産性の問題であって市場の問題ではない。
と言えるかもしれません。

ですが、短絡的に結論を出さずに、もう一段進んでみます。
定性情報と定量情報が異なっている中で根拠なしに片方を全面的に信用すれば方向性を見誤ることになります。

日本全体のSIの売上総額は次のように分解して考えることが出来ます。

( 人月単価(1)×必要人月数(2)×ベンダー数(3) )×ユーザー企業数(4)=総額(5)

(1)は上昇↑:サービス価格指数より
(2)は下落↓:定性情報
====>(1)×(2)=1ベンダーにとっての受注単価===>下落↓:定性情報

しかし、
(1)×(2)×(3)=ユーザー企業の1社当り平均支出は上昇↑
====>プロジェクトが細分化されている?

(4)はおそらく上昇↑なので
(5)も上昇↑

こう考えると、個々の現象が一応は決して矛盾していないと言えるでしょう。

以上から将来を考えると、
(1)は 横ばい→ or 上昇↑ と考えられるので、足下の傾向からすると伸び率が鈍化しているため 横ばい → となる可能性が高い。
(2)は 下落↓:これは収益環境改善とリンクする可能性があるでしょう。
===>従って、ベンダーにとっての受注単価は下落↓傾向になる可能性が高い
以上から
(3)は 収益環境から淘汰が進むので 下落↓ or 出入りがあっても 横ばい→
一方で、遍くIT化されることを考えれば
(4)は 上昇 ↑ しかし、 既に普及がある程度進んでいることを考えれば 横ばい→ 
とすると、

SI市場全体では横ばい→。

しかも、1ベンダーにとっては受注単価の継続的下落を伴った総額の増加(=豊作貧乏)。

なお、(3)は開発期間、(4)はシステム需要数としたほうが良いかもしれません。

世はサービスデフレ

日本経済の現況をメモ。

2004年4-6月期の実質経済成長率は年率1.3%と1-3月期より鈍化。
成長鈍化の原因は民間設備投資と輸出の鈍化。
一方、名目成長率は年率2.1%減と5四半期ぶりのマイナス。これは、公共事業(公的固定資本形成)が減少していること、民間設備投資の伸びが鈍化したことが大きい。
民間設備投資に関しては先行指標である電力・船舶を除く民需の機械受注の7月の数字が11.7%の減となっているところが懸念材料。但し、短観等を見る限り、受注減は一過性と考えられる。
国内企業物価は国際市況の影響を受け上昇、その一方で企業向けサービス価格は減少傾向に変化なし。消費者物価は前年比では小幅下落であり、GDPデフレータは依然として2%台の下落を示しデフレ傾向。
鉱工業生産は前年同期比で増加基調。在庫も減る傾向。本来なら1-3月以降は在庫調整の局面に入るはずが回復局面を継続。

SIもソフトウェアも特サビ統計を見ると増加。ところが、状況は厳しいものがあるということは、サービスデフレが進行中であることの一つの証拠といえる。

医療IT市場概算

厚生労働省「医療施設動態調査」によると平成16年4月末現在の病床数は病院だけで約163万。

全日病協会による病院情報システムのメンテナンス費用は年間平均1081万/100病床

○IT関連コスト調査結果
  (日本医療法人協会会員=回答78病院。03年10月実施)
  ●レセコン年間メンテナンス費用  731万4,000円(平均215床)
  ●院内LAN年間メンテナンス費用  77万7,000円(平均217床)
  ●院内PHS年間メンテナンス費用  69万2,000円(平均248床)
  ●診療報酬改定時レセコン組替え費用(100床あたり)
          2000年および2002年改定の平均 31万9,000円


○診療情報管理に必要なコスト
(日本診療録管理学会・平成14年度「カルテ等の診療情報の提供のための支援事業」報告書)
 ●診療情報管理部門人件費と診療情報管理経費
  99床以下   人件費(月額) 60万円強  経費(月額) 約13万円 
  100~399床            100万円強          約36万円
  400床以上             120万円強           約74万円

両者足しても大した金額にはなりません。

これに対して、
全国9.6万施設(病院+一般診療所)の 20 - 60(厚生労働省) %に電子カルテが普及するとすると、

9.6 × 0.2 = 1.92
9.6 × 0.6 = 5.76

1施設1億 ====> 2~6兆円程度 が最大値。
2003年度のPCの国内向け出荷額が1兆6,120億円ということから考えると、上記の両者を合わせた医療関連のIT市場の潜在的規模は決して小さくないということになります。