金曜日, 5月 28, 2004

法則?

ニュース記事における言葉の発生率や、WebへのトラフィックがZipf's lawに従うということは広く知られています。
ただ、こうした現象を法則などと呼ぶのはどうかという意見もあります。
そうではあっても、全商品の20%が80%の売上を作るとか全顧客の20%が全体売上の80%を占めるなどといった経験則もまたZipf's law(パレート法則)の一つのバージョンでありしばしば引用されるところ。

そればかりではなく、メールの開封率とアクティブ率との関係にも当て嵌まるということがポイントゲート社のレポートで"発見されています"。

意外と、身の回りの事例にもZipf's lawが存在しているかもしれません。


改善する消費関連指標

日本経済にとっての懸念材料であった消費が動き始めている。設備投資や輸出主導で経済が動いていただけに消費の盛り上がりのなさが心配されていた。景気も米国次第とか夏場以降は微妙な局面に入るなどとも言われていた。
しかし、消費も動きはじめているということが今日発表の消費関連の統計指標で明らかになった。
総務省発表の4月の勤労者(サラリーマン)世帯の家計調査によれば、前年同月比7.2%増加して1982年10月以来21年6カ月ぶりの高い伸びを記録。1世帯あたりの支出額を項目別でみると、教養娯楽が前年同月比14.4%増となった他、パソコン購入費も前年同月の約2倍。デジタル景気がここにも現れている。
消費が増え始めたのは、先行きの収入への不安が和らいだからとも言えるだろう。そのことを傍証するのが、同じく今日、総務省から発表された4月の完全失業率。率こそ、季節調整済で4.7%と前月から変化がなかったものの、完全失業者数を見ると11カ月連続で減少し前年同月比50万人減の335万人。但し、女性の完全失業率が0.1ポイントとわずかながら上昇しているのが気にはなるが誤差の範囲か。
そう思いたい。

コピー機の販売から情報サービス企業へ

IT、いわゆる情報技術が普及していくのに従ってITが無くてはならないものになるのはIT産業にとっては望ましいこと。そう考えられてきた。そして、それはITベンダーにとっては常識だった。
でも、しかし、そうも言っても居られないでしょう、ということは少しは認識されてはいたこともまた事実。大日本印刷やトヨタを引き合いに出すまでもなく、ITなどといったカタカナ流行語を冠する業態を本業としない企業がITと呼ばれる領域に「自然」に参入していることからも常識は常識ではないということは明らか。いわば認めたくない常識。ITは世の中にとって必要な製品になったでしょ。だから、IT企業の未来も明るいね、と。ところが、このITという摩訶不思議な分野の需要が仮に5%で伸びつづけたとしても、ITの領域に参入することが容易になって他業種が続々と「普通に」参入してきたら、それでもIT企業は安泰だろうか。
今日、キヤノン販売がSAPジャパンと提携してERP事業に乗り出すことを発表した。中心となるキヤノンシステムソリューションズは住友金属システムソリューションズを引き継いだものであるし、キヤノン本体もITのハードの分野に軸足を置いているから、他業種からの本格的参入というイメージではない。
それでも、純粋なITベンダーではない企業であるとは言うことが出来るだろう。
IT戦国時代が始まったなどと言われるけれども、既存のIT企業が四国の勇者長宗我部氏のようにならねば良いが....


旧暦4月10日、丁未、先勝、二黒土星、満、亢

木曜日, 5月 27, 2004

素早い動き

米銀の動きが慌ただしい。JPモルガン、バンカメに続いて、今度はウェルズ・ファーゴがストロング・フィナンシャルの買収を発表。同資産運用会社は不正取引に関して政府に制裁金を払うことで合意したことが身売りの引き金を引いた。

旧暦4月9日 一白赤口

水曜日, 5月 26, 2004

米銀新時代

米銀第2位のJPモルガン・チェースが第6位のバンクワンとの合併を決めた。これで、シティ、新JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカの3大銀行時代の幕開けとなる。1998年のトラベラーズとシティコープの合併、今年4月のバンク・オブ・アメリカと第6位のフリート・ボストンに続く合併。因みに総資産は、
シティ:1兆2640億ドル
新JP:1兆974億ドル
バンク・オブ・アメリカ:9366億ドル
ワコビア:4008億ドル
ウェルズ・ファーゴ:3877億ドル
こうしてみると、新JPはワコビアの4倍の資産を持つ。

気を引き締めて

2002年に政府が纏めた不良債権の抜本的処理と金融と産業の一体的再生を目的とする金融再生プログラム。
この金融再生プログラムは、2005年3月期までに不良債権比率を2002年3月末から半減させるとともに、銀行の繰延税金試算の算入根拠の開示を2003年3月期から求めている。
現段階(2004.3)での各銀行グループの"成績"を見てみると以下のようになる(2003年3月期との対比)。

 最終損益(億円)自己資本比率不良債権比率
みずほ▲23,771⇒4,0699.53%⇒11.35%6.29%⇒4.40%
三井住友▲4,653⇒3,30410.1%⇒11.37%8.4%⇒5.0%
三菱東京▲1,614⇒5,60810.84%⇒12.95%5.34%⇒2.93%
UFJ▲6,089⇒▲4,0289.96%⇒9.24%8.67%⇒8.5%
りそな▲8,376⇒▲16,6393.78%⇒7.75%9.32%⇒6.74%


昨年夏、金融庁は収益向上を求める業務改善命令をみずほフィナンシャルグループなど大手5行と、福岡シティ銀行など地方銀行・第二地銀10行に対して行った。このうち、国有化された足利銀行は6月に決算発表のために除外すると、UFJホールディングスと熊本ファミリー銀行を除く12行が経営健全化計画で定めた利益目標をクリアしている。
UFJホールディングスは780億円の最終黒字という業績予想を大幅に下回る結果となったことを受けて杉原武社長以下、寺西正司UFJ銀行頭取、土居安邦UFJ信託社長が退任を表明。
こうした事態に対して、関係が深いトヨタ自動車の奥田碩会長(元社外取締役)が支援の姿勢を示していることが伝えられている。
不良債権問題は非常にややこしい。ただ不良債権を削っていけば良いのかというとマクロ的に見るとそう単純にはいかないということは多くのエコノミストが再三指摘して久しいところ。
しかし、それはマクロでの話であり、現在の銀行に日本のマクロ経済のことまで考えを廻らすだけの余裕はないだろう。不良債権に対しては淡々と処理をしていかなければならない。
そして、景気に明るい兆しがしっかりと根付きつつある今年こそ気を引き締めなければならないだろう。

火曜日, 5月 25, 2004

ちょっとリンク集

中国の市場を見るときに参照するのですが、いつも忘れてしまうもので....

中国通信統計
---中華人民共和国情報産業部(Ministry of Information Industry)
主要工業産品産量統計
---中国国家統計局 National Bureau of Statistics of China
「主要工業産品産量」統計では月次で携帯端末、PC,テレビなどの国内生産量の数値を公表している。
台湾通信統計
---中華民国交通部電信総局(The Directorate General of Telecommunications,Ministry of Transportation and Communication)

原油生産拡大は不透明に

世界経済の先行きに不安を投げかけている原油市場の動向。デフレの次は世界的なインフレが世界を覆うのか。
そうこうしている間にも、イラク情勢は"混迷"を深めている。
イラク暫定統治機構から行政権の委譲を受けたイラク保健省によると今年の4月5日以降駐留軍との衝突で死亡したイラク人は1,168人。
下表を見ても、"戦争当時"よりも"戦後"のほうが死者の数が多い。1日平均とすると、戦争当時の死者の数のほうが多くなるものの、この数字はイラクにおける治安の悪さを端的に表している。
そして、消費国側の強い要請にも関わらず、産油国側はサウジアラビアが増産を表明したほかは増産に二の足を踏んでいるとされる。産油国側にとっては原油価格の暴落を招きかねない増産は簡単には出来ない。しかし、現在の経済情勢を見ると、原油価格の暴落というのは有り得ないだろう。そうだとしても、既にOPECの生産量は事前に定めていた生産枠を超えている。
こうした中で、漠然とした消費国側のインフレ懸念やインフレによる世界経済の減速懸念だけでは産油国に目の前の利益を捨てて将来の全体の利益をとれなどとは言い難い。
24日のニューヨーク商業取引所米国産WTI原油の先物価格が41.72ドルという1983年の取引開始以来の高値を記録している。
米国はこれから行楽シーズンということも背景にあって、ガソリンの小売価格も上昇している。米国エネルギー省エネルギー情報局の統計によると、レギュラーガソリンの全米平均小売価格は1ガロン=2.064ドルと、前週比0.047ドル上昇と、これまた過去最高記録を更新している。

[イラクにおける死者数]
 米国英国その他合計
3月20日-4月9日117310148
4月10日-5月1日222024
5月2日-04年5月23日6622651739


出所:
米国国防総省 Department of Defense press releases
米国中央軍(CENTCOM) press releases
イラク駐留多国籍軍(CJTF7) press releases
英国国防省 British Ministry of Defense website
イラク死傷者数

[参考]
WTIはテキサス州沿岸産出の原油のことで、West Txas Intermediate の略。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)に上場されている商品としては最大規模であり、しかもAPI度44.0と純度が高いために通常、ドバイ原油よりも高値で取引される。

日本の企業規模別ソフトウエア投資

資本金別に見たもの。資本金別で見た中堅以下の規模の企業は数こそ多いですが、IT投資ということでは全体のわずか3%から4%の大きさに留まっています。

2002

2003
ソフトウェア投資(億円)10-121-34-67-910-12
1億円未満8161,3976401,308652
10億円未満1,1851,4731,0351,219965
10億円以上58,46272,54252,86359,32261,158
全規模60,46375,41254,53861,84962,775
構成比10-121-34-67-910-12
1億円未満1.31.91.22.11.0
10億円未満2.02.01.92.01.5
10億円以上96.796.296.995.997.4
母集団数
1億円未満2,593,323 
10億円未満27,960
10億円以上5,671

出所:財務省「法人企業統計」、総務省「事業所・企業統計調査」

[参考URL]
中小企業総合研究機構による中小企業関連統計
中小製造業投資動向調査:中小企業金融公庫

中小商業・サービス業投資動向調査:中小企業金融公庫
中小企業設備動向調査:商工中金
中小企業の情報化に関する調査:商工中金
中小企業庁統計集

■『従業員一人あたりのインフラ投資額は174.5千円/年』「企業IT動向調査2004」(独立行政法人情報処理推進機構)


IT支出はクールな局面に

どうやら、世界経済も上向きになってきているという中で、気になるのがIT支出はどうなるのかということ。
英エコノミスト誌ではメリル・リンチのSteven Milunovich氏による"ITの『波』は新しい技術が新しい技術への支出を伴う形で10年から15年は継続するだろう"という見解を紹介。例として、1970年代と1980年代初頭に企業がメインフレーム投資を行って、その結果としてIT支出がGDPの2%以下から3%へと上昇したことを挙げている。
同じ現象が2000年代にも起きるだろうという楽観的な、しかし根拠のある見解と言える。しかし、IT支出の対GDP比は低下してしまっている。ということは単純には図式が当て嵌まらない。これはITバブルの後遺症で、そのことを加味しても"IT spending is likely to grow only as fast as GDP for a few years"という。
また、ITバブル期のホットな技術に対してUBSのPip Coburn氏の言うところの"cold tech"の中で最もクールなのはLinuxで"In March, Forrester, an IT consultancy, found that 72% of corporate IT managers were intending to move their server-computers to Linux from Microsoft and Unix software. "という調査を紹介。クールな技術という表現は洒落たもの。投資が投資を呼ぶならぬ、技術が財布の紐を緩める。けれども、その技術はクールなもので、過剰な期待と興奮のあまりに収入の伸び以上に財布の紐を緩めることはないということか(IT支出はGDPの伸び相当で拡大していく)。
こうした動きに冷や水を浴びせる結果となっているのがSCOによる一連の訴訟。この点に関しては、フォレスター・リサーチの調査のように"it intimidated some 16% of firms into slowing their adoption of Linux"という懸念があるものの、HPによるユーザーに対する補償の動きが拡がるだろうとしている。つまり、クールな技術に対してはクールに対応ということなのだろう。


月曜日, 5月 24, 2004

メタで考える

[梅田望夫・英語で読むITトレンド]「ITは重要ではない」から「ITはどの程度重要か?」へでCarr氏の論とともにVarian教授の説に言及しているTechdirtの論が紹介されています。
『「sustainable competitive advantage」なんていう概念が、もう既に神話なのであって、現代の競争優位などというのは一瞬の儚いもの。良い会社というのは、「constantly innovating」によって「sustainable competitive advantage」を築くのだ』
これはITに限った話だと思うのですが、Carr氏のITコモディティ化説を受けてのものと考えられます。
つまりは、もう何と何を作って売れば良いというのは全く×であって、何と何はどんな機能を提供するのか、ユーザーはどんな"機能"を潜在的にも顕在的にも欲しているのかということを考えなければいけないということに繋がっていくのではないかと感じました。
製品の需要はどうかという視点ではなくて、製品はどういう用途に使われているのか。それぞれの用途の需要というのはどの程度あるのかということを考えなければいけないと思うのです。
各用途によっては、現在の製品を使わなくても良いかもしれません。
製品から考えるのではなくて、その1つ2つ上のメタ区分で考える。これは案外難しいことではあります。
サーバーの需要ということではなくて、現在のところサーバーが提供している機能に対するニーズがどうなるのかということで考える。そうすると、サーバーはオフィスから消えてなくなるなどというセンセーショナルな考え方もありますが、どうやらサーバーが提供しているような機能へのニーズは無くなりそうもない。
ニーズが無くなりそうもないということは需要が増えるか少なくとも一定であるだろうという想像に結びつきます。その上で、現在のサーバーに代替するような製品は出てくるのか、ということを考えてみる。ユーザー層が変化するのかということを考えてみる。代替は直ぐにはありそうもないでしょうが、ユーザー層の変化は起こるかもしれません。需要はそのユーザー層の懐具合に依存するでしょう。そうすると、ユーザー層が変化するということでまずは台数ベースに変化が生じ、やがて懐具合に応じて金額ベースも変化するでしょう。そうこうしている間に別のユーザー層も出てくるかもしれませんし、その新しいユーザー層に対応した製品セグメントも出てくるかもしれません。しかし、そうではあっても、サーバーが担っている機能に対する潜在的な需要のパイ自体は変化していないと思うのです。

アウトソーシングは伸びているか?

米国商務省経済分析局から興味深いリリースが出ています。
このリリースは、米国のサービス輸入は2000年以来低下してきていて、2003年には横ばいになっている。けれども、海外へのアウトソーシングは急激に増加している。これは、統計が間違っているのではないかという企業サイドからの疑問に答えたもの。米国の企業は数字を鵜呑みにするのではなくてきちんとチェックしているわけで感心します。
が、問題はそこではありません。
経済分析局の答えは、サービス輸入は確かに指摘の通りとし、そのサービス輸入の中で、その他民間サービス(名目)に含まれる"Business, professional, and technical services"の輸入が2002年以前の3年間は8%の伸びだったのに対して、2003年は16%も伸びているのだというもの。
この16%の伸びはアウトソーシングによってもたらされたと推測されるというのです。
この統計によると、"Business, professional, and technical services"の輸入は2002年には107億ドル、2003年には124億ドルと確かに16%の伸びです。しかも、2000年第1四半期以来一貫して伸びていますが2003年に入ってからは加速しています。米国のソフトウエア投資は1,811億。"Business, professional, and technical services"の伸びた16%の太宗がアウトソーシングだとすると案外結構な数値であり、各調査会社がついついこのセグメントでの市場規模を過大に推計したくなる気持ちも分かってきます。

[参照]オフショアのインパクトに関するITAAのレポート

IBM、IT支出は急回復と見る

IT支出は増加してきていて、しかも新分野(販路)が拡がってきていることから各セグメントとも急速に成長が期待出来るとIBMは見ていると19日付ニューヨークタイムズ紙が報道。
それによると、IBMはPC、サーバー、ストレージなどの"伝統的な"IT分野においても国内総生産の倍の成長率で成長すると予測しているとしています。
ちなみに、2004年第1四半期の米国の実質国内総生産(GDP)の成長率は年率4.2%。米国を中心に考えると、この2倍というのは8%超。
米国の実質IT投資は2004年第1四半期で16.2%、PC及び周辺機器も13.2%、ソフトウエアは14.5%の成長率。2003年第3四半期の20%台の成長率からは低下しているものの、10%台と安定している。
今回のIBMによる予測はこの状況がさらに加速し、しかも、しばらくは継続するということを自社データの分析から表明したものと言える。


米HP売上過去最高に

先日、米HPが2004年Q2決算発表。売上高が過去最高の201億ドルで前年比12%増になっている。
もはやかつての伸びは期待出来ないと呼ばれるIT産業。しかし、どっこいIBMなどは2桁の成長が戻るだろうなどと予測している。米国商務省発表のIT投資の統計を見ても確かに2桁の伸び。そんな中でのHPの売上高12%増は米国のIT産業が勢いを盛り返してきている証左かもしれない。

ちなみに、HPの部門別収益は
パーソナルシステム部門:前年比17%増
--サービス部門:同15%増
--イメージング/プリンティング部門:同11%増
--エンタープライズストレージ/サーバ部門:同8%増
--ソフト部門:同23%増
とソフトとサービスが大きな伸びとなっている。

一方、地域別の売上高は、
--米大陸:84億ドル、前年同期比4%増
--欧州:83億ドル、同17%増
--日本を除くアジア太平洋地域.:24億ドル、同22%増
--日本:9億6700万ドル、同21%増
と欧州の寄与度が大きい。



日曜日, 5月 23, 2004

迫る石油インフレ

OPECが22日の非公式会合で生産枠の拡大を見送った。国際エネルギー機関のシミュレーションによると原油価格が1バレル10ドル上昇すると世界経済の成長は0.5パーセント押し下げられるという。ただでさえ、中国経済の高度成長による原材料需給逼迫が企業収益に不安材料を与えている。またイラクの不安定が原油の需給逼迫予想を市場に広めている。アムステルダムで始まった第9回国際エネルギーフォーラムでの歩み寄りが経済失速を事前に回避するための大前提だ。