金曜日, 1月 09, 2004

世界経済展望

上がって、少し下がる。というイメージです。
日本は上がって上がるという基調ですが、政策面+輸出の動きに注視する必要が
あります。
欧州は英国を除いて潜水平泳ぎ状態。
息継ぎで水面に顔を出したところでハンマーで殴られる。
結局のところ元気が良いのは米国ですが、綱の上を全速力で走っている感じです。

[米国]
設備投資:足元は減税もあり堅調。2001年第1四半期からの積みあがった更新需要の顕在化が見られ、2桁の増加を維持する見込み。但し、耐久財出荷の動きが鈍ってきていることには注意が必要。特にIT投資には小休止とも言うべき状況下にある。
消費:2003年は雇用なき回復、ジョブレス・リカバリーが基調。生産が拡大しても雇用が増加しない場合、消費の拡大は見込めない。しかし、2003年末に非製造業で雇用の増加が観測され始めたこと、製造業でも改善の兆しがある。
また、2004年の2~5月の再度の所得税還付による効果を期待できる。なお、今財政年度の減税額は1,487億ドルとピークになる。この為に、少なくとも年前半での消費の失速はないものと考えられる。
住宅投資は2003年11月に1984年2月以来という207万戸の水準を付けた。2004年はこうした住宅投資が前年の反動減、急速な景気回復による長期金利の上昇によって減少することが考えられる。但し、雇用環境の改善があるとすれば大きな落込みとなる可能性はない。
在庫循環を見ても、在庫率の下ブレが6月から半年間継続しており、これによる在庫積み増しのための生産増が向こう半年は続くと考えられる。
以上から2004年前半の米国経済の失速は考えにくく、年末に供給過剰に陥る可能性は依然として捨てきれないものの年率3%台の成長は保つと考えられる。
もう一つの懸念材料はドル安であり、ドル安がドル安を生む状況なら海外資金の流入が止まり、家計、政府の赤字により米国経済が資金ショートとなる危険があること。


[日本]
基調としては(緩やかな)回復。短期的に在庫循環を見ると在庫調整局面入りしている(と考えられる)。
但し、山低ければ谷また浅しで、調整は表に出ないか短期間で終了する。
消費は意外に堅調。問題は、春以降の実質増税の影響がどの程度になるか。どちらに振れるにせよ、名目では微減あるいは横ばい、実質では微増となると思われる。
マクロで見て実質で増加するということは価格下落が激しい民生用IT機器の数量は掃けることを意味。
設備投資は企業業績の回復と輸出の増加により増加。先行指標である機械受注に勢いがあることから少なくとも半年は勢いを保つ可能性が高い。
懸念材料は、米国経済が2004年の後半には雲行きが怪しいこと。年金問題、税制問題など個人消費のマインドを冷やすような政策が採られていること、マネーサプライの伸びに勢いがないこと。3度繰り返すと言うが、繰り返しそうな環境が整っている。
IT投資の動きも設備投資次第であり、現状では後半には勢いがなくなると判断するのが妥当。

[欧州]
個人消費には勢いなし。失業率が高水準で止まったままであり、消費マインドも
冷え切ったまま。
一方で、2003年後半から海外受注の増加によって企業の生産が回復しつつある。この外需要因が設備投資意欲を喚起すると考えられる。
また、外需主導の生産増加による企業業績の回復が雇用へと結びつく動きが出始めており、このことが個人消費を支えよう。
いづれにせよ、勢いが感じられないことから2004年後半にかけて緩やかな伸びといったところ。
その伸びの主要因が外需であることから、ようやく上向き基調に乗り始める2004年後半には米国の景気が冷える危険性があることが不安材料。
なお、英国は雇用情勢が安定していることから消費も堅調。さらに、PFI関連の政府支出があり他国とは異なった動きとなるだろう。

水曜日, 1月 07, 2004

ジョブレス・リカバリー

米国の景気が良いと言われている。
米国の経済動向次第では日本企業の収益改善効果が吹き飛ぶ可能性があるので非常に気になるところ。
しかし、懸念材料が無いとは言えない。
第1の懸念材料は、米国の経済成長率が米国の貿易相手国よりも高いということ。
足元の成長は中国並。
これでは、輸入の増加によって景気が冷やされる危険性を捨てきれない。
もう一つは雇用の回復が経済の回復にどうやら見合っていないということ。
これはジョブレスリカバリーとして様々なところで取り上げられている。
つまりは、一頃のITブームというのは巷間言われているように単なるバブルではなくて、実りのあるものであったこと。そのために、そのブーム時に投資したIT機器による生産性向上の効果が顕在化してきているということ。生産性の上昇が起こっているということは、今まで通りの生産活動を行うために従前ほどの労働力、雇用を必要とはしなくなったということを意味している。
そこで、通常は実質経済成長率の上昇は多かれ少なかれ、そして時期の問題はあるにしても雇用の増大をもたらすと考えられる。そして、生産性の上昇はその逆で雇用の減少を一般的にはもたらすと考えて問題ないだろう。
そこで、雇用の増加の動きを実質経済成長率の上昇と生産性の上昇とで説明してみたのが下の図。
グリーンの線が雇用の増加の計算値を表現している。




これからすると、確かに足元の雇用の増加は実質経済成長率に見合ったものとはなっていない。しかも、生産性の上昇を考慮してもである。第3四半期でGDPが8.2%の成長に見合うのは生産性の上昇を考慮しても0.5%(年率2%)の雇用の増加。しかし、実際には雇用は第3四半期では増加していない。
生産性の上昇によって雇用の増加が起こらない場合には早晩、現在は好調である個人消費が下に振れることが考えられる。加えて、生産性の上昇を考慮しても雇用の動きが鈍すぎるということは、生産性上昇による雇用削減の効果が思ったよりも大きいかもしれないということを意味していると整理出来よう。
そうならば、より一層、個人消費の先行きが危ぶまれる。
と、ここまで書いた過度に心配する必要もないのかもしれない。
それは、雇用改善の動きが少しづつ見られなくもないということ。
まず、11月時点で、非農業雇用者数は、4ヶ月連続で前月に比べて増加している。中身を見ると、これは一様な雇用の増加というわけではなく、製造業では依然として減少が続いている。しかし、サービス部門では増加となっているのである。製造業も雇用は減少しているのであるけれども、残業時間が増加してきている。
これはジョブレス・リカバリーと呼ばれた状況から脱却しようとしている兆しとも言えよう。

火曜日, 1月 06, 2004

ユビキタスは農業から始まる

農業の分野のIT化侮るべからずです。
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構が青果物のトレーサビリティ実証試験に成功という発表があったと思ったら、開発・導入が始まるとのこと。

「生産現場から消費者までを全てデジタルデータ化」

同機構と日本農業IT化協会はユビキタスIDセンター主宰によるT-Engineフォーラムに参加、2003年度より実証実験に着手していたらしい。

プレスによると、生産者の栽培情報をプログラム処理、これと結合させたIDタグ(ICチップ)を農産物や加工食品に添付し、消費者へ流通上での情報と共に供給するという。

電気機械は産業影響力低下





「2010年の産業構造」と同じものを用いて、電気機械などの産業の他の産業への波及効果の力と他の産業から影響を受ける度合いを確かめてみたのが上図。
通信・放送業は通信・放送業が他の産業から受ける影響の度合いも他の産業へ及ぼす影響の度合いも1995年から2010年でどちらも高まっている。
その一方で、電気機械は自身が他の産業に与える影響は変わらず、かえって他の産業から受ける影響の度合いが増してくる。
これも、突き詰めて考えればITの効果とでも言えるだろうか。つまり、IT産業はモノを提供するという路線からサービスを提供するという路線へと大きく舵をとっている。この結果、IT産業自身が生産をするに当って他の産業からモノを購入する割合は減少してきている。そして、サービスの提供の仕方もより需要側の生産行動に関係の深い形となってきている。そうしたことがこの図にも表れているように思える。

2010年の産業構造

1995年の産業構成比と2000年の産業構成比から2010年の構成比を試算してみると以下の表のようになります。
鉄鋼、金属製品といった産業の構成比が低下していく一方で運輸業の構成比は一貫して上昇していくという結果になっています。一般機械も構成比を低下させるトレンドにあります。プラス・マイナス織り交ぜた動きを見せているのが電気機械。これはIT化による効率化による需要減というマイナス効果とIT需要の発生というプラス効果が同時に起こっているということを意味しています。
ちょっと意外だったのは、対事業所サービスは比率を上昇させていくのかと事前に想像していたものの、その想像を裏切って比率を上昇させないという結果になった。
これもやはり効率化の効果が勝ったと整理すべきなのかもしれません。
[産業構成比] 1995 2000 2010
食料品 4.5 4.2 4.4
鉄鋼 3.1 2.2 2.1
金属製品 1.9 1.7 1.6
一般機械 3.7 3.1 2.9
電気機械 5.9 5.4 5.7
運輸 4.0 4.4 4.6
対事業所サービス 6.2 6.8 6.8

出所:総務省統計局「接続産業連関表」
経済産業省「産業連関表延長表」各年版
注:試算は上記の各表を長期経済モデルに組み込んで行った。

月曜日, 1月 05, 2004

5兆円の需要

単純に人口構成の変化だけで2020年までに少なくとも5兆円の需要が発生するという話。

ざっとした粗い計算であることと、全てが新規需要として立ち上がるというわけではないということに留意しなければならないということを前置きした上で次のような試算をしてみました。

■65歳以上人口
1970年:7%
1980年:9%
1990年:12%
2000年:17%(2,200.5万人)
2010年:23%(2,873.5万人)
2020年:28%(3,455.9万人)

ちなみに、H14の家計調査によると、
35歳未満のサービス支出59.1%(H13:60.5%)に対して60歳以上のサービス支出は
43.4%(H13:46.3%)。
60歳以上の消費支出では非耐久消費財への支出が一番大きい(42.0%.H13:40.7%)
※非耐久消費財のうち食費が大きなウエイトを占める。

教養娯楽支出だけを見てみると、
全世帯平均:5.2%(17,400円/月)
65歳以上:7.2%(21,061円/月)
70歳以上:7.0%(18,838円/月)
75歳以上:5.0%(13,333円/月)
うち旅行関連費に関して見ると、
全世帯平均:2.9%(3,345円/月)
65歳以上:4.3%(11,754円/月)
70歳以上:4.2%(10,595円/月)
75歳以上:3.2%(7,225円/月)=====>もう旅行したくともデキナイ!

ここまでの段階で老人旅行市場を試算してみる次のようになります。
2000年:1.5兆円(直接需要+間接需要)
2010年:1.9兆円(直接需要+間接需要)+0.4
2020年:2.3兆円(直接需要+間接需要)+0.8
2040年:2.4兆円(直接需要+間接需要)+0.9


次に医療費を見てみると、
全世帯平均:3.4%(11,417円/月)
65歳以上:4.9%(14,342円/月)
70歳以上:4.9%(13,153円/月)
75歳以上:5.4%( 13,001円/月)

これをもとにして老人医療市場を試算すると以下のようになります。
2000年:2.2兆円(直接需要+間接需要)
2010年:2.9兆円(直接需要+間接需要)+0.7兆円
2020年:3.4兆円(直接需要+間接需要)+1.2
2040年:3.6兆円(直接需要+間接需要)+1.4
======>介護支援機器etc=====>具体的には?

※老人旅行+老人医療で2020年は2000年対比2兆円。
但し、機器市場は含まれていません([旅行会社+医療機関]設備投資必要-->何を
幾ら?)。
※医療費上昇+老齢化---->非老齢層の健康志向上昇--->関連支出増加?

各国世代消費割合比較
40-44 65歳以上
米国(娯楽) 5.1% 4.7%
英国(教養娯楽) 17.4% 18.4%
イタリア(余暇文化) 6.4% 4.1%

■平均貯蓄残高
全世帯平均:14,848(千円)
65歳以上:22,577(千円)
70歳以上:22,633(千円)
75歳以上:22,757(千円)
老人層から学齢層への実質所得移転。
学齢層--->他人(老人層)の金は使い易い--->支出弾力性の上昇.


■平均消費支出
全世帯平均:335,114(千円)
65歳以上:292,232(千円)
70歳以上:270,264(千円)
75歳以上:241,453(千円)

設備投資は大丈夫

日本経済の目下のところの牽引役は設備投資。企業のリストラ努力が功を奏して利益が出始めてきた。そこで、今まで抑制に抑制を効かせてきた設備投資にお金が流れ始めている。
節約するのは良いのだけれど、安易な思考停止の費用一律カットでは企業の生産能力、つまりは競争力の源泉まで枯れてしまう。そこで気になるのが今後の動きということになる。
常套手段宜しく、設備投資の動きと機械受注の動きを並べて観察してみる。機械受注はブレの激しい電力向けと船舶向けは除いてある。機械受注は設備投資の先行指標ということで機械受注は1四半期前をとってある。
10月実績で機械受注は17.4%と2桁の増加となっているし、10-12月の見通しをみると「船舶・電力を除く民需」は12.0%増の3兆17億円。設備投資は足元では大丈夫ということが言えよう。
加えて、繰り返しになるけれども、今まで設備投資を堪えてきたという事情からある程度長い目で見ても設備投資が増加する可能性が高い。こうなると、不安なのは、米国経済の影響を大きく受ける輸出の流れということになるだろう。

2004年米国経済成長率は4%。本当に?

2004年の米国の経済成長を4%台と見る向きが多い。
なるほど、消費を見てみると夏場は減税の効果などが手伝って堅調だった。減税の効果が一段落したのだろうか9月と10月は微減となっている。しかし、11月には再び増加に転じている。12月の消費も聞くところにようると、高額商品などに消費が向っているという手ごたえがあるとのことなので大きなマイナスということはないものと思われる。加えて、2004年には最大規模の減税が予定されているということからすると、消費が景気の足を引っ張るということは今のところは考えにくい。
それでは、第3四半期に高い伸びを記録した設備投資はどうなのだろうか。今後も高い伸びがあると思っても良いのあろうか。この点を確かめるために、下の図で設備投資に関係する投資財の出荷と受注の動きを見てみた。但し、ここで受注は出荷の先行指標と考えても良いだろうから、1ヵ月前のものをプロットしてある。
この図だけで見ると、設備投資は10-12月は第3四半期程の伸びはどうやら期待出来ない、ということになりそう。もっとも、投資財の動きがそのまま設備投資の流れになるのかと言えばそうではない。だから、良い意味で期待を裏切られるということもあるだろう。
ともあれ、GDPの数字は良い、雇用も動き出している。それは確かなのであるけれども、月次の統計で経済の動きを見ていくと一本調子ということをどうも想像することが出来ない。単に、大統領選挙の年でオリンピックの年でもあるということで4%ということなのか。
もう少しじっくりと様子を見ないと米国経済は2004年内は大丈夫だとは断言出来ないように思えてならない。

米国景気動向

前期比(除指数) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
小売業売上高 0.4 ▲1.4 2.3 ▲0.3 0.5 0.9 1.4 1.0 ▲0.3 ▲0.0 0.9

2003年7、8月の減税の効果もあって、夏場は消費に盛り上がり。9、10月は盛り上がりに欠けたものの、2004年の2~5月の再度の所得税還付による効果を期待できる。なお、今財政年度の減税額は1,487億ドルとピークになる。この為に、少なくとも年前半での消費の失速はないものと考えられる。

工業出荷 2.5 ▲1.9 0.4 ▲1.1 0.2 1.7 2.8 ▲2.6 2.9 0.9 0.1

5月以降プラス基調が定着するも、9、10月は伸びが鈍化。

工業新規受注 2.1 ▲1.1 1.3 ▲2.4 0.0 2.6 1.6 ▲0.1 2.2 4.0 ▲3.1
                     
工業生産指数(FRB) 111.2 111.6 110.8 110.1 110.0 110.0 110.8 110.9 111.5 111.9 112.9

6月まで漸減していた生産指数も7月からは上向きに。

情報機器出荷 19.7 ▲14.0 ▲5.8 22.5 ▲7.1 10.1 12.5 ▲7.6 1.3 4.6 ▲2.4
情報機器受注 0.9 ▲13.1 ▲0.8 18.8 0.2 4.3 3.5 1.0 ▲0.2 ▲0.8 ▲0.3
8月から新規受注がマイナスとなっており、それを受ける形で10月の出荷が減少に転じているところに懸念あり。
通信機器出荷 8.4 ▲1.6 1.5 ▲5.0 1.5 14.5 ▲1.4 ▲0.5 0.5 3.1 ▲1.4
通信機器受注 44.2 0.8 0.3 ▲4.5 ▲0.6 0.6 11.8 ▲2.2 15.2 19.4 ▲40.0
民間用資本財出荷 1.3 ▲1.1 0.7 0.3 ▲0.4 3.8 2.6 ▲2.8 3.5 0.4 0.4
民間用資本財受注 2.7 ▲3.3 2.7 1.8 ▲0.9 3.6 1.2 ▲1.5 5.2 2.5 ▲6.4