水曜日, 1月 07, 2004

ジョブレス・リカバリー

米国の景気が良いと言われている。
米国の経済動向次第では日本企業の収益改善効果が吹き飛ぶ可能性があるので非常に気になるところ。
しかし、懸念材料が無いとは言えない。
第1の懸念材料は、米国の経済成長率が米国の貿易相手国よりも高いということ。
足元の成長は中国並。
これでは、輸入の増加によって景気が冷やされる危険性を捨てきれない。
もう一つは雇用の回復が経済の回復にどうやら見合っていないということ。
これはジョブレスリカバリーとして様々なところで取り上げられている。
つまりは、一頃のITブームというのは巷間言われているように単なるバブルではなくて、実りのあるものであったこと。そのために、そのブーム時に投資したIT機器による生産性向上の効果が顕在化してきているということ。生産性の上昇が起こっているということは、今まで通りの生産活動を行うために従前ほどの労働力、雇用を必要とはしなくなったということを意味している。
そこで、通常は実質経済成長率の上昇は多かれ少なかれ、そして時期の問題はあるにしても雇用の増大をもたらすと考えられる。そして、生産性の上昇はその逆で雇用の減少を一般的にはもたらすと考えて問題ないだろう。
そこで、雇用の増加の動きを実質経済成長率の上昇と生産性の上昇とで説明してみたのが下の図。
グリーンの線が雇用の増加の計算値を表現している。




これからすると、確かに足元の雇用の増加は実質経済成長率に見合ったものとはなっていない。しかも、生産性の上昇を考慮してもである。第3四半期でGDPが8.2%の成長に見合うのは生産性の上昇を考慮しても0.5%(年率2%)の雇用の増加。しかし、実際には雇用は第3四半期では増加していない。
生産性の上昇によって雇用の増加が起こらない場合には早晩、現在は好調である個人消費が下に振れることが考えられる。加えて、生産性の上昇を考慮しても雇用の動きが鈍すぎるということは、生産性上昇による雇用削減の効果が思ったよりも大きいかもしれないということを意味していると整理出来よう。
そうならば、より一層、個人消費の先行きが危ぶまれる。
と、ここまで書いた過度に心配する必要もないのかもしれない。
それは、雇用改善の動きが少しづつ見られなくもないということ。
まず、11月時点で、非農業雇用者数は、4ヶ月連続で前月に比べて増加している。中身を見ると、これは一様な雇用の増加というわけではなく、製造業では依然として減少が続いている。しかし、サービス部門では増加となっているのである。製造業も雇用は減少しているのであるけれども、残業時間が増加してきている。
これはジョブレス・リカバリーと呼ばれた状況から脱却しようとしている兆しとも言えよう。