金曜日, 10月 10, 2003

円ドル・レートは適切か?


円高が進んでいる。日本経済は明るさが見え始めたとは言ってもまだまだ頼りない。そうした中での円高。株価も企業によるリストラが一区切りついたことと、先行きへの期待から上昇基調。こうした株価の上昇を見て海外の投資家が「底値」に近い日本の株を買おうとしているのかもしれない。海外の投資家が日本の株を買うためには、まずは保有している通貨を円に替えるという必要があるだろう。
円に替えるということは円を買うということ。円に買いが集まると円が高くなる。
日本企業による輸出の動きも関係してくる。
こうした円高は、しかし、現在の日本企業にとっては決して望ましいことではない。
曰く、為替レートは長期的には購買力平価で、短期的には金利格差で方向付けられる。
これを確かめてみる。下の図は、赤い線が為替レートの動き、黒い線は日米の卸売物価指数の比、ピンクの線は消費者物価指数の比、淡青の線は輸出物価指数の比の推移を1989年1月を100としてプロットしたもの。
これを見る限りでは、為替レートは卸売物価指数の比と消費者物価指数の比の推移の周辺を動いている。
そして、2000年から現在に至るまで円安のほうに振れている。これは日本がデフレ状況にあるということを考えると当然と言えば当然。


次に、日米の長期国債(10年物)の金利の差と為替レートの推移を見てみる。
これを見ても、円高を支持するような方向にあるようになっている。


このようなことが日米間で為替が政策論議の議題となることの根拠になっているのであろう。

今日の一言



数字は嘘をつかないが、数字で嘘をつくことは出来る。

木曜日, 10月 09, 2003

SUNの試練



「Sunは危機に直面している」とMerill Lynchのスティーブン・ミラノビッチ氏がスコット・マクニーリーCEOにあてた公開書簡を出したことが今月の初めに話題を呼んだ。
公開書簡、あるいは公開質問状という方法で経営方針を質したのは、9月29日にサンから出された四半期赤字が予想より膨らみそうだアナウンスを受けてのもの。
サンは10%の従業員削減に続いて4000人規模の削減策を発表している。
それでも、なお費用削減のために従業員を5000-7000人削減する必要があるとする。
そこで、同社のアニュアル・レポートを基にして、Total costs and expenses関数と売上関数を推計し、どの程度の人員削減で営業利益が黒字になるのかということを試算してみた。
サンの製品に対する需要が3.0%で成長するとして18%の削減で黒字。18%というと大体7000人規模ということだから、Merill Lynchのスティーブン・ミラノビッチ氏の示した上限値ということになる。
ただ、もちろん減らせば良いというわけではなく、2.5割の削減は売上の減少に繋がる可能性が示唆される結果となった。
これは、もちろん需要が3%で伸びるという場合。1%しか伸びないような場合はシナリオが大きく狂うし、4%だと逆。





火曜日, 10月 07, 2003

景気動向指数は上々

8月の景気動向指数は景気の現状を示す一致指数は55.6%となり、景気判断の分かれ目である50%を4カ月連続で上回った。

設備投資はマイナスの予感?




これは日銀の短観における設備投資計画調査を調査時点でプロットしたもの。
これを見ると、年初の3月は控えめ、6月は期待からか強め、9月に先が見え始め、12月では現実的にというように山になっていることが分かる。
ここでは示してはいないが、一般に6-9月で設備投資計画が減少になっている場合は年度でみて設備投資がマイナスになるケースが多いという。
そうでなくとも、2001年と2002年の両年でいうと、完全に山型になっている。
この山型を2003年の短観における設備投資計画の推移に重ね合わせてみる。そうすると、2002年のパターンに従った場合には完全にマイナスになってしまう。やや楽観的になって2001年のパターンで山型を重ね合わせて見ても雲行きがどうも怪しい。

次に同じく日銀の短観でソフトウェア投資について同じグラフを描いて見ると上のようになる。
この場合は「変形S型」とでも言うべきだろうか。
2001年のパターンだと上がって下がって結局は年初とさほど変わらず。
2002年のパターンだと下がって上がって結局は年初とさほど変わらず。
つまりは、年初の計画の伸び率が一番実績に近い。
ということは、ソフトウェア投資は設備投資全体とは異なって、若干のプラスになる可能性があると言えるかもしれない。

月曜日, 10月 06, 2003

本当は...




米国のソフトウェア投資の推移を見てみると、2001年で調整過程を終了しつつあったのが、世界を震撼させた9.11テロの影響で下振れをしている。
GDPでは、4-6月期にマイナス1.6%を記録した後、7-9月期にはマイナス成長ではあるけれども減少幅はわずかに0.3%に留まっている。そして、10-12月期には個人消費の伸びによって2.7%のプラス成長にまでなっている。
打撃を受けたのは設備投資であり、こちらのほうは4-6月期のマイナス17.6%が7-9月期にはマイナス5.2%と一桁にまで減少幅を縮小させていた。しかし、10-12月期には再び17.3%のマイナスとなった。
とは言っても、上り坂の基調にあったということは確かで、その証拠に2002年1-3月期には前期の反動で2桁増を記録、その後も1桁のプラスで推移している。
ソフトウェア投資も歩調を合わせていることは上の図でも明らか。
2003年1-3月期には再び民間設備投資がマイナスになり、ソフトウェア投資も下方に振れてしまっている。これは、イラク戦争前夜の先行き不透明感からのものと言える。
このように考えてみると、IDCの発表した、バック・オフィス・アプリケーション、Customer Relationship Management(CRM)、コラボラティブ/コンテンツ管理、垂直市場向けといったソフトウエアを含む「企業アプリケーション市場」が「今後5年間に年平均5.5%で拡大し、2007年には540億ドルを超える」というのは方向として間違っていないだろう。
むしろ、過去のパターンからすると控えめではないかとも思える。

ストック調整は2001年で終了している?









全てが過去の循環パターンに従うということは出来ない。
上の図は米国のパッケージソフトウエアの循環図。これを見ても1980年代の気長な循環パターンに比較して、1990年代前半の循環パターンは短期(短気!)であるということが分かる。
そうではあっても、2001年の水準はかなり低いということは言える。まだ、統計は出ていないけれども、1980年代の循環パターンに照らしても、1990年代前半の循環パターンに鑑みても、2002年には新たな循環パターンに入ったと言っても良いのではないか。
そうすると、2002年から最短で4年だから2005年、あるいは2001年からと考えて2004年中は米国のパッケージソフトウェアへの投資は上昇し続けるということも強ち故なしとは出来ないだろう。
出所:米国商務省の統計より加工