火曜日, 1月 04, 2005

アチラとコチラの比較優位

IBMのパソコン事業、01年以来赤字続きだったことが発表されています。
2001年1月から04年6月末までのパソコン事業の赤字額は累計9億6500万ドル、売上高は内部売上高を含めて約341億ドル、除いたベースで約330億ドル。
赤字額は2001年が3億9700万ドル、2002年が1億7100万ドル、2003年が2億5800万ドル。6ヵ月ベースで比較して、2004年で売上高が20.2%増だったのに対して、売上原価は23.7%増、販売管理費は4.4%増。
同じく6ヵ月ベースで機種別の売上高をみると
ノート(mobile):$2,166M(2003) ==> $2,922M(2004)
デスクトップ :$1,427M(2003) ==> $1,426M(2004)
詳細は 8-K 参照。

ところで、梅田氏は「日本にとって米国のIT産業は絶対ではなくなった?」で、
『日本はインターネットの「こちら側」に、米国はインターネットの「あちら側」にイノベーションを起こそうとしている』
という非常に示唆に富む指摘をしています。
日本企業が伝統的に強かったのは、あるいは1960年代に日本の驚異的な経済成長を後押ししたのは、生活者(=消費者)に密着した部分。
インターネット以後の時代でも、この構図は変わっていなくて、日本は生活密着型であるコチラを米国はビジネスモデルをそれこそモデル思考、抽象化思考でプログラミングに落とし込んでというようなアチラ側を得意としてきたし、現在の目指している方向性もそうなっているといいます。
そのコチラ側とアチラ側がインターネットの登場という混沌とした状態では見えにくくなっていたと言えると思います。
それが、少しづつ方向性の違いが見え始めたようです。

という具合に整理してみると、やはりIBMは単に赤字部門を切り離したとは考えられません。
IBMはムコウ側に離れつつあるのでしょうし、松下はコチラ側に船を寄せてきているのでしょう。

確かに、日本企業はコチラ側に比較優位を持っていて、アメリカ企業はアチラ側に比較優位を持っているように映ります。これは、マクロで見て比較優位を持っているというだけなので、日本でもアチラ側をベースにして比較劣位のマーケットで世界の2番手、日本の1番手として戦う道はあります。

しかし、それはどういう姿になるのでしょう。
コチラ側を得意とする企業のITインフラを担うというのは紛れも無くアチラ側の世界。
それでも、コチラ側に非常に近いアチラ側というのもあります。その辺りのスレスレのアチラ側はきっとアチラ側のコアを得意とするIBMを始めとする米国企業でも容易に飛び込んで来ることは出来ないのではないでしょうか。

その場所で、ブルーオーシャン戦略を採るなら日本でも1位、世界でも1位という可能性は有り得なくはないと思うのですが。