水曜日, 8月 20, 2003

ICT支出の日米関係

図は、米国のGDPが1四半期だけ増加した場合に米国のICT支出、日本のGDP、日本のICT支出がどのような動きをするのかを示したもの(目盛は四半期)。




まず、米国のGDP自体は内需の活発化ということで、1期目の効果が継続はするものの、効果の度合いは減少。これに対して、日本のGDPは輸出を通じる形で1四半期遅れて、米国のGDP上昇の影響を受け上昇を続ける。しかも、輸出の増加が内需に勢いを与える形で効果の度合いも上昇していく。
また、米国のICT支出はGDPの1期だけの増加を契機として9四半期間、約2年間の間勢いを保つ。
日本のICT支出は日本のGDPの動きを受けて、米国から1四半期遅れて動きが出てくる。しかし、GDP自体とは異なり、5四半期目には効果は消失。これは、ICTストックが蓄積したことによるストック調整効果と考えられる。この間、日本のGDPは輸出から火が付いた内需が盛り上がることによって上昇トレンドに乗る。
従って、日本のICT支出のストック調整も1年以内で底となり、それ以降は再び上向きに転じるという傾向となることが見て取れる。

なお、図示した結果は、例えば米国で第1四半期のみに減税が行われ、第2四半期には打ち切られたというようなケースでの試算。

火曜日, 8月 19, 2003

ITサービスの売上の年後半4%台



上の図は、「特定サービス産業動態調査」の「情報サービス業」に掲げられている、情報サービス業の売上に関して今後3ヵ月と当期3ヵ月の見通しのD.I.と実際の情報サービス業の売上の伸び率をプロットしたもの。
D.I.というのは、増加すると答えた企業の割合から減少すると答えた企業の割合を引いたもので、将来の見通しの一応のバロメータになる
(左目盛がD.I.)。
この図で見ると、日本のITサービス産業の動向は2003年の上半期には勢いを無くしていたものの、7-9月以降は再び盛り返すというシナリオを各企業が描いているということが分かる。
そこで、構造VARモデルでシミュレーションしてみると、4-6月期までのデータからすると、2003年の情報サービス産業の売上の伸びは後半、つまり7-9月期から4%台となることになる。これは、「特定サービス産業実態調査」のD.I.の結果と整合的。
同じモデルで実質のGDPは前期比年率換算で2.0%程度、民間設備投資は5%台の推移となる。これは、2003年のIMF WEOによる日本経済の予測値は0.8%。政府経済見通しでも0.6%(年度)の増加でしかないことから考えると高すぎるように思える。2002年11月から2003年1月の間に公表された民間調査機関32社の平均値は、わずか0.2%にしか過ぎない。
しかし、4-6月期の実質GDPを見ると、前期比の年率換算で2.3%、前年同期比で2.1%。もっとも、この伸びはSARSの影響によって輸入が減少したことによる特殊要因に過ぎないという指摘もある。
そうした面は否定できないものの、民間企業における生産の回復も明らかになってきつつあるということは、民間設備投資が前期比の年率換算で5.4%、前年同期比で7.0%と頗る元気が良いということからも伺える。企業部門に回復傾向が出てきただけではなく、4-6月期の賃金が9四半期振り、雇用者数は8四半期振りに前年同期の水準を上向いたということも明るい材料。
こうした明るい材料を受けて、実は、民間調査機関の経済見通しも軒並み上方修正されている。日経新聞は18日までの13社の経済予測の平均値として実質1.4%という数値を挙げている。
この当たりから判断すると、ITサービスの売上の年後半4%台というのは不可能ではない水準と言えよう。