金曜日, 1月 23, 2004

増えたのか、喰ったのか?

昭和38(1963)年から平成13(2001)年までの家計における品目別消費を見てみる。
すると、家庭用耐久消費財への支出割合は2.2%から1.3%へ減少している。
一方、パソコンなどが含まれる娯楽用品への支出割合は1.3%から2.2%へ上昇。
あれと思い、(家庭用耐久消費財+娯楽用品)への支出割合をチェックしてみると明確に減ってもいないし、明確に増えてもいない。
そうすると、世帯増加による消費のパイの増加効果を除くと、近年のIT機器の普及は家電への支出を侵食していたということになる。
ということは、情報家電というのは、今度は侵食されていた家電がIT機器への支出のパイを取り返す動きと言えるのではないだろうか。
なお、この間、家計消費/GDPは59.0%から61.9%へとわずかに増加している。

企業のIT投資の設備投資の中に占める割合は上昇してきたことが知られている。
ちなみに、対GDP民間設備投資比率は18.2%から14.2%へと変化している。
そうこう考えると、やはり、ドコかを侵食していたことになる。

ちなみに、自動車関係費への支出は、1.1%が6.4%。
通信機器を含む通信費も0.5%から3.2%へとほぼ一貫して上昇。
食費は39%あったものが23%へ。
被服費も11%が5%へ。
この減少分が自動車や通信費(キーワードは移動)に回っているという図式になっている。
また、食費への支出割合の中でも外食費は2.5%から3.9%へと上昇し食費の中でパイを奪っている。
そうこう考えると、中食というのは外食市場の内食市場への侵食と表現出来るでしょう。

木曜日, 1月 22, 2004

胡椒は食卓の主役にあらず

ITベンダーにとって厳しい時期、あるいは、ともすると時代を迎えつつあるのかもしれません。
それは、皮肉にも、社会に遍くITが普及したことに原因があり、「そして全てがITになった」という状態を目指せば目指すほど変化のスピードも加速するのではないかと思います。

ITProのユビキタス時代に二分解するITサービス市場という記事に以下のようなくだりがあります。
この記事は、ITサービス市場が「ITベンダーにとっての市場」と「アウター市場」に二分化されていきますよということを指摘するもの。

『ユーザーに対して単なる御用聞きであったり,「ICタグの機能はこうで・・・」とITの言葉で話をしていたのでは,相手にされない。彼らは自らのビジネスにどのような意味があるかを知りたいのであり,電話の仕組みを知る必要がないのと同じように,IT技術はブラックボックスでよい』

こう考えると、ユーザーにとっては、ユビキタス機器でもノン・ユビキタスでも良いわけです。
私は普段、電気を使用しています。しかし、変電器がどういう種類のものか知りません。また、送電線に画期的な進歩があるかもしれませんが、そうしたことも残念ながら知りません。
例えば、送電線における鉄製の芯線を光ファイバー製に置き換えようという「インフォワット」(InfoWatt)という動きがあるようです。
あるいは、送電線ではなくて電波で送電しようという動き。これも画期的なのでしょう。しかし、それは最終ユーザーには意識されることはないでしょう。

さて、先の記事は続けて次のように警鐘を鳴らします。
『しかも“顧客の顧客を知る”ぐらいの深い理解が必要だ。それが困難だからこそ,多くのITサービス会社がこの市場に入り込めない。つまり,既存のITサービス業から見て外側の市場になってしまう』
非IT企業が今までの巨額のIT投資によってIT化する動きの中で、ITしか提供できないベンダーはどうするのか。非IT企業はそれぞれのコア・サービスにITというスパイスをふりかけてユーザーに提供します。いわば、中華であれイタリアンであれ、そうしたものと薬味を合わせて食卓に出す。一方、ITベンダーは薬味しか食卓に出さないわけです。薬味が珍しく、貴重でもあった時は、良かったでしょう。でも、いつまでも胡椒を手に取って舐めつづける人はいない。さて、困ったというわけで、胡椒の容器の脇にオマケのようにビーフジャーキーを付けてみる。結局、それをユーザーに売るのは難しい。しかも、胡椒だけを売るのでは既存のIT産業を支えることは出来ない。
ITベンダーを包む漠然とした将来への不安というのはココにあるのではないでしょうか。

森祐治氏のデジタル三種の神器よりも新たなライフスタイルの提案をにも非常に鋭い指摘があります。『デジタル三種の神器は目新しい商品というよりも、何らかの意味において代替商品という位置づけであり、価格の問題から「全世帯普及」は望めない商品である可能性が高い。であれば、国内市場だけであっても、飽和するのに時間はかからない』
この点は真摯に受け止める必要があります。
表面で起きているブームは『消費者の家電ライフスタイル』を何ら変えていない。その為に、『来年までの市場は好調であっても、それは前世紀の勢いを借りているだけ』という状況になる、そう指摘しています。
まだ、手を打っていないITベンダーは、自らの耳だけに心地よいフレーズの羅列に酔いしれるのではなく、そろそろ自らの存在価値を真剣に考えないといけないのかもしれません。

水曜日, 1月 21, 2004

IT市場で増えるところはドコ?

IT Business フロントライン (31)
に曰く、
「家電や普通の電話、時計やポータブルMDプレーヤなどがネットワークで結ばれ、駅の自動券売機やコーラの自販機までもがネットワークにつながれ、車や電車の中からでもインターネットにアクセスできるような社会が「ユビキタス社会」」
おそらくユビキタス社会と世間一般で言う場合、ミソはココでしょう。
非IT機器がIT化する、ネットワーク化する。
とすると、IT企業は、どこの非IT機器をIT側から侵食しますか、ということを考えなくてはいけないと思うのです。
それらを全部含めてユビキタス機器ですと言ってしまうと売れるものを作るということと同じになってしまうように感じます。

もちろん、全てのユビキタス機器(IT化された非IT機器)の"部品"を作りますとい
う選択肢はあります。

とり合えず、機器だけに絞ったとして、どの非IT機器がユビキタスという潮流に
乗ってIT化する可能性が高いのか。そして、その非IT機器とIT機器の類似性はあ
るのか。
その辺りを考えないといけないのではないでしょうか。


答え:増えるところは非IT機器がIT化する部分です!

本当か?

IT機器を使っていない層をIT化する、ということもパイを増やすでしょう。
既存のパイを大きくするという意味ではココです。

[例]・農林水産業のIT化.....規模は置いておいて
   ⇒気候情報と相場情報をリアルで監視するような目的にPCを使用。
   ⇒農産物生産管理用にPCを使用。
   ⇒魚群探知用。
   ⇒木材育成管理。---->これはチップですね。
・教育現場のIT化
   ⇒生徒出欠管理のためにPCを使う。
   ⇒生徒の健康管理のためにPCを使う。
・中小企業にPC1台/人
   ⇒....
・高齢者への購買層の拡大
   

月曜日, 1月 19, 2004

ユビキタスでも見方は同じ

総務省の報告書によると、アプライアンスの市場規模は05年で5.5兆円。10年で7.8兆円。
但し、この中には「携帯型」のほかに、ホームサーバーなどの「据置型」、デジタル家電(「家電系」)、「車載型」、および「公共空間設置型」が含まれています。
これに対して、サービス・コンテンツ市場は6.2兆円から24.2兆円へ。
E-コマースは実店舗販売(タグ連携)を含めて7.3兆円から34.4兆円。
決済処理等のプラットフォーム市場は電子カルテを含めて0.8兆円から3.1兆円へ。

さらに、コア市場は05年で16.7兆、10年で25.7兆円に対して、応用市場はそれぞれ13.5兆円、58.5兆円。
コア市場で伸びるのは認証サービスなどのプラットフォーム(05年:0.8兆円、10年:3兆円)
これは、アプライアンスはほぼ代替需要のみと考えているように思えます。


ちなみに、産業構造審議会による2010年の日本の産業構造は次のようなものです。
数値の対象は2000年から2010年。
[1]健康に対する不安解消需要
・遺伝子治療等 3.8兆円 10.7兆円
・介護サービス・機器 4.9兆円 10.0兆円
[2]自由時間に対する需要
・ITS 0.3兆円 2.1兆円
・保育サービス 1.3兆円 2.6兆円
・日常支援ロボ 0兆円 4兆円
[3]豊かな生活需要
・バリアフリー 0.2兆円 1.6兆円
・低公害車 1.1兆円 2.6兆円
[4]コミュニティ需要
・ITコミュニケーション 5兆円 11.3兆円
[5]自己啓発需要
・マルティメディアコンテンツ 2.4兆円 14.7兆円
こう見ると、総務省の「YB報告書」が掲げる分野と「介護サービス機器」「ITS」「ITコミュニケーション」「マルティメディアコンテンツ」で重複しています。

YBにおける新規市場拡大分野は経済全体でも市場拡大分野でもある。

もう一つちなみに、
バイオテクノロジー:1.3兆円(2001)⇒25兆円(2010):経済産業省
介護機器:4.9兆円(2000)⇒10兆円(2010):産業構造審議会(H13)
以上を含めた形で
医療・健康・福祉産業:38兆円(1997)⇒91兆円(2010):「経済構造の変革と創造のための行動計画」(H9)

91兆というのは精査の必要があります。しかし、上記の分野が成長するであろうことは、ここ何年かの消費動向、人口動態からある程度明らかと言えます。
また、成長が期待出来る分野の中でも機器ではなく、サービス関連市場が伸びるということも同様です。

風土が大切

小本恵照氏による『企業における長期利潤率格差の要因分析』は、製造業1056社の財務データを用いて、1976 年度から1999年度までの24年間の利潤率を分析したもの。
著者は、企業経営に当っては、①柔軟な事業選択、②企業固有の経営資源の蓄積、③コーポレート・ガバナンス構造や財務構造への配慮が重要であることを改めて指摘している。しかし、この論文で注目すべきは、企業の財務構造などは企業の利潤率の格差に影響を与えているものの、その影響力はさほど大きくなく、それ以外の要素こそが重要であるとしていることであると考える。
ここで、著者の言うところの利潤率は、営業利益に受取利息・配当金を加えた収益(=事業利益)を総資産で除した「総資産利益率(ROA)」の全企業平均からの乖離率と定義されている。
この論文の分析結果は12ページに纏められている。
そこで、著者は、一旦高い利潤率を得た企業はそのまま高い利潤率を維持することが多いと企業の利潤率の粘着性とでも言うべき性質が存在していることを指摘している。
それはどうしてなのか。その答えも用意されている。
企業の属する産業、財務構造、株主構造といった要因では企業の利潤率の格差を十分には説明できないというのだ。
つまり、経営者の能力、従業員の資質、経営ノウハウそして企業風土といった要素が決定的だとしている。
もちろん、企業の利潤率そのものが、その企業がどの産業に属しているかで大きく異なること、財務構造も無視出来るという訳ではないことも合わせて指摘している。
しかし、企業の利潤の格差の説明はそうした財務構造などでは到底説明がし尽くされるものではないということになる。