事前のモジュール化
藤本隆宏教授の「アーキテクチャの比較優位に関する一考察」という論文が出されています。
この中で、興味深いのは
『構成モジュール数N が極端に大きな擦り合わせ製品』の場合には日本企業の持つ優位性が発揮されないのではないかという指摘。
フィリップス社の電子系とツァイス社の光学系を組み合わせるASML社製品を例として挙げています。
つまり、「擦り合わせ型」の製品分野では日本企業は優位性を持ちますが、非常に多くのモジュールを組み合わせるような「超擦り合わせ型」の製品においては、もはや日本企業の優位性は発揮出来ないというわけです。
この違いをオープンネットワークの知識を活用することによって、擦り合わせのための初期値のバラツキを縮めるという表現で説明しています。
トヨタ生産システムに代表される「統合型(インテグレーション型)もの造り」は、「擦り合わせ型(インテグラル型)アーキテクチャ」の製品で競争優位を発揮することが多かった。
しかし、より複雑な「超モジュール化」の段階では、その優位性が発揮出来ないというのです。
要約すると、日本企業は、主に試行錯誤による設計擦り合わせで勝負できる「中程度の擦り合わせ」の製品では競争優位を得ることが出来るものの、同じ擦り合わせでも、事前の構想力や目利き能力の勝負となるような「モジュラー型製品」、科学的な設計パラメータの事前調整が重要になる「極限的な擦り合わせ製品」では必ずしも競争優位を得ることは出来ないとしています。
また、事前のモジュール化の努力は必要で競争優位に結びつくけれども、事後的には、モジュール化が競争力に直結する産業では米国企業などが競争優位を持つのだという指摘もなされています。
ここも重要な点だと思われます。
[参考]上記論文から基本事項を抜粋
『設計情報が有形物に転写されれば製造業、無形の媒体に乗って顧客に提供されればサービス業』
『各部署が緊密に相互調整して、チームワークで「顧客へ向かう設計情報の流れ」を作る仕組みの総体を、筆者は「統合型もの造り」と呼ぶ。トヨタ方式はその典型』
『「製品アーキテクチャ」とは、製品機能と製品構造のつなぎ方、および部品と部品のつなぎ方に関する「製品設計の基本思想」のこと』
『アーキテクチャには幾つかの基本タイプがある。一つは「インテグラル型(擦り合わせ型)」で、製品機能と製品構造(部品)の関係が錯綜しているため、部品設計をきめ細かく相互調整し、製品ごとに部品やその接合部(インターフェース)を最適設計しないと製品全体の性能がよく出ない。もう一つは「モジュラー型(組み合わせ型)」で、製品機能と部品が一対一ですっきり対応しており、インターフェースが標準化しているため、別々に設計した部品を寄せ集めてもまともな製品が出来る』
『いわゆる「オープン型」は「モジュラー型」の一種で、インターフェースが業界全体で標準化しており、企業を超えた「寄せ集め」が可能なタイプのものである(國領[1999])。これに対し「クローズド型」はインターフェースなど基本設計が企業内で完結している。以上をまとめるなら、図2の通りで、「クローズド・インテグラル」「クローズド・モジュラー」「オープン・モジュラー」の3タイプが抽出される。』
この中で、興味深いのは
『構成モジュール数N が極端に大きな擦り合わせ製品』の場合には日本企業の持つ優位性が発揮されないのではないかという指摘。
フィリップス社の電子系とツァイス社の光学系を組み合わせるASML社製品を例として挙げています。
つまり、「擦り合わせ型」の製品分野では日本企業は優位性を持ちますが、非常に多くのモジュールを組み合わせるような「超擦り合わせ型」の製品においては、もはや日本企業の優位性は発揮出来ないというわけです。
この違いをオープンネットワークの知識を活用することによって、擦り合わせのための初期値のバラツキを縮めるという表現で説明しています。
トヨタ生産システムに代表される「統合型(インテグレーション型)もの造り」は、「擦り合わせ型(インテグラル型)アーキテクチャ」の製品で競争優位を発揮することが多かった。
しかし、より複雑な「超モジュール化」の段階では、その優位性が発揮出来ないというのです。
要約すると、日本企業は、主に試行錯誤による設計擦り合わせで勝負できる「中程度の擦り合わせ」の製品では競争優位を得ることが出来るものの、同じ擦り合わせでも、事前の構想力や目利き能力の勝負となるような「モジュラー型製品」、科学的な設計パラメータの事前調整が重要になる「極限的な擦り合わせ製品」では必ずしも競争優位を得ることは出来ないとしています。
また、事前のモジュール化の努力は必要で競争優位に結びつくけれども、事後的には、モジュール化が競争力に直結する産業では米国企業などが競争優位を持つのだという指摘もなされています。
ここも重要な点だと思われます。
[参考]上記論文から基本事項を抜粋
『設計情報が有形物に転写されれば製造業、無形の媒体に乗って顧客に提供されればサービス業』
『各部署が緊密に相互調整して、チームワークで「顧客へ向かう設計情報の流れ」を作る仕組みの総体を、筆者は「統合型もの造り」と呼ぶ。トヨタ方式はその典型』
『「製品アーキテクチャ」とは、製品機能と製品構造のつなぎ方、および部品と部品のつなぎ方に関する「製品設計の基本思想」のこと』
『アーキテクチャには幾つかの基本タイプがある。一つは「インテグラル型(擦り合わせ型)」で、製品機能と製品構造(部品)の関係が錯綜しているため、部品設計をきめ細かく相互調整し、製品ごとに部品やその接合部(インターフェース)を最適設計しないと製品全体の性能がよく出ない。もう一つは「モジュラー型(組み合わせ型)」で、製品機能と部品が一対一ですっきり対応しており、インターフェースが標準化しているため、別々に設計した部品を寄せ集めてもまともな製品が出来る』
『いわゆる「オープン型」は「モジュラー型」の一種で、インターフェースが業界全体で標準化しており、企業を超えた「寄せ集め」が可能なタイプのものである(國領[1999])。これに対し「クローズド型」はインターフェースなど基本設計が企業内で完結している。以上をまとめるなら、図2の通りで、「クローズド・インテグラル」「クローズド・モジュラー」「オープン・モジュラー」の3タイプが抽出される。』