木曜日, 7月 22, 2004

システムインテグレーションの成長期は終わり?



採り合えず、今日のところは整理の意味を込めたグラフだけ。

\ikecho\日本SI.xls

北米BBレシオはちょっぴり低下

国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が2004年7月20日に発表した6月の北米半導体製造装置のBBレシオ(出荷額に対する受注額の割合、Book to Bill)比(3カ月移動平均)は1.08と、5月の確報値である1.10から0.02ポイント低下。

このBBレシオは半導体製造装置業界の市況を表すもので、1.00を下回ると業界の「景気」は下降局面だとされる。
1月は0.81、2月は0.87という水準だったことからすると、1を上回っているので良しとすべきなのだろうが若干低下しているというのは気に掛かる。

とは言っても、 3カ月移動平均ベースの受注額は16億1000万ドルで、5月の15億6000万ドルから3%増加。
この6月の受注額は、半導体業界が低迷した2003年6月の水準、7億2200万ドルと比べると2倍以上の数字。
更には、3カ月移動平均ベースの出荷額も14億8000万ドルと前月比5%増、前年同期比では91%もの増加。
半導体メーカーも需要に関して強気の見方を崩していないということを考えると、わずかな低下はブレの範囲内ということになろうか。

気炎のインテル

インテル社の4~6月期業績は絶好調、「弱気な要素はまったくない」

 インテル社の2004年4~6月期の業績は、売上高が80億5000万米ドルと前年同期比で18%の増加、純利益も18億米ドルと前年同期比で96%もの増加を記録。
インテル社のCEOクレイグ・バレット(Craig R. Barrett.)氏は、

""Intel continued to post strong year-over-year results in the second quarter as our microprocessor business followed seasonal trends and our communications business grew nicely, led by flash memory,""

と「フラッシュ・メモリー事業が大幅な増益をけん引した」とした。

調査会社の米ガートナー データクエスト社のクラウス・リネン氏がカリフォルニア州で開催中の「セミコン・ウエスト(Semicon West)2004」で2004年7月14日に半導体市場の好景気が少なくとも後1年間は続くという見解を表明している。

インテル社の勢いも続くということか。

グリーンスパン議長のお手並み拝見

米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン議長は20日の議会証言で、

" Consumer prices excluding food and energy--so-called core prices--have been rising more rapidly this year than in 2003. "

と物価の上昇を警戒し

" The FOMC judged this extended period of exceptionally low interest rates to have been helpful in assisting the economy in recovering from a string of adverse shocks. But in the process of returning the stance of policy to a more neutral setting, at least some of the capital gains on debt instruments registered in recent years will inevitably be reversed. "

と金利の追加引き上げを匂わせ、金融政策の転換を明確にしている。
こうしたグリーンスパン議長の発言に対して、6月の住宅着工が前月比8.5%(季節調整済年率)の減少、同じく小売および食品の売上も前月比1.1%(季節調整済年率)の減少しているなど幾つかの経済指標に陰りが見え始めていることや11月の大統領選挙があることから、金利の追加引き上げは難しいのでははいかとの意見も出ている。

出所:Chairman Greenspan presented identical testimony before the Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives, on July 21, 2004

参考:FRBによる米国経済予測

ITは経営戦略を変える?

湯田中さん 『ITは効率化ツールから戦略ツールへ、とか、ITは経営戦略そのもの、などというフレーズ(ITベンダーの売り文句)が繰り返されていますが、一方では、ITに効率化ツール以上の役割を求める愚を指摘する以下のような意見もあります。
ITがないと考えつかなかったようなことって、何かあるのでしょうか?
ITで実用化の道が開けた、というのは多数あるでしょうが。。。』


金融などの分野が中心ですが、リスクヘッジの計算などは典型例だと思います。
あれは手計算では無理ですし、1000の銘柄のポートフォリオを組むということは
「理論的には意味があるけれども実務上は空論」と見なされていました。
貸倒リスクの計算も同様です。
これは実用化の道が開けたというものですね。

個別消費者の過去の行動履歴から個別消費者の好みを予測してリコメ
ンドするようなものもIT無しでは無理です。
事前予想を事後結果で絶えず修正するベイジアンネットワークという手法を使っ
ていますが、ベイジアンという考え方自体IT以前は無視に近い状態でした。
これなどは、ITなかりせばというものでしょう。

湯田中さん 『楠木氏によると、蒸気機関や原子力のような「人間ができないことをやる」ための技術とは違って、ITには本来的に「人間にしかできないことを(人間がやるよりも効率的に)やる」ための技術であるという性質がある。「ITを使えば、これまでとは違った、質的に新しい何かが出来るようになる」という考え方は根本的に間違っている。ITは、これまで人間がやりたいと思っていたこと、やっていたこと、きちんとできていたこと、そうしたことがしっかりとあって、その上で同じことをもっと効率的にやるためのものである。
としています。これって、どう思います?
ITというのは触媒のようなもので、何も変えないのでしょうか?』

(今のところ)人間が定式化を行う====>その定式化に従ってITが素早く繰り返
し処理を行う。
という図式でしょう。
ですから、ITで経営戦略はポンとは出てこない。それまでの状態が、betterになるだけだと思います。
但し、医薬品メーカがやっているように、役員会で各役員が自分の前にある端末で簡単に財務シミュレーションが出来るようなITを導入すると、その企業の経営戦略に変化を与えるという可能性は否定出来ないのではないでしょうか。
それでも、端末のスイッチを切る、あるいは端末を無視する自由がある限りITは経営戦略を変えることは出来ません。
ITのところを教科書と変えて、教科書は人の考えを変えるかとすれば簡単ではないかと思います。天動説を信じる人は天文学の教科書を読んでも、それでもやっぱり天動説となります。せいぜい、天文学の情報のうち天動説に都合の良い部分のみを吸収して、バージョンアップした天動説に衣替えする程度でしょう。

水曜日, 7月 21, 2004

日本政府、経済見通しを3.5%成長に上方修正

景気が回復したという「雰囲気」が漸く浸透してきた。地方と東京との景況感の格差の問題や、かつてのパターンのように全ての業種で明るくなってきているという訳ではないので「良くなったという雰囲気」もそれなりにではある。
ともあれ、内閣府は20日、物価変動の影響を除いた実質での国内総生産(GDP)の伸びを1.8%成長と見込んだ2004年度の政府経済見通しを3.5%成長に上方修正する方針を固めたという。
物価の変動を考慮しない名目でも成長率を0.5%から1.8%程度に引き上げるとのこと。
当初は緩やかな景気回復と見ていたところを、足元の企業業績の回復による旺盛な設備投資、消費の回復から急速な回復をシナリオとするということになる。1月19日発表の政府経済見通しと2004年1~3月の実績は次の通りになっている。なるほど、これでは見通しの修正が必要になるわけだ。


旺盛な設備投資の先行指標とされる船舶・電力を除く民需向けの機械受注の動きをみると、この先も当分は大丈夫。当分は大丈夫というよりは設備投資が勢いを無くすという徴候は見受けられない。
但し、IT需要に関しては別なので注意。
設備投資が旺盛であっても、経済が好調さを取り戻しつつあっても、金額ベースでのIT需要は横ばいがせいぜいだということが受注の動きから分かる。
導入することで効率化によるコスト削減に貢献するとともに、IT機器自身の性能が倍々で増加していくというIT機器特有の性質から、今後も景気の上昇に伴って台数ベースでは増加しても金額ベースでは大幅な増加は有り得ないという状況が続くと思われる。
[船舶・電力を除く民需]


米国IT産業出荷額



昨年と比較すると確かに勢いはあるものの、短期的な動きということで着目してみるとどうも弱さが目立つ。買い替え需要が顕在化しているので、すぐに落ち込むということはないにしても金額ベースで2桁の伸びで推移するかは微妙といったところ。