湯田中さん 『ITは効率化ツールから戦略ツールへ、とか、ITは経営戦略そのもの、などというフレーズ(ITベンダーの売り文句)が繰り返されていますが、一方では、ITに効率化ツール以上の役割を求める愚を指摘する以下のような意見もあります。
ITがないと考えつかなかったようなことって、何かあるのでしょうか?
ITで実用化の道が開けた、というのは多数あるでしょうが。。。』
金融などの分野が中心ですが、リスクヘッジの計算などは典型例だと思います。
あれは手計算では無理ですし、1000の銘柄のポートフォリオを組むということは
「理論的には意味があるけれども実務上は空論」と見なされていました。
貸倒リスクの計算も同様です。
これは実用化の道が開けたというものですね。
個別消費者の過去の行動履歴から個別消費者の好みを予測してリコメ
ンドするようなものもIT無しでは無理です。
事前予想を事後結果で絶えず修正するベイジアンネットワークという手法を使っ
ていますが、ベイジアンという考え方自体IT以前は無視に近い状態でした。
これなどは、ITなかりせばというものでしょう。
湯田中さん 『
楠木氏によると、蒸気機関や原子力のような「人間ができないことをやる」ための技術とは違って、ITには本来的に「人間にしかできないことを(人間がやるよりも効率的に)やる」ための技術であるという性質がある。「ITを使えば、これまでとは違った、質的に新しい何かが出来るようになる」という考え方は根本的に間違っている。ITは、これまで人間がやりたいと思っていたこと、やっていたこと、きちんとできていたこと、そうしたことがしっかりとあって、その上で同じことをもっと効率的にやるためのものである。
としています。これって、どう思います?
ITというのは触媒のようなもので、何も変えないのでしょうか?』
(今のところ)人間が定式化を行う====>その定式化に従ってITが素早く繰り返
し処理を行う。
という図式でしょう。
ですから、ITで経営戦略はポンとは出てこない。それまでの状態が、betterになるだけだと思います。
但し、医薬品メーカがやっているように、役員会で各役員が自分の前にある端末で簡単に財務シミュレーションが出来るようなITを導入すると、その企業の経営戦略に変化を与えるという可能性は否定出来ないのではないでしょうか。
それでも、端末のスイッチを切る、あるいは端末を無視する自由がある限りITは経営戦略を変えることは出来ません。
ITのところを教科書と変えて、教科書は人の考えを変えるかとすれば簡単ではないかと思います。天動説を信じる人は天文学の教科書を読んでも、それでもやっぱり天動説となります。せいぜい、天文学の情報のうち天動説に都合の良い部分のみを吸収して、バージョンアップした天動説に衣替えする程度でしょう。