金曜日, 10月 22, 2004

米国経済マダラ模様

米国の経済は元気が良いのか勢いを失くしつつあるのか。判断の難しい局面。
今年4-6月期の実質国民総生産(GDP)は1-3月期の年率4.5%から一転して3.3%に減速。すわ、米国の経済は失速に向かってしまうのか。いやいや、そう考えるのは早過ぎると喧々諤々。
しかし、7-9月の実質国民総生産(GDP)は再び4%台に戻るものと見られている。
マイクロソフトの7-9月の売上高はパソコンのOSソフトの売上こそパソコン出荷の伸びを下回る7%となったものの、サーバー用ソフトが19%増だった他、業務ソフトが14%も増加したことで全体として11.8%増の91億8900万ドル。最終利益は4-6月期に記録した最高記録を更新し前年同期比10.9%増の29億100万ドル、日本円で換算すると約3100億円となった。
グーグルも上場後初の7-9月期の決算で売上高が前年同期比105%増と2倍の8億500万ドル、日本円で約860億円。純利益こそ検索広告を巡るヤフーとの裁判に関わる8月の和解金約2億ドルの支払いのために5100万ドルと前年同期比2.5倍に留まったものの和解金を除くとかなりの水準。
そして、インターネット小売大手のアマゾンも7-9月期の売上高が前年同期比29%増の14億6200万ドル、純利益も前年同期比約3.5倍の5400万ドル。もっとも、その牽引役となったのは北米以外。
ヤフーも売上高で前年同期比2.5倍、純利益が3.9倍。イーベイが売上高で前年同期比52%増、純利益で前年同期比で77%増と情報技術(IT)企業の勢いが良い。
だから安心とは言ってられない。
何といっても情報技術(IT)企業の勢いとは対照的にダウ平均に採用されている企業はぱっとしない。中でも、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)による顧客企業の粉飾決算助けの疑惑は連邦当局が捜査に着手したことで保険業全体への疑惑を生みかねない状況。これも米国経済にとってはマイナス要因と言える。
情報技術(IT)企業の10-12月期の売上予想を見ても慎重さが目立つ。
企業の景況感を表すISM指数景気先行指数は芳しくない。景気先行指数は既に4ヵ月連続で低下している。10-12月期、2005年1-3月期には再び減速してしまう懸念が大いにあるということになる。
そうしたことの原因の一つは1バレル当たり50ドルの水準と3年前の底値の約3倍にまでも跳ね上がった米国の代表的な原油でニューヨークマーカンタイル取引所において、その先物取引が行われているWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)の影響がある。
但し、この原油価格高騰の影響も物価水準自体の動きが落ち着いていることや、在庫の積みあがりも情報技術(IT技術)の発達で小さいものとなっていることからすると心配には及ばないかもしれない。

英国IT市場概況

英国の状況は米国とは異なっています。
まず、コンピュータの生産に関しては5月が底になって上昇を続けています。
内需がどうなっているのか確かめるために、輸出入もチェックしてみます。すると、輸入も一服感があったものが2004年の第2四半期には明確に上向きに転じています。





こうした動きは英国内の旺盛なIT投資需要を反映していると言えるでしょう。
民間のIT投資のうちハードは2003年の半ばに底を打って以来上昇トレンドにあります。
こうした動きと対照的なのが民間のソフトウェア投資の動きで2003年の第1四半期から2004年の第2四半期まで大きな変化が見受けられない状況になっています。



ソフトウェアの需要動向をソフトウェア投資だけで見るのはボリュームからいっても早計。
そこで、ソフトウェアの出荷額を見てみます。すると、IT投資におけるソフトウェア投資の動きとほぼ同じく、2003年第3四半期にピークを付けた後は少し減少を続けているという傾向になっています。

英米でIT需要の動きが統計上も異なっているとしました。しかし、ハードの動きよりもソフトの動きに勢いが無くなっているということは共通しているようです。


水曜日, 10月 20, 2004

米国IT市場概況

ニューヨーク連邦銀行が発表しているコンピュータ・ハードとソフトウェアを対象にしたテックパルス・インデックスを見ると、この指数の水準自体は2004年に入っても高いものとなっています。
しかし、伸びには勢いが無くなってきているのがはっきりと分かります。





ニューヨーク連邦銀行のテックパルス・インデックスはハードとソフトウェアが一緒になっています。
そこで、ハードだけを出荷額ベースで見てみます。
ここでも、2004年の春先以降、足元の8月まで伸び率の鈍化が確認できます。但し、テックパルス・インデックスの示しているところと同じように拡大は続けています。



需要サイドから企業の情報化投資を見てみます。
企業の情報化投資のうちコンピュータ及び周辺機器の投資は2004年の第1四半期に伸び率が落ち込みましたが第2四半期では逆に力強さを示す結果となっています。
ところが、ソフトウェア投資のほうは既に設備投資の天井に差し掛かったような観があります。



ITサービスはどうでしょう。
ITサービスに関しては、まだ統計が公表されるようになってから日が浅いために大局的な流れを四半期ベースで観測することは残念ながら無理です。
それでも、2003年第4四半期から2004年第2四半期までの推移でみると、ソフトウェアが明確に減少しているのを始め、システム・デザインに関してもハードほどの勢いで増えていることは言えません。むしろ、横ばいと言ってしまったほうが正しいかもしれません。


サーバー需要に関する考え方の整理

[IT先進国]
必要サーバー数=1企業当り就業者数(↓)×企業数(→)×1企業当り必要数(↑)
新規需要=必要サーバー数の差分

※1企業当り必要数は(→)となる可能性有り

更新需要=陳腐化率(↑)×現存サーバー数

サーバー需要=新規需要(↑×0.5)+更新需要(↑)

サーバー需要額=1台当り価格(↓)×サーバー需要(↑×1.5)
=↑×0.5

[BRICs]
必要サーバー数=1企業当り就業者数(↑)×企業数(↑)×1企業当り必要数(↑)×普及率(↑)
新規需要=必要サーバー数の差分

※1企業当り必要数は(→)となる可能性有り

更新需要=陳腐化率(↑)×現存サーバー数

サーバー需要=新規需要(↑×4)+更新需要(↑)

サーバー需要額=1台当り価格(↓)×サーバー需要(↑×5)
=↑×4

[IT先進国]と[BRICs]を合わせると(↑×4.5)となる可能性。
しかし、価格が台数需要に反比例するとすると需要額自体は(↑×3)程度となる可能性も。
いづれにしても、飽和とは言えないように思えます。

※ハード部分は自動車産業の現状が参考になるでしょう。

中国が米国を凌駕する日

50年先、ICT支出でBRIC諸国大きな地位と同じく、BRICs各国の生産性の上昇はBRICs各国と米国の1人当りGDPの比に比例し一定の値に収束する(成長率の収斂仮説)という前提でIT支出を試算してみました。
IT支出の対GDP比率は米国の5%台を最大値として、1人当りGDPの比に比例するものとしています。
そうすると、GDPの規模で中国が米国を追い抜くのが2043年、IT支出で追い抜くのが2044年ということになります。
但し、この試算ではIT全般の価格トレンドと中国と米国との間のIT貿易の関係を織り込んでいません。
また、インドは日本のIT支出を凌駕しますが半世紀内に米国のIT支出を越える可能性は低いと考えられます。



[2000年時点]