土曜日, 4月 23, 2005

別の道を辿った仲間 

 ネアンデルタール人と私達は約50万年から40万年前にアフリカからヨーロッパという広範囲にわたって暮らしていたホモ=ハイデルベルゲンシスという共通の祖先から枝分かれしたと考えられている。遺伝子レベルの解析の結果である。
この共通の祖先から枝分かれして、それぞれに独自の進化を遂げたのが、しばしば原始人と呼ばれることもあるネアンデルタール人と現代人の直接の祖先ということになるクロマニョン人。
枝分かれして進化していったということは、当然ながら、ネアンデルタール人とクロマニョン人は同じ時代を生きていたという時期を持っている。ただ、遺跡の数や、その遺跡から見つかる人骨の数などからすると、クロマニョン人のほうがかなり人口が多かったのではないのかと言われている。
その原因は詳しくは分かっていない。
一つは、以前、このブログでも取り上げたように、ネアンデルタール人の言語能力の問題が指摘されている。身体的な特徴から高い言語能力を持つことが出来なかったネアンデルタール人は狩りなどを行うにしても、仲間同士の意思の疎通を図るのが大変であったろだろうというようなことが、クロマニョン人ほどには人口を増やせなかった原因ではないかというもの。
これも一つの考え方。
もう一つの考え方がある。こちらのほうは、かなりショッキングな内容であり、従って、多くの反論が出されている。曰く、それは偏見ではないのかと。
それは、ネアンデルタール人の食人習慣。
1991年と1998年に、フランスの考古学者アルバン・ドフルールはフランス南東部のムーラ・ゲルシー洞窟からネアンデルタール人の骨を発掘し調査を行った。
回収された人骨と動物の骨を比較した結果、何とそれらの人骨には石器によって損傷の跡があり、しかも骨もバラバラに切断された状態であることが明らかになった。バラバラの人骨は、同じくバラバラの動物の骨と同じ場所に棄てられた。
ムータ・ゲルシー以外のネアンデルタール人の遺跡でも食人の痕跡の認められる人骨が発見されている。
そして、クロマニョン人の場合は、そうした確固たる痕跡は見つかっていない。
ネアンデルタール人とクロマニョン人の人口比の関係から考えると、ネアンデルタール人に食人の習慣があったらしいということになる。
このような習慣があったから、だから、ネアンデルタール人は結果として滅んだのだということには繋がらない。
先にクロマニョン人の言語能力に関して触れたように、同じ環境に生きていたにしても、ネアンデルタール人はクロマニョン人よりも厳しい生活を送らざるを得なかったということを忘れてはならないだろう。そのような厳しい環境の中で、食糧事情が厳しかった場合に止むを得ず、他のネアンデルタール人の集団を襲っていたと考えられる。
1998年に、ジョアン・モリシオとペドロ・スートがポルトガル中央部のラガー・ベルホ岩窟で発見し、考古学者のジルハオンと人類学者のドゥアルテが発掘した人骨は全体的には現代人の特徴を持ちながら、大腿骨と比べて脛骨が短いというネアンデルタール人の決定的な特徴を備えていた。この子供の骨はクロマニョン人とネアンデルタール人との混血児だとされた。
この結論には反論も多く出された。しかも、混血の証拠は現在のところ、ラガー・ベルホ以外では見つかっていない。
それでも、同じ時代を生きていたとしたら、障害を乗り越えて愛を育んだ可能性も考えたいというもの。
とすると、私達の体の中にもネアンデルタール人の血が流れている可能性が出てくる。
そうであるなら、なおのこと、ネアンデルタール人の食人の習慣というのは、止むを得ないものであったに違いないと考えたい。

<<一言主>>
○ドイツのヴェゲナー(Wegener[1880-1930])は大陸が移動するという説を最初に唱えた。

○ヴェゲナーは南アメリカの東側とアフリカの西側の海岸線が非常に良く似ているという点に着目して大陸は移動しているのではないかと考えた。

○約3億から2億年前のペルム紀から三畳紀にかけて、現在の大陸はパンゲアと呼ばれる一つの大陸だった。

○約1億7000万年前頃のジュラ紀中期にパンゲア大陸は南北に分裂を開始した。

○パンゲア大陸の分裂した北側をローラシア大陸という。

○ローラシア大陸は現在の北アメリカ、アジア、ヨーロッパに相当する。

○パンゲア大陸の分裂した南側をゴンドワナ大陸という。

○ゴンドワナ大陸は現在のアフリカ、南アメリカ、オーストラリア、南極大陸、インドに相当する。

いつもの豆に代えて、エミリーブレンドを500g購入。たまには気分転換。
見出しとして貼り付けている写真。密かに武蔵村山的情景に代替。村山以外の写真のほうが多かったりもする。。。

金曜日, 4月 22, 2005

ちょっと苦手 

 私は虫が苦手だ。見るだけなら、どうにか何ともない。だが、触るのはいただけない。昔からそうだったのかというと、そうではない。
少なくとも小学生の頃までは昆虫に接する機会が多かった。小学校に上がるか、上がらない頃にはカブトムシを飼っていた。自然が比較的多く残っている地で育ったので、林にクワガタを採りに行ったことも度々。カブトムシはいなかったが、クワガタなら木の根元の土を掘り起こせば幼虫が、木の幹の樹液が出ているところを見れば成虫がいて、それを手で採ったもの。
そう、その頃は手で採っていた。手袋などは断じて嵌めていない。
ところが、いつの頃からか、高校に入ってからか、それ以降か判然としないが、兎も角も、今は昆虫と言えども素手で接触を図るというのは、私にとっては無謀な試み以外の何物でもない。私にとっては昆虫はエイリアンのようなもの。いや、エイリアンそのものに他ならない。映画のエイリアンに出てくるエイリアン、何だか話が混線しそうではあるが、そのエイリアンも昆虫に似ているではないか。きっと、エイリアンと聞いて昆虫を想像する人は多いに違いない。もとより、まるで根拠のない主観的な妄想ではある。
あのガンダムにも影響を与えたとされるロバート・A・ハインラインの『宇宙の戦士』。その『宇宙の戦士』をバーホーベン監督が映画化した『スターシップトゥルーパーズ』で描かれていたエイリアンは虫型の「アラクニド」だったではないか。
昆虫の種類は74万種と言われ全動物の4分の3を占めている。地球上では多数派。幼虫から成虫に至るまでに大きく姿を変える昆虫が地球上では多数派なのだ。
だから、少数派の哺乳類に属する私が、どうのと言ってみたところで多数決では否決されてしまうだろう。
そうは言ってもやはり昆虫を見るとエイリアンが脳裡を翳(かす)める。
地球上の生命の起源は宇宙の他の天体にあって、その天体から生命の素が地球にたどり着いたことで、地球の生命の歴史が始まったのだという考え方がある。胚種普遍説(パンスペルミア説)という。丸っきり荒唐無稽な話かというと、必ずしもそうではない。しばしば引き合いに出されるが、この説を唱えた科学者の中には、電解質溶液理論の研究で1903年にノーベル化学賞を受賞したスウェーデン人のスヴァンテ・アレニウス(Svante August Arrhenius,1859 - 1927)がいる。これは、考え方の権威付けにはなる。
最近では、イギリスはカーディフ大学のチャンドラ・ウィクラマシンゲ教授が、地表から最高41キロメートル上空の大気から生きた細胞を採取したことをもって、胚種普遍説(パンスペルミア説)が実証されたと報告している。科学は理論と実証の積み重ねという点からすると、こうした結果も胚種普遍説(パンスペルミア説)の補強にはなりうる。
こういう理論やら結果をもって、昆虫は宇宙からやってきたエイリアンなのだという向きもある。
だから、こんなにも違うのだと。
直感的に、ふむふむと納得したいところだが、多くの科学者はこの仮説を支持していない。
胚種普遍説(パンスペルミア説)は20世紀の初めの時点で、ロシアの生物学者オパーリン博士による生命の起源はアミノ酸の生合成によるタンパク質の生成にあるという説によって否定されているのだ。
そもそも、生命のルーツを地球以外の宇宙に求めても、そのルーツの天体ではどうやって物質から生命が生まれたのだろうか。そんな疑問も湧いて来る。
ならば、昆虫だけがルーツが違うのではないのかということになる。その考え方も現段階では賛同する科学者は非常に少ない。
よくよく考えるに、姿形だとかが異なるからというだけで、全く別物で、ルーツが異なるのだとするよりも、同じルーツから、こんなにも多様な進化が繰り広げられたと考えるほうが楽しいのではないか。
地球以外の宇宙に生命があるならば、現在の地球上の、これほどまでに多様な生命からは想像も出来ないような生命であるのではないか。そう思いを巡らせると楽しいもの。
そうは言っても、やはり、私は昆虫を依然として手で触ることは出来ないのであるが。


<<一言主>>
○5つの「ひも理論」を統一する「M理論」では、次元は11次元が必要。

○「M理論」では紐は膜(ブレーン)となる。

○「M理論」を提唱したウィッテンはアインシュタインの後継者とも言われている。

○「ひも理論」では重力は宇宙から漏れてしまっていると考える。
これが、重力が電磁気力よりも非常に小さい理由だと。

○「M理論」では重力以外は両端が膜(ブレーン)に繋がっている紐と考えられている。しかし、重力は膜(ブレーン)に繋がっていないリングだという。

○ビッグバンは平行宇宙の膜同士が接触したために発生したと考えられている。

木曜日, 4月 21, 2005

煉瓦を積み重ねれば摩天楼 

 日本はどうも経済のほうはパッとしない。日本の文化は存在感が増しているというのに。いや、経済のほうがそれなりに大きくなった、成熟の度合いに達したからこそ、文化のほうが受け入れられていく土壌が整えられたというべきかも。
その一方で、経済に関して、とても注目を浴びている諸国がある。
ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の4国。頭文字をとってブリクス(BRICs)などと呼ばれている。煉瓦を意味する bricks をもじったもの。
この4国、近い将来、経済大国となると考えられている。中には、2050年で、中国が米国を抜いて世界首位の経済大国に躍進し、インドは米国を凌駕するには至らないものの、日本を抜いて3位、ロシアとブラジルも5位と6位になるだろうという予測もあったりする(2003 年10 月、米ゴールドマン・サックス証券による「Dreaming with BRICs: The Path to 2050 (BRICsと夢見る2050 年への道)」)。
一体、現状では、その注目すべき国々の経済規模がどの程度か備忘的にメモ。

BRICs 
  経済規模(10億ドル、GDP03) 成長率(%,03)
ブラジル 492 0.0
ロシア 433 7.0
インド 601 9.0
中国 1,417 9.0
 
先進国(一部) 
米国 10,949 3.0
日本 4,301 3.0
ドイツ 2,403 0.0
フランス 1,758 0.0
英国 1,795 2.0
     
全世界 36,461 3.0
出所:世界銀行 

外見+中身=不変の法則 

 昨日のブログにローマ法王がベネディクト16世が3回の投票で決まったと書いたが、3回ではなくて4回目の投票で決まったらしい。らしいというのは、どうやら3回ではなくて4回だということをメディアの報道で知ったという次第で、法王庁のページで確認していないから。
コンクラーベでは1日に2回の投票が行われるらしいということと、2日目の午後に決まったということからすると4回目ということなのだろう。
ともあれ、ヨーゼフ・ラツィンガー枢機卿は、その瞬間にローマ法王ベネディクト16世になった。
ローマ法王になる以前と以後とで個人としては何も変わらないのではないかという向きもある。これは、日本でいうと皇位継承の際にも言われたことでもある。
その一方で、長い年月を綿々と続く精神というか、簡単には言い表せないものが、その瞬間を境にして継承されていくのだという思想もある。
いわば、脱皮のようなものなのかと、俗なるものに塗(まみ)れきった身としては、幼稚に還元して考えてしまう。

昆虫は幼虫から蛹(サナギ)を経て成虫になる。いろいろ形は変わるけれど、同じ「ヤツ」じゃないか。確かに同じに違いない。全く別だったら、それはそれで物凄く恐ろしい。
でもと思う。
幼虫の時に考えることと、成虫になって、空を羽ばたけるようになった時と、全く同じ考えで同じような行動を採るのだろうか。空を飛べるようになった時と地面を這いつくばっている時点では、別虫格とは言えないまでも、それに近い位のものがあるのではないだろうか。
本人ならぬ本虫にとっては同じでも、他者にとってはクネクネ幼虫と空を飛ぶ虫とは同じには見えない。

昆虫だと外見がかなり変わるので分かり易い。一方、人間などはせいぜいが縮尺を拡大する程度で大きくは変わらないのが常。
それでも、いや、外見が大きく変わらないという、その分だけ中身が変わるということがあったりするのではないだろうか。

<<一言主>>
○クラインとカルツァの比喩によれば、人間が数十億分の1にまで小さくなれば、小さく巻き上げられた数多くの次元を目にすることが出来るという。

○現代物理学には、およそ20の基本定数が存在している。

○1985年、「ひも理論」は5つの理論が並列する状態となる。輪のような紐に、輪になっていない紐、必要とされる次元も様々という状況に陥った。

○遠く離れた空間を結ぶ近道のことをワームホールという。

○アインシュタインの考え方では宇宙空間を曲げたり伸ばしたりすることが出来るが引き裂くことは出来ない。

○1995年、エドワード・ウィッテンは5つあった「ひも理論」が実は一つであることを提唱した。これを「M理論」という。ただ、Mが何を意味するかはウィッテンすら語っていない。

○5つの「ひも理論」は、時間の1次元、空間の3次元に、小さく巻き上げられた6次元の合わせて10次元が必要だった。

昨日、床屋へダッシュ。
伸びていた髪をバッサリ。4,000円也。
床屋は物心付いた時から同じところ。首とか型とか背中とかをマッサージしてくれるというのが良い。加えて、髪型を言わなくても春夏秋冬、四季に合わせてカットしてくれるというのが有り難い。
でも、お姉さん、もみ上げは一気に剃って下さいね。

水曜日, 4月 20, 2005

光明は波及するだろうか 

 新しいローマ法王が決まった。
意外と早かったなという印象と、色々な下馬評があったが、ヨハネ・パウロ2世の理論的支柱の役割を果たしていたというヨーゼフ・ラツィンガー枢機卿(78)の経歴からすると納得してしまう。
これほど早く決まったというのも、中々に珍しいという。
20世紀に8回あったコンクラーベ(法王選出会議)でのローマ法王選出日数は平均で3.25、投票回数では平均7.9回という。
それが2日、3回目の投票で決定。手元の資料を見ると、第二次大戦前夜の39年のピオ12世と78年のヨハネ・パウロ1世のときの2日間に並ぶ記録になる。
ヨハネ・パウロ2世の時ですら、3日間、8回の投票だ。
珍しいという点では、ヨハネ・パウロ2世がポーランド出身と非イタリア系であったのと同様にドイツ出身という点。
これだけ素早く決まったローマ法王だが、出身地のドイツの経済状況はどうも芳しくない。
ドイツ経済の動向を示すIfo景況指数の3月の値が前月比△1.4pt。
構造的要因を重く見る悲観的な見方とユーロ高と原油高による影響を懸念して、3月の景況感は一気に悪化。
設備投資は2004年末に受注が増加したものの、これはエアバス関連の受注による結果であり、設備投資の回復の兆しと受け取ることは出来ない。
加えて、輸出であげた利益を国内の設備投資に回すのではなくて、海外への設備投資に回しているのではないかと考えられている。
設備投資は2004年で4年連続の前年比減を記録したが、設備投資/GDP比率から考えると、既に十分なストック調整は2004年中に終わっている。


ちなみに、ドイツの GDP 、設備投資の前年同期比は次のようになっている。
設備投資はずっとマイナス。
2004.1q:1.6 | △0.9
2004.2q:1.9 | △1.0
2004.3q:1.2 | △1.3
2004.4q:1.5 | △0.2
出所:ユーロスタット、ドイツ連邦統計局

こうした状況の中で、ドイツの失業率はナチス前夜に匹敵とも形容されるような凄まじい状態となってしまっている。
2004年12月 | 10.8%
2005年 1月 | 12.1
2月 | 12.6
3月 | 12.5
出所:ドイツ連邦統計局

但し、明るい兆しもあるにはある。
例えば、消費財受注は4ヵ月連続して増加。
2004年12月 | 6.7%
2005年1月 | 8.5
2月 | 8.1
出所:ドイツ連邦統計局

ドイツと言えば、ヨーロッパの大国。ドイツの経済の動きがヨーロッパ経済を左右していると言っても大袈裟ではないだろう。

ドイツ出身のヨーゼフ・ラツィンガー枢機卿を第265代法王ベネディクト16世に選出した素早さと同じ位に、ドイツ経済は延長戦に縺れ込むことなくストライクを決めてくれるだろうか。

<<一言主>>
○弱い力と電磁気力は非常に高温の状態では電弱力という一つの力となる。

○ワインバーグ教授らは電磁気力と弱い力、強い力を統一する「標準理論」を提唱。ノーベル賞を受賞する。

○「標準理論」は重力を説明しない。

○ジョン・シュワルツらは「ひも理論」の欠点とされていた質量ゼロの粒子、光より速いタキオン、11次元などに取り組んだ。

○1973年、ジョン・シュワルツは質量ゼロの粒子は重量子(G)であると考えた。しかし、学会からは無視された。

○1984年、M.グリーンはJ.シュワルツは「ひも理論」の問題点とされた数学的矛盾を計算によって実際に確かめた。その結果、矛盾なく496という数値を導いた。これが「ひも理論」が「万物の理論」として世に知られる初めとなった。

○1919年、レオドール・カルツァは電磁気力もアインシュタインの考えた次元の歪みではないかと考えた。そして、そのためには隠された次元があるとした。

○クラインはカルツァの考え方を発展させ、次元には大きき伸びた次元と小さく縮まった次元があると考えた。

火曜日, 4月 19, 2005

奇妙な名前の奇妙な振る舞い 

 物質をどんどん小さく細かく分けていくと原子になる。みかんでもリンゴでも、ガラスカップでもいい。
割って砕いて、磨り潰してと粉々の粒々にすると原子に辿り着く。
原子は目では見ることが出来ない。
目には見ることの出来ない。
その目で見ることの出来ない原子は更に細かくバラバラにすることが出来る。
原子は原子核と電子で出来ていて、原子核は更に陽子と中性子で出来ている。驚くべきことに、これで終わりにはならない。
原子核を構成している陽子と中性子はクォークというものが3つくっついて出来ている。このクォークは、グルーオンと呼ぶ粒子によって媒介される「強い力」と呼ばれる力でくっ付き合って陽子や中性子となっている。
「強い力」は、原子核の中でしか働かない力であるものの、重力などよりもずっと強力な力であるために、くっ付いているクォークを1つだけ引き離すということは非常に困難。
つまり、クォークを1個だけ見るということはちょっとやそっとでは出来ないということになる。
そんな厄介な存在のクォークは、1964年にマレー・ゲルマン(Murray Gell-Mann)とジョージ・ツバイク(George Zweig)が最初に存在を提唱している。クォークという名前の由来が洒落ている。
ジェームズ・ジョイス(James Joyce)の詩の一節(Finnegans Wake[1939] p. 383)の
Three quarks for Muster Mark!
から名付けたというのだ。ジョイスの造語で「つまらないもの」「ばかげたもの」というようなニュアンス。
くっ付いていないと存在出来ないという意味で「つまらないもの」「ばかげたもの」なのか、目に見えないほど小さいので「つまらないもの」「ばかげたもの」だというのか。いづれにしてもジョーク。
ともあれ、クォークにはアップ( u )、ダウン( d )、チャーム( c ) 、ストレンジ( s )、トップ( t )、それにボトム( b )の6 種類があります。
アップ( u )、チャーム( c) 、トップ( t )は+2/3 の電荷をもち、
ダウン( d )、ストレンジ( s )、ボトム( b )の3 つは?1/3 の電荷を持っている。
現在ではクォークは「強い力」でぴったりとくっ付いているが、宇宙の始まりの頃では宇宙が非常に高温だったために、個々バラバラに存在していたと考えられている。
そのバラバラの状態は、本当に自由気ままに、あっちへ飛んだり、こっちへ寄ったりという状態だと想像されていた。
それが、日米チームが2000年から米ブルックヘブン国立研究所で行った実験結果によると、どうやら、一定の方向に流れるような液体状態で存在していたらしいという(18日発表)。
ビッグバンの数10万分の1秒後の温度である1兆度!という超高温での実験結果とのこと。物凄い温度であるが、この実験結果も理論的には予想外なのだとか。
クォークの語源となったジェームズ・ジョイスのフィネガンズ・ウェイクも文学史上で奇妙な本だが、物質のクォークもジョイスの心を知ってか知らずか、負けず劣らず、科学者の予想を覆す奇妙さを持ち合わせているようだ。


<<一言主>>
クォークを更にバラバラにすると「ひも」になる。もう、こうなるとSFの世界!
○「ひも理論」では素粒子の種類は「ひも」の振動の種類とされる。

○「ひも」はあまりにも小さいために実験で確かめることが困難だという欠点がある。
○実証出来ない理論は物理学ではなく哲学。

○「ひも理論」は万物の源は「ひも」であるとする。

○1968年、イタリアの物理学者ガブリエーレ・ヴェネツィアーノは弱い力を説明するためにオイラーの関数を用いた。これが「ひも理論」の始まり。

○米国の物理学者レナード・サスキンドもオイラー関数が弱い力を説明していることに気付いた。

○レナード・サスキンドはオイラー関数の実体が「ひも」であることを発見。論文を書くが却下。サスキンドは酒に走り、「ひも理論」はお蔵入りとなった。

月曜日, 4月 18, 2005

道産子の起源 

 北海道の白老町でダンヅケが再現されたという。ダンヅケとは何か。ダンヅケというのは馬の背中に荷物を何段も積み重ねて運ぶことだという。
再現を行ったのは仙台藩白老元陣屋資料館。ダンヅケは昭和初期まで見られたという。
私の父方の田舎にも馬がいた。馬といってもサラブレッドではない。そもそも、道南の牧場ではなく、道北の寒さが一段と激しい農村。
という次第で、ずんぐりとした道産子。
ダンヅケを担ったのも道産子。
日本に8種いるという在来馬の一種。
他の在来馬には、明治時代以前の日本の代表馬の木曽馬と野間馬、御崎馬、対馬の対州馬、宝島のトカラ馬、それから沖縄の宮古馬と与那国馬。
松山藩が野間郡の農家に委託して軍馬を飼育させたのが野間馬。
御崎馬というのは、高鍋藩秋月家が、7ヵ所の藩営牧場で飼育した馬。その7ヵ所の牧場のうち都井村御崎牧で飼育されたもの。
在来種というが、日本列島にはもともとは馬はいなかったと考えられている。
縄文から弥生時代にかけて、中央アジアのタルパン系高原馬が改良された小型の蒙古草原馬が日本に家畜馬として伝わって日本の在来種の基礎となったという。
タルパン系高原馬というのは汗血馬と呼ばれた名馬。
道産子以外の在来種は、ここまでで納得がいく。
それでは、道産子のもとになった馬達は、一体、いつ海を渡ったのだろうか。
12世紀の『今昔物語集』には、後三年の役(1083-1087年)で敗れた安倍頼時が海を渡って「海ノ北ニ幽(かすか)ニ見渡サルル地」に行ったものの騎兵に遭って逃げ帰ったという話が紹介されている。
ただ、東北から海を渡った地が北海道なのかどうかは今一つはっきりとはしない。
更に、時代を下ると、鎌倉時代には津軽の安東氏が蝦夷管領として北海道に進出、室町時代には安東氏が12の館を北海道に築いていたことが分かっている。
このうちの一つが40万枚もの大量の中国銭をおさめた越前焼や能登の珠洲焼の甕が複数出土した「志苔館(しのりだて)」。
上野国の武士、小林重弘が築いたもので、1457(長禄元)年にコシャマインの乱で最初に攻め落とされた館。初代の小林重弘の孫の館主小林良景は討ち死に。この乱を平定したのが武田信広。
安藤氏の部将で、渡島半島西部の豪族蠣崎氏の聟となることで勢力を不動にし、後の松前氏の祖先となった人物。
という経緯からすると、この乱の以前に既に相当数の内地の人々が北海道に渡っていたと思われるから、15世紀頃には東北地方から馬が持ち込まれたのではないのだろうか。


<<一言主>>
○アインシュタインは宇宙は秩序正しく予測可能と考えた。一方、素粒子のレベルでは確実なものはなく結果の確率の予測が出来るだけだとボーアは考えた。

○1930年代、量子力学は宇宙を構成する力は重力(G)と電磁気力(EM)だけでなく、強い力(S)と弱い力(W)の4つの力からなることを明らかにした。

○1945年、原子爆弾の実験によって、原子核内部で陽子と中性子を結び付けていた「強い力(S)」が原子核を分裂させることで人工的に放出された。

○放射能を生むのは「弱い力(W)」。

○量子力学は重力に関しては黙して語らない。

○1916年、ドイツのカール・シュヴァルツシルトはブラックホールの存在を予測した。彼は第一次世界大戦中の前線で一般相対性理論から巨大な重力を持つ領域があるとしたのだった。

○膨大な重力が小さな点に押し込められたブラックホールの内部構造を解明するには、小さな領域を説明する量子力学と大きな領域を説明する一般相対性理論を統一して取り扱う必要がある。

日曜日, 4月 17, 2005

回避の手段 

 人類の祖先が二足歩行を始めたのはおよそ400万年前だと考えられている。道具を使い始めたのが約250年前。
二足歩行を始めたことで、両手が解放され自由になる。そのことが人類の祖先が道具を使い始めたことと関係していると思われていた。
それにしては400万年前と250万年前では、少し間隔が空きすぎているというもの。
では、何が二足歩行を始めたことと密接に関係しているのかというと、どうも明確な答えはない。
道具を使わなければならない状況が起こり、それが二足歩行を促したのか。その逆だとしても長い間隔が説明をすっきりとはさせてくれない。
環境の変化、つまり、森がサバンナとなってしまって、樹上生活が出来なくなったことが、二足歩行の引き金を引いたのだという考え方もある。
ところが、人類の祖先達がサバンナへと生活圏を移したのは約170万年前だということが分かっている。
確かに、それよりも以前に人類の祖先達の生活の場であった森は小さくなっていた。
ここに、面白い説がある。ニナ・ジャブロンスキーとジョージ・チャプリンが唱えたもので、人類の祖先は立ち上がることで威嚇や譲歩を表現し、無駄な暴力を避けたのではないか。それが、二足歩行の起源に関係しているのではないのかというもの。
ゴリラやチンパンジーといった類人猿の行動がヒントのもと。森林面積の縮小によって生活の場も小さくなり、群れと群れとの縄張りが非常に近くなった状況では争いも頻発したであろう。
そんな時に、いきなり暴力手段に訴えるのではなく、立ち上がることに伴うジェスチャーによって衝突を避ける。
本当だとすると、非常に面白い。
その後、人類は言葉を獲得し、更なる直接の暴力を回避する手段を手にした。現在の人類と共存していたネアンデルタール人は、言語能力が乏しかったという。話すことが出来なかったわけではない。話すことは出来たが限られた発音しか出来なかったらしい。
その差が、生き延びた現世人類と滅んでしまったネアンデルタール人との差となっているのだろう。

今日、町村外相が中国を訪問して、李肇星外相と釣魚台で会談する。
6日の反日北京デモが16日には上海に飛び火。抗日勝利60周年ということと、日本が国連の常任理事国入りを目指していることが、大規模デモに火を付けた。サンフランシスコの華人団体「グローバル・アライアンス」の呼びかけが発端とも報じられている。もとより詳細は分からない。

様々な主張がある。その主張の表現の形態としてデモがある。
ただ、それが暴力を伴った場合、デモは暴動と化してしまう。デモは許されても暴動は許されない。

人類は、二足歩行を始めて以来、数々の衝突回避の手段を手に入れてきた。
同時に、繰り返してはならないという最悪の事態を繰り返しても来たということも事実。
その事実に向き合いつつも、折角の手段を有効に使うということをいつも忘れないでおきたいと感じている。


<<一言主>>
○1986年のハレー彗星の調査で60%の有機物が含まれていることが確かめられた。

○AIDSはアフリカのミドリ猿が自然宿主だと考えられている。

○ナマケモノの祖先はメガテリウムという大型動物。

○1918年のスペイン風邪の流行時にはウルフ彗星が地球に接近していた。

○現在まで約1000個の彗星が知られている。

○現在、年間約10個の彗星が地球の軌道と交差している。

○1969年のマーチソン隕石はアミノ酸などの有機化合物が初めて確認された隕石。

○スペイン風邪は、スペイン国王アルフォンソ13世が罹患したことから「スペイン風邪」と呼ばれた。

This page is powered by Blogger. Isn't yours?