土曜日, 12月 25, 2004

メリークリスマス 

もう、こんな季節!幸多からんことを。


甘いコーヒーと満腹感 

知人にわざわざ甘い缶コーヒーを買って幾つも飲む人がいる。たまたま、そのO氏がコンビニで缶コーヒーを買う所に出くわした。
それで、ひょっとして甘いもの好きかもしれないと尋ねたところ。そうではないらしく、何でも、空腹感を紛らわすためとのこと。何故、甘い缶コーヒーなのかと聞くと糖分が脳の満腹中枢を刺激するのでとの答え。
なるほど、そういうことだったのか。
コーヒーの分量ではなくて、糖分だったわけだ。
O氏の言っていた脳の満腹中枢( Ventromedial hypothalamus / satiety center )というのは脳の中の大脳の底の部分でいわゆる中脳との間にある間脳の視床下部( hypothalamus )と呼ばれる場所にある。ここには、空腹中枢ならぬ摂食中枢( Lateral hypothalamus / hunger center )というのも同時に存在している。これは、A.W.ヘザリントンとS.W.ランソン(A.W.Hetherington and Stephen Ranson)によって1940年にネコの視床下部の腹内側核を破壊するという実験によって確かめられたもの。
これを応用すると、視床下部にある満腹中枢や摂食中枢を電気で上手いこと刺激すると食欲をコントロールすることが出来るということになる。
これは一見すると、いや一聞すると大変便利なようにも感じる。しかし、よくよく考えてみると何とも味気の無いもの。それに、必要に迫られた、例えば病気の治療などのように、そういう場合だとしても、簡単に脳に電気刺激を与えてしまって良いものかとも思える。
まぁ、それはさて置き、満腹中枢は血液中のブドウ糖の濃度を調べてブドウ糖の濃度が高ければ満腹なんだよと脳自体に伝える。逆に不足しているとお腹が減ったよと脳に伝える。つまり、ブドウ糖が重要な役割、電気信号となっているわけだ。そうすると、甘いものを沢山摂るとブドウ糖の濃度が上昇して満腹だよという指示が満腹中枢から出るということになる。はず。なのだが、必ずしもそうではないらしい。実は、血液中のブドウ糖の濃度を調整する器官が存在するのだ。こうしたところが人体のメカニズムの不思議なところ。膵臓から分泌されるインシュリン( insulin )が血液中の糖分を分解しエネルギーに変えて肝臓や筋肉に蓄えたり中性脂肪に蓄えたりするために働くのだ。この働きが鈍ると血液中に糖分がいつまでも残り続けて糖尿病になってしまう。こうして、糖分を大量に摂るとインシュリン( insulin )もまた大量に分泌されるので糖分濃度が減ってしまう。そうすると、場合によっては満腹中枢がブドウ糖の濃度の上昇を察知することが出来ずに、結局満腹感が得られないということも有り得るわけだ。
でも、一般的には糖分を摂取すると血糖値が上昇し満腹中枢が働いて満腹感が得られると言えそう。
ところが、これが甘いコーヒーだと面白いことになるという。東大病院と朝日生命糖尿病研究所の調査では、コーヒーを良く飲む人ほど血糖値が上がりにくいという結果が出ている。このコーヒーのメカニズムは詳しくは突き止められてはいないものの、コーヒーの中に含まれるカフェインは脾臓を刺激してインシュリンの分泌を高めると考えられている。そればかりではなく、コーヒーの成分の約7%を占めるというクロロゲン酸は抗酸化物質( scavenger )として糖分の代謝に関わっているという。
ちょっと、難しくなったけれども、ようはコーヒーを飲むと血糖値を上がりにくくなるということ。
ということは、甘いコーヒーを飲んでも満腹感を得ることは出来ないということになるのではないのだろうか。
どうなのだろう。

日曜日, 12月 19, 2004

獅子身中の虫に挑んだ皇族 

徳川幕府最後の将軍、徳川慶喜(1837-1913;公爵)の孫に当たる高松宮妃喜久子様が昨日薨去された。
この日楽しみにしていたテレビ番組が紀宮さまと東京都職員の黒田慶樹さんの婚約内定の正式発表で変更になっていることを知らずにスイッチを入れるとドラマが放映されている。この時間帯はドラマではないはずと番組表を確認。すると、婚約記者会見の文字。それでも変だと、他のチャンネルを回して高松宮妃喜久子様の薨去を知った次第。
聞くところによるとご本人も今日の記者会見を楽しみにしていたというのだから、あまりにも急と言わざるを得ない。
皇族の方々は5日間の喪に服するという。
喜久子様は母親と高松宮宣仁親王殿下(1905-1987;大正天皇の第3皇男子)を癌(がん)で亡くされた経験から高松宮妃癌研究基金の名誉総裁として癌(がん)撲滅の運動に力を注がれてきた。
癌は、発がん物質やウイルス、細胞が増殖する時の遺伝子のコピーに失敗することなどの遺伝子の異常によって引き起こされる病気。
こうした遺伝子の異常(がん遺伝子[oncogene])が幾つか積み重ねられると、正常細胞が悪性腫瘍細胞へ分化する、つまり癌(がん)が発生する。
腫瘍細胞というのは、宿主(=人間)の制御を離れてしまって自律的増殖をする細胞で、そのうちでも癌(がん)は増殖のスピードが非常に速く宿主(=人間)を死に至らしめる。
人は正常であっても癌遺伝子を100種類以上も抱えていると言われる。これはいわば時限爆弾を体の中に抱えているということになる。しかし、それだけで、即、癌(がん)になってしまうというわけではない。発がん物質の影響やウイルスの侵入、細胞が増殖する時の遺伝子のコピーに失敗するなどのハプニングが起きた時に癌(がん)が顔を出すのだ。
このがん遺伝子には、原遺伝子(proto-ongogene)とがん抑制遺伝子(tumor suppressor gene)の2種類が知られている。原遺伝子(proto-ongogene)は機能が過剰に刺激されると癌(がん)を引き起こすもの。一方で、がん抑制遺伝子(tumor suppressor gene)は通常は癌(がん)の発生を抑えているのだけれども過剰に刺激されることで抑制機能が失われてしまうものをいう。
また、癌(がん)は発生した組織によって癌腫と肉腫の癌(がん)に区別される。
皮膚、粘膜、腺上皮などの上皮性組織から発生したものを癌腫。骨、筋肉、結合組織、血管、リンパ組織などの非上皮性組織から発生したものは肉腫と呼ばれる。
仏教の聖典で、三論宗(日本では元興寺[飛鳥寺]や大安寺を拠点として説かれた)・成実宗の基礎を築いた鳩摩羅什(クマーラジーバ[344-413])訳とも、孝行思想などの中国的な内容があることから、中国六朝時代に東晋の後に劉裕(高祖武帝)が建国した劉宋(420-479)時代に成立した中国オリジナルの法典とも言われる梵網経(梵網経盧舎那仏説菩薩心地戒品第十)に獅子身中の虫という話がある。
獅子の体内で獅子の力によって養われている虫が自分の養い主である獅子を滅ぼすというものだが、癌(がん)は将にその通り。しかも、その虫が全く別の生き物ではなくて自分の一部であるという意味で非常に厄介な獅子身中の虫ということになる。

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