火曜日, 4月 19, 2005

奇妙な名前の奇妙な振る舞い 

 物質をどんどん小さく細かく分けていくと原子になる。みかんでもリンゴでも、ガラスカップでもいい。
割って砕いて、磨り潰してと粉々の粒々にすると原子に辿り着く。
原子は目では見ることが出来ない。
目には見ることの出来ない。
その目で見ることの出来ない原子は更に細かくバラバラにすることが出来る。
原子は原子核と電子で出来ていて、原子核は更に陽子と中性子で出来ている。驚くべきことに、これで終わりにはならない。
原子核を構成している陽子と中性子はクォークというものが3つくっついて出来ている。このクォークは、グルーオンと呼ぶ粒子によって媒介される「強い力」と呼ばれる力でくっ付き合って陽子や中性子となっている。
「強い力」は、原子核の中でしか働かない力であるものの、重力などよりもずっと強力な力であるために、くっ付いているクォークを1つだけ引き離すということは非常に困難。
つまり、クォークを1個だけ見るということはちょっとやそっとでは出来ないということになる。
そんな厄介な存在のクォークは、1964年にマレー・ゲルマン(Murray Gell-Mann)とジョージ・ツバイク(George Zweig)が最初に存在を提唱している。クォークという名前の由来が洒落ている。
ジェームズ・ジョイス(James Joyce)の詩の一節(Finnegans Wake[1939] p. 383)の
Three quarks for Muster Mark!
から名付けたというのだ。ジョイスの造語で「つまらないもの」「ばかげたもの」というようなニュアンス。
くっ付いていないと存在出来ないという意味で「つまらないもの」「ばかげたもの」なのか、目に見えないほど小さいので「つまらないもの」「ばかげたもの」だというのか。いづれにしてもジョーク。
ともあれ、クォークにはアップ( u )、ダウン( d )、チャーム( c ) 、ストレンジ( s )、トップ( t )、それにボトム( b )の6 種類があります。
アップ( u )、チャーム( c) 、トップ( t )は+2/3 の電荷をもち、
ダウン( d )、ストレンジ( s )、ボトム( b )の3 つは?1/3 の電荷を持っている。
現在ではクォークは「強い力」でぴったりとくっ付いているが、宇宙の始まりの頃では宇宙が非常に高温だったために、個々バラバラに存在していたと考えられている。
そのバラバラの状態は、本当に自由気ままに、あっちへ飛んだり、こっちへ寄ったりという状態だと想像されていた。
それが、日米チームが2000年から米ブルックヘブン国立研究所で行った実験結果によると、どうやら、一定の方向に流れるような液体状態で存在していたらしいという(18日発表)。
ビッグバンの数10万分の1秒後の温度である1兆度!という超高温での実験結果とのこと。物凄い温度であるが、この実験結果も理論的には予想外なのだとか。
クォークの語源となったジェームズ・ジョイスのフィネガンズ・ウェイクも文学史上で奇妙な本だが、物質のクォークもジョイスの心を知ってか知らずか、負けず劣らず、科学者の予想を覆す奇妙さを持ち合わせているようだ。


<<一言主>>
クォークを更にバラバラにすると「ひも」になる。もう、こうなるとSFの世界!
○「ひも理論」では素粒子の種類は「ひも」の振動の種類とされる。

○「ひも」はあまりにも小さいために実験で確かめることが困難だという欠点がある。
○実証出来ない理論は物理学ではなく哲学。

○「ひも理論」は万物の源は「ひも」であるとする。

○1968年、イタリアの物理学者ガブリエーレ・ヴェネツィアーノは弱い力を説明するためにオイラーの関数を用いた。これが「ひも理論」の始まり。

○米国の物理学者レナード・サスキンドもオイラー関数が弱い力を説明していることに気付いた。

○レナード・サスキンドはオイラー関数の実体が「ひも」であることを発見。論文を書くが却下。サスキンドは酒に走り、「ひも理論」はお蔵入りとなった。

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