日曜日, 2月 12, 2006

科学への一歩 

W.Wundt(1832-1920)は、心理学の対象とは直接に体験できる意識の内容だと考えた。
そして、心理学というのは、書斎の中で椅子に座って考えるような哲学的なもの、つまり形而上学のようなものではなくて、「経験科学」であると考えた。
科学者が自分自身の心の奥底を観察して分析するというのが、それまでの心理分析。
これでは、その結果が本当に科学者の報告通りなのかは検証のしようがない。
そこで、本人しか体験できないような心の内部を心理学の対象としつつも、実験的な方法での検証を行うことを主張したことになる。
この方法は内観法(selbsbeobachtung / self-observation)と呼ばれたり、「生理学的心理学」と呼ばれたりした。

胚性幹細胞(ES細胞)の論文捏造が発覚したソウル大の黄禹錫(ファンウソク)教授チームの事件では「他の国がその研究結果の再現性を確認することが不可能」とされたし、
日本でも、画期的な新薬開発への期待がかかっていた、リボ核酸(RNA)が遺伝子の働きを妨げる「RNA干渉」の国内での第一人者の東京大大学院工学系研究科の多比良和誠教授の論文が「再現性に疑問がある」とされた疑惑事件もあった。
この誰でも同じ結果を得ること出来るというのは科学にとって非常に重要。
心理学の分野で、特定の人でなければ実験の結果を得ることが出来ないという状態から科学への道を一歩踏み出したのがW.Wundt(1832-1920)だったと言える。



アリストテレス 『形而上学』上下
1979 岩波文庫
ΑРΙΣТОТЕΛОΥΣ : ТΑ ΜΕТΑ ТΑ ФΥΣΙΚΑ 紀元前
出 隆 訳

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