金曜日, 11月 19, 2004

[美と歴史]エジプトの不変性 

エジプト美術の最大の特徴は、エジプト3000年の歴史の中で、アマルナ期の約10年間を除いて表象様式にほとんど変化が見られなかったことだと言える。
これは、エジプト人が拠り所とした世界観、この場合は宗教観あるいは死生観と言っても良いのかもしれない、それが3000年の長きにわたって大きな変化をしなかったということの反映でもある。そして、こうした不変性は、ヨーロッパ世界の藝術様式がギリシア美術、ローマ美術、初期中世美術、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、マニエリスム、ロココ、新古典主義、浪漫主義、印象派、象徴主義、表現主義、フォーヴィズム、シュールレアリスムなどと目まぐるしい変遷を遂げてきたのとは対照的。
しかも、エジプト3000年の中では、B.C.3000年頃のナルメル王によるエジプト統一によって誕生した第1王朝からB.C.30年のクレオパトラの自殺によるプトレマイオス朝に至るまで、初期王国時代、古王国時代、第1中間期、中王国時代、第2中間期、新王国時代、第3中間期、末期王朝時代の8区分30王朝が立っていた。そうした政治的変遷の中で、プラトンが『法律』の中で語ったように、エジプトの藝術家達は先祖伝来の伝統に背くものを作り出すことは許されず、それ故に当時のエジプト藝術の中に明確に古来のエジプト藝術を見出すことが出来るという状況が続いたことは驚くべきことと言わなければならない。
もちろん、これは変化を好む現代の視点からの判断でという限定付き。


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