火曜日, 2月 17, 2004

自然資本 

「社会経済における生産物というのは資本と労働、そして土地から産み出されると整理されているね。
整理の話だから物的資本と労働と土地だけに無理に分ける必要はなくて、他に考慮しなければならないような重要な要素があれば加えて考えれば良いということになる。
例えば、地域開発という視点、良くグローカルなんて言われるけど、そういう考え方だね、その視点で重要なものを考えると5つあるって言われることが多い」
「資本といっているけど設備のことが念頭にあるんでしょ。だから設備資本あるいは物的資本よね。労働力も資本なわけだから人的資本。それに、資本と言った時に普通は思い浮かべる金融資本。そして、土地資本」
「土地資本というのは、土地だけでなくても良いよね。
水資源でも良いし、鉱物でも良いわけで、自然資本として括って考えられるんじゃない?」
「それから社会のインフラ、これは社会資本ね。
これで5つの資本。順番違うけど、語呂の良いところで、自然資本、社会資本、人的資本、物的資本、金融資本」
「このうち、企業ベースでは社会資本や自然資本というのは軽視されがち。
直接的に利益に結びつかないから仕方がないとは言えるのだけど」
「社会資本や自然資本というのが企業の利益に直接結びつくとは考えられないとは言えないわよ。
特に、社会資本に関しては社会資本を収益の源としている企業というのは少なくはないでしょ。道路関係しかり、空港関係しかり。それ以外でも総合電機の中にも社会インフラを提供していますということを売り文句にしているというところがあるわ」
「それはそうだけど、全ての企業が社会インフラを重視しているわけではないよね。
自然資本に関してはなおさら。それでも、社会経済活動は地球全体で一つのエコシステムになっているわけだから、企業が自然資本や社会資本を軽視した行動ばかりに走ると後からブーメランのようにその竹箆返しが来るという可能性が高い」
「一般論としてはそうでしょうね。
軽視していると言ったけど、日本の製造業は公害へ対応はおそらく世界でも高いレベルにあると言えるし、自動車産業などでは電気自動車の開発などで自然に優しい方向へと舵を切っている。こうした取り組みは企業における自然資本の重視と言えるわ。
だから、全ての企業が自然資本を軽視しているわけではないし、むしろ重視する方向にあるというのが現在の流れではないかしら?」
「何だか、言いたかったことを全部先に言われたって感じ。
そうした流れを指摘した上で、ポール ホーケンなどは視点そのものの転換を唱えているね。
曰く『人間にとってよいことは、世界にとっても当然よいことだ』は間違えで反対なんだと。そして、産業資本主義からの脱却して自然資本主義を標榜すべきだと。
こういうと理想論的な響きなんだけど、著者達はそうした動きが既に進んでいますよということを、君が挙げたような例でもって示しているね」
「確かにかつては理想論でしかなかったとは言えるわね。でも、気付いてみたら現実が理想論のほうに近づいていたっていうところかしらね。
そして、そうした動きこそが、かつてローマクラブが警鐘を鳴らした『成長の限界』を突破する鍵になるんだってところが、」
「なかなか人類もやるじゃないと」
「そういうこと」


cover

自然資本の経済―「成長の限界」を突破する新産業革命
ポール ホーケン (著), L.ハンター ロビンス (著), エイモリ・B. ロビンス (著), Paul Hawken (原著), L.Hunter Lovins (原著), Amory B. Lovins (原著), 佐和 隆光 (翻訳), 小幡 すぎ子 (翻訳)

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