木曜日, 1月 01, 2004

平安王朝 保立 道久 

平安時代というのは、桓武帝が平安京に遷都した延暦13(794)年つまり8世紀末から平家一門が長門国は壇ノ浦で水の泡となった元暦2(1185)年すなわち12世紀末までのなんと400年間。長い期間であるにもかかわらず、一般の人にとっては比較的馴染みのない時代だとも言える。
この間に在位した天皇は桓武帝から安徳帝まで23人に及ぶ。
その流れを「王の年代記」として記述することを目指した意欲作。
本書にある通り、この時代は世界史的に見ると非常に重要なターニングポイントであった。まず、9世紀にはヨーロッパはフランク王国のカール大帝(シャルル=マーニュ)がゲルマン民族の統一を成し遂げている。12世紀は十字軍で知られるイギリスのリチャード獅子心王の時代。日本が最も影響を受けた中国においては8世紀は唐の玄宗皇帝の時代からチンギス=ハーンの時代に相当する。
大きく時代が動いていたのである。
日本でもスケールは異なり、内容も異なると言わざるを得ないものの、ある意味で時代が動いていたということが本書で分かる。
国の中枢にある人々が男色にはしっていたり、男女関係が大きく影響していたという行(くだり)には改めて驚かされる。
また、清和源氏と伊勢平氏との微妙な関係が清和源氏の嫡流が一貫して冷泉、三条帝そして小一条院という天皇家のいわば傍流に忠誠を誓っていたことに求められるという視点も新鮮に感じた。いままで、武門源氏の嫡流というと摂関家に仕えて台頭したというイメージが強かった。しかし、武門源氏自体も摂関家と同じく王統に複雑に連なる一族に違いはない。その武門源氏の嫡流が摂関家とは別のアプローチで王統への接近を図り、しかも王統の傍流に忠実であったという事実は認識を改めるに十分な指摘と言える。

cover



This page is powered by Blogger. Isn't yours?