水曜日, 10月 13, 2004

短期的には調整必至か

日立総研から『Global & IT 短期経済予測』が発表されています。
これによると、日本に関して、
「設備投資は、企業収益の増加が続いていることや、設備投資に先行する機械受注額(船舶・電力除く民需)が2004年4~6月期に同11.9%と大幅に増加していることから、年度内は好調と考えられるが、投資の一巡もあり伸び率は緩やかに鈍化する。」としています。
民間設備投資に関しては、農林中金の田口さつき氏の『収益性改善の真価が試される製造業』で企業の交易条件(=販売価格÷原材料・中間財価格)の低下が続いていること、交易条件(=販売価格÷原材料・中間財価格)の低下は営業利益に1年3ヶ月先行して動くという経験則に基づく「収益性の悪化は今後徐々に鮮明化するだろう」という指摘が気になります。
UFJ総研のかつてのレポートには、IT投資全体の動きを示す全産業供給指数・民間企業設備(情報関連)が経常利益(全産業)と連動して動くということが示されています。この経常利益(全産業)の先行指標が交易条件。その悪化は農林中金の田口さつき氏の指摘の通り。
念のために、全産業供給指数・民間企業設備(情報関連)を見てみると「鉱工業生産、第3次産業ともに緩やかな上昇傾向にあることなどから、全産業も基調としては緩やかな上昇傾向にあると考えられる」一方で、2003年10 - 12月の97.1をピークとして2004年1-3月は95.6、4-6月は94.8と漸減傾向。
このような点からすると、2005年初危機説に飛びつきたくなるところですが、「負債圧縮などの企業の経営改善努力により、企業の経営体質が強化されていることもあり、景気は失速には至らない見込み(日立総研)」であって、短期的には大きな落込みはないと考えるのが現在のところは妥当なところ。
但し、大和證券SMBCの白石氏による『ソフト・パッチでは収まらない公算増幅中』で指摘されている通り、「OECD景気先行指数6か月前比年率が早期に発していた景気減速サインが内閣府先行CI動向に明確に反映」され初めているという点。つまり、日本の景気は数ヶ月内に減速しますよという徴候も軽視することは出来ません。
この徴候は春先以来出ていたのですが、在庫が増加すると考えられていたのに、出荷の伸びによって在庫率が低下するという「在庫循環若返り現象」によって徴候は現実にはなりませんでした。
しかし、こうしたことは例外であって、再度の「在庫循環若返り現象」を見込むというのは現実的とは言い難いというのはもっともな指摘。
このレポートで素直に耳を傾けるべきは、8月の北米BBレシオ低下を材料として、2001年対比で早期在庫調整であるという一点でシリコンサイクルが無くなったとは断定できないという指摘でしょう。
なお、IT投資を含めて短期的には調整局面入りの可能性が高いと言えますが、1-2年という期間で見た場合には増加圧力が働いていることは設備投資循環で分かります。


※情報化関連投資には、「民間企業設備への供給がある通信用電線・ケーブル、通信用ケーブル光ファイバ製品、デジタル・フルカラー複写機、ボタン電話装置、ファクシミリ、電子交換機、デジタル伝送装置、固定通信装置、携帯電話、PHS、基地局通信装置、はん用コンピュータ、ミッドレンジコンピュータ、パーソナルコンピュータ、外部記憶装置、入出力装置、端末装置、固定電気通信業、移動電気通信業、受注ソフトウェア、ソフトウェアプロダクト」が含まれます。