水曜日, 11月 10, 2004

企業IT投資がなかなか復調しない.....

「企業IT投資がなかなか復調しない」と言われていますが、これは統計でもはっきりと出ています。

以下は米国商務省のNIPA統計の伸び率。
これをみると、2000年を境として二桁の伸びと一桁の伸びに分かれています。
2000年第3四半期以前では、ソフトウェア投資とIT投資の伸びの平均は18.6%と20.6%以後では2.5%と5.6%。
一方、労働生産性の伸びは2000年第3四半期以前が2.1%、以後が3.4%。
IT投資の伸びが屈折した後のほうが労働生産性が上昇しています。

更に、売上をあげるために必要な設備という視点でみると、1998年から最新のデータがとれる2001年まで一貫して前年比マイナス。
4年間連続して必要設備が前年比で減少したのは1979年から1982年以来(レーガノミクス前夜)。

労働生産性の伸びは、労働者1人あたりの資本(設備)ストックの量(これを資本の深化と呼びます)と全要素生産性(TFP=資本と労働の貢献分以外)の伸びに分解することが出来ます。
そして、90年代の労働生産性の伸びの過半は労働者一人当たりのIT設備の増加によって説明が出来ます。

このIT設備と労働生産性の関係が、2000年以降では、[1]より少ないIT設備によって労働生産性が継続的に上昇するようになった(=ITの使われ方の変化)ことと[2]IT自体の効率化(=モジュール化)によって変わってきているのではないかと推測出来ます。

こうしたことを考えると、ハードの更新需要を除くと企業のIT投資は「なかなか復調しない」のではなく、「実質的に復調した(している)としても金額には直結しない」ということになりそうです。
これは、マイナスの側面も確かにありますが、新しいマーケットが出てきている証しでもあることからすると大きなプラスの側面があると思います。


software IT投資 労働生産性
1995-I 5.9 19.9 -1.8
1995-II 12.6 21.5 -0.6
1995-III 15.3 9 2
1995-IV 16.7 25.4 2.4
1996-I 17.1 22.9 1.4
1996-II 17.8 18.6 5.1
1996-III 18.2 20.5 1.5
1996-IV 24.9 14.4 2.6
1997-I 49.1 27.7 -0.1
1997-II 23.1 24.8 5.1
1997-III 27.9 34.3 4.8
1997-IV 27.2 16.4 0.3
1998-I 11.8 27.7 3.3
1998-II 14.4 17.6 -0.2
1998-III 17.7 12.3 3.2
1998-IV 20.7 24.3 5.9
1999-I 22 23.1 2.7
1999-II 29.3 31.7 1.1
1999-III 21.6 18.4 3.1
1999-IV 12.9 3 5.9
2000-I 10.4 28.7 -2.1
2000-II 10.6 22.2 6
2000-III 1.1 7.1 -1.6
2000-IV 11.8 12.7 2.1
2001-I 0.4 -2 -1.8
2001-II -15.3 -18.5 3.3
2001-III -4.1 -11.7 -0.4
2001-IV -10.7 -4.9 6.4
2002-I -8.4 -6.7 6.6
2002-II -2.2 1.3 2.4
2002-III 7.6 10.5 4.4
2002-IV -9.7 -3.8 0.9
2003-I 8.1 17.1 3.1
2003-II 4.7 14.4 6.4
2003-III 20 29.2 8.7
2003-IV 9.3 16.3 3.2
2004-I 16.8 16.4 4.8
2004-II 8.7 14.1 1.1
2004-III 4.1 4.4 2.5