
スカニア[Scania AB,スウェーデン]は, スウェーデンに本拠を置く世界的な商用車メーカー.大型トラックやバス, 産業用・船舶用エンジンの分野で世界トップクラスのシェアを誇り, 現在はフォルクスワーゲン・グループ傘下のトレイトン[TRATON SE, 旧Volkswagen Truck & Bus GmbH]の完全子会社となっている.

スカニアの源流は2つの独立した工業企業に遡る.ひとつは1891年にスウェーデン南部のゾーデルテリエ[Södertälje]で創業されたヴァービス[Vagnfabriks-Aktiebolaget i Södertelge/Vabis]で, 鉄道車両製造を起源とし, その後自動車・トラック生産に参入した.もうひとつは1900年にマルメ[Malmö]で創業されたマスキンファブリクス・アクチエボラゲット・スカニア[Maskinfabriks-aktiebolaget Scania]であり, 自転車製造を出発点としつつ, 1902–03年頃からトラック・乗用車の生産を開始した.いずれも20世紀初頭の自動車生産は年間数十台規模にとどまり, 技術の確立が事業の本質であった.
1911年の合併によりスカニア・ヴァービス[Scania-Vabis AB]が成立した.合併の背景には, ヴァービスの経営悪化とScaniaの生産拠点拡大ニーズがあり, スカニア社長パー・アルフレッド・ノルデマン[Per Alfred Nordeman]の主導によって実現した.合併後は本社をゾーデルテリエに移転し, エンジン・軽車両の開発・生産をゾーデルテリエ, トラックをマルメで担う体制が整えられた.生産台数は依然として数百台規模に満たず, 欧州の中でも小規模メーカーの一つに過ぎなかった.
第一次世界大戦期にスウェーデン軍への納入を通じて資本と信頼を蓄積した同社は, 1929年に乗用車生産から撤退し, トラック・バスへの特化を決断した.この戦略転換が以後の発展の礎となる.1931年の販売台数は179台にとどまっていたが, バス需要の取り込みや技術革新を通じて生産は拡大し, 1959年には年間約4,881台に達した.戦後の欧州復興需要を取り込む形で売上も安定的に成長したが, 同社はフォードのような大量生産モデルとは異なり, 台数よりも耐久性と稼働率を重視する戦略を一貫して維持した.
1957年にブラジル子会社を設立し, 1962年にブラジル・サン・ベルナルド・ド・カンポに初の海外生産拠点を開設.1964年にはオランダ・ズウォレ[Zwolle]に欧州向け工場を竣工し, 本格的なグローバル展開が始まった.また1960年代にはモジュール化設計を導入し, 少量多品種でも効率的な生産を可能とする体制を確立した.1969年には航空機・自動車メーカーのサーブ[Saab AB]と合併し, サーブ・スカニア[Saab-Scania AB]グループの一部となったが, トラック・バス部門の独自性は維持された.この統合期間中の1970年代には年間1万台を超える水準に到達し, 1980年代には2万台規模に近づき, 欧州の中堅商用車メーカーとしての地位を確立した.

1989年に米国ゼネラルモーターズ[General Motors]がサーブ・スカニアに参画したことを契機に経営方針が変化し, 1995年にサーブとスカニアは分離・独立した.これによりスカニアは再び独立した商用車専業メーカーとなり, スカニア[Scania AB]として株式市場に上場された.
グローバル市場での販売拡大により年間販売台数は3万台から5万台規模へと拡大し, 2010年代には8万台前後に達した.株主構成についても変化が続き, フォルクスワーゲン[Volkswagen AG]は2000年にScaniaへの出資を開始[議決権ベース34%取得], 2008年には過半数を超える議決権を取得してVWグループのブランドとして統合した.さらに2014年2月に全株公開買付を実施し, 同年中に議決権の99.57%を取得, 2015年1月に100%子会社化が完了し, ストックホルム証券取引所から上場廃止となった.現在はトラトン[TRATON SE]を通じてフォルクスワーゲン・グループ[Volkswagen Group]傘下に置かれている.完全子会社化以降は, 調達・開発の効率化が進み, 規模の経済を活用しつつも, 高価格帯製品中心の戦略が維持されている.
近年の年間納車台数は, 2023年が約96,727台, 2024年が初めて10万台を超える102,069台, 2025年が94,073台で推移している.売上高については, 2023年が約2,041億スウェーデンクローナ[SEK,約2兆8,574億円], 2024年が約2,161億SEK[約3兆254億円], 2025年が約1,985億SEK[約2兆7,790億円]に達している.特筆すべきは, 売上に占めるサービス収益の比率が継続的に上昇している点であり, 車両販売後のメンテナンス, 部品供給, デジタルサービスが収益の重要な柱となっている.この結果, 単純な販売台数以上に, 1台あたりの生涯収益が重視される構造へと変化している.