

重信会館
重信会館[じゅうしん-かいかん]は, 昭和初期の鉄筋コンクリート造建築であり, 昭和5[1930]年に竣工した東本願寺関連の研修・寄宿舎建築である.設計は竹内建築事務所の竹内緑によるもので, 施工は竹中工務店が担当した.構造は鉄筋コンクリート造, 地上4階・地下1階建ての堅牢な構成をとる.
当初は「田代会館」と呼ばれ, 本山の会計常務委員等を務めた篤信門徒の田代重右衛門氏によって1930年に喜寿の記念として真宗教学を深く研究する学舎にとの願いから竣工された.設立当初は真宗大谷派宗学興隆財団の事務所として登録され, 1932年7月には財団法人真宗大谷育英財団に寄進され, 主に大谷大学の学生寮[重信寮]として運営されてきた.2001年に閉館.
外観はアールデコ様式を基調とし, 中央に入口, 両脇に丸窓のある左右対称のつくりを基本としながら, 右にある横長の線は正面から側面に回り込むなどスピード感を強調するデザインとなっている.一見左右対称だが, 実は玄関の左右にある丸窓の枠の意匠が異なっていたり, 2階と3階の窓の下の横の線も右と左で違うなど, 変化をつけている点がアールデコの特徴を表している.蔦の絡まる外観も印象的で, 印象的な窓飾りや階段の意匠, 西洋と東洋が融合したエキゾチックな内部も見所である.
内部構成は寄宿舎としての機能を重視した合理的な平面計画がなされていたと考えられる.鉄筋コンクリート造による耐火性と衛生性を備えつつ, 当時のモダンデザインの潮流を反映した設計となっている.
設計者の竹内緑[1873-1945年]は, 明治6年に東京に生まれ, 灯台建設工事に従事した後, 攻玉社土木科を卒業.大阪市役所で天王寺植物園温室の設計を担当し, 1922年に竹内建築事務所を開設した.三十四銀行難波支店[1928年], 肥塚ビルディング[1929年], 大谷仏教会館[1933年]など, 多数の近代建築を手がけた建築家である.
竣工当時の重信会館は, 東本願寺と渉成園の間に位置し, 通りに面して前を通る誰もが目を惹かれる存在であった.その後も用途の変遷を経ながら建物は維持され, 現在はイベント会場や展示施設として活用されている.東本願寺[真宗大谷派]の所有建築として, 昭和初期における寄宿舎建築の空間構成と意匠のあり方を今日に伝える貴重な建築遺構となっている.京都駅から徒歩10分, 京阪線七条駅から徒歩11分という立地にあり, 京都モダン建築祭などでも特別公開される, 京都の近代建築史を語る上で重要な建築である.
京・廿人講町@2023-01

今日も街角をぶらりと散策.
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