

旧村西家住宅主屋
旧村西家住宅主屋は, 1932[昭和7]年に竣工した木造二階建て住宅である.外観は通り沿いに高い塀を配した「大塀造仕舞多屋式」の形式を採用し, 通りからの視線を遮るとともに, 敷地内の中庭や前栽, 奥座敷への動線を隠蔽することで, 格式ある町家の構えを強調している.内部には洋間と茶室を並置し, さらに二階には洋風書斎を設けるなど, 近代住宅の生活文化を巧みに取り入れた平面構成と意匠を備えている.住居の正面には玄関庭が設けられ, 奥には座敷や数寄屋風茶室を備えることで, 来客や取引先を迎える茶屋的住宅としての要件も果たしていた.
構造は木造を基本とし, 屋根は瓦葺および一部銅板葺で, 建築面積は135㎡である.敷地内には門及び塀が付属し, 建物とあわせて昭和前期の京町家の屋敷構えを良好に伝えている.旧村西家住宅主屋は, 京町家が伝統的構法を維持しつつ洋風生活文化を取り込んでいった過程を具体的に示す好例であり, 都市部京都における近代住宅の意匠・機能・町並み形成を考察する上で, 建築史的に極めて貴重な建築である.また, 平面構成や茶室の設置などは, 当時の町家住宅における伝統と近代性の折衷の実例としても評価されている.
京・蛸薬師通高倉西入ル泉正寺町@2024-01

今日も街角をぶらりと散策.
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