

聖アグネス教会聖堂
聖アグネス教会聖堂は, 京都市上京区桜鶴圓町404, 烏丸通下立売通入ルに位置するカトリック教会であり, 京都における近代キリスト教建築の代表的存在である.正式名称は「カトリック聖アグネス教会」で, 1898[明治31]年に献堂された.京都における近代キリスト教建築の黎明期を象徴する建造物の一つであり, 宗教的, 建築的, 都市史的価値を兼ね備えている.
設計はジェームズ・マクドナルド・ガーディナー[James Macdonald Gardiner, 1857-1925]による.ガーディナーはイギリス出身の建築家で, 1888[明治21]年に来日し, 横浜を拠点として活動した.彼は日本聖公会の複数の教会建築を手がけ, 横浜の聖アンデレ教会[1899年], 神戸の聖ミカエル教会などの設計にも携わった.聖アグネス教会は, SPG[Society for the Propagation of the Gospel]の宣教師たちの支援を受け設立され, 京都における英国国教会系キリスト教活動の拠点として, また平安女学院など教育施設との関係でも重要な役割を果たしてきた.
建物はゴシック・リヴァイヴァル様式を基調とするが, 日本の気候・風土と建築技術に適応した折衷的特徴を持つ.窓部には尖頭アーチを採用し, 垂直方向の線を強調することでゴシック的荘厳さを演出する.室内には色彩豊かなステンドグラスを配し, 光による神秘的な空間演出を実現している.外壁は煉瓦造で構成され, 明治期に導入された近代建築技術を示す.屋根構造には日本伝統の木造トラス技術を応用し, 耐震性と施工性を両立させている点が特筆される.
内部は身廊[ナーヴ]を中心とした縦長の平面を持ち, 簡素化されたバシリカ型プランに近い構成である.祭壇部[チャンスル]は東側に配置され, キリスト教建築の伝統的な東西軸を踏襲する.天井は木造の化粧屋根裏とし, 構造材を意匠的に見せることで, 西洋のハンマービーム構造の要素と日本の木造技術が融合した設計となっている.
京都という歴史都市における立地も重要である.烏丸通沿いという都心部に位置しつつ, 周囲の伝統的町家や寺社建築との調和を意識した設計がなされている.尖塔の高さは抑えられ, 赤煉瓦の外壁は京都の土壁や瓦の色調と調和するよう選定されている.正面は烏丸通に面して配置され, 都市軸との関係を明確化することで, 京都の景観に違和感なく溶け込むことに成功している.
京・烏丸通下立売通角堀松町@2024-01

今日も街角をぶらりと散策.
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