大内宿
町並みは, 主要街道に沿って軒を連ねる家屋が規則正しく並ぶ直線的な構造を持ち, 両側に建つ民家の多くは茅葺き屋根である.これらの民家は, 宿場機能と農業を兼ね備えた「半農半宿」としての機能を持ち, 1階部分は商店や土産物屋として利用されることが多いが, 2階は住居や倉庫として使われてきた.茅葺き屋根は厚さが非常にあり, 雪深い会津地方の厳しい冬を耐えるための知恵である.また, 屋根の勾配や家屋の配置は, 積雪時の雪下ろしや風雨への耐久性を考慮した伝統的な建築技法の結晶である.
大内宿では, 伝統的な生活文化も体感できる.町中では, 茅葺き屋根の家屋に軒を連ねる「ねぎそば」の店が名物となっており, 長ネギを箸代わりに用いる独特の食文化は観光客にも人気が高い.また, 地元の民芸品や農産物も販売され, 宿場町としての機能を現代に継承している.祭事や季節行事も盛んで, 冬には雪景色を活かしたライトアップや雪まつりが開催され, 雪化粧した茅葺き屋根の家並みが幻想的な風景を作り出している.夏には宿場まつりなどの伝統行事が行われ, 地域住民の文化的結びつきを示している.
歴史的価値の観点からも, 大内宿は重要である.江戸時代の宿場町としての街路配置, 建築様式, 生活文化の痕跡がほぼ完全に残存しており, 1981[昭和56]年4月18日に国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されている.保存地区の範囲は, 宿場を中心とした南北約500メートル, 東西約200メートルにわたり, 現在も30軒以上の茅葺き屋根の民家が街道沿いに建ち並んでいる.
大内宿が今日まで良好な状態で保存されてきた背景には, 明治期の鉄道開通により宿場としての機能を失った一方で, 鉄道や国道が大きく迂回したことにより開発の波から取り残され, 結果として昔ながらの景観が維持されたという歴史的経緯がある.現在ではおおむね年間数十万人の観光客が訪れる福島県を代表する観光地となっており, 日本の原風景を求める国内外の観光客に愛され続けている.
会津@2005-07
今日も街角をぶらりと散策.
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