行道山寝釈迦
行道山は標高440メートルで, 関東の高野山ともいわれ, 日光山, 筑波山, 清澄山[千葉県]と共に, 関東の四道場の一つとして, 古くから知られている霊山である.この山全体が3万3,000の石仏に囲まれた霊山として有名で, 寝釈迦仏もこの石仏群の中でも特に重要な存在として位置づけられている.
寝釈迦仏への道のりは, 浄因寺の本堂からさらに登って行った場所にあり, 可愛らしく寝ている姿の釈迦涅槃像に出会うことができる.この釈迦涅槃像の周囲には, 参道から山頂まで続く道に3万3,000と言われる石仏が数えきれないほど方々に並んでおり, 寝釈迦の周りにも沢山の石仏があり, まさに石仏に囲まれた神聖な空間を形成している.
興味深いのは, この寝釈迦にまつわる地元の言い伝えである.地元の言い伝えによると, 昔, 寝てばかりいらっしゃるお釈迦様を気遣って, 石仏を立てた人がいたという.また, ある近所の子どもたちが遊びで, お釈迦様を立てたこともあったという.その結果は, いずれも悲惨な災いを被ってしまったという話が残されており, この仏像が古くから地域の人々に畏敬の念をもって守られてきたことがうかがえる.
寝釈迦仏の立地からは絶景を望むことができ, 信仰的な価値に加えて景観的な価値も高い.行道山全体が昭和50年[1975年]に県の名勝第1号に指定されたことからも, この地域の文化的・景観的重要性が認められている.
この寝釈迦仏は, あまりにも多い石仏のため, 初めて来た人は寝釈迦を探すのに, 戸惑ってしまいそうなほど多数の石仏に囲まれた環境にある.参拝者にとっては石仏を探索する楽しみも提供している.
行道山の寝釈迦仏は, 単なる石造仏ではなく, 行基上人の開基伝承, 三万三千体という膨大な石仏群, 地域の言い伝え, そして関東の四道場としての歴史的位置づけなど, 多層的な文化的価値を持つ貴重な文化遺産なのである.山深い静寂の中で, 千年以上にわたって安らかに横たわるこの寝釈迦仏は, 訪れる人々に深い精神的な安らぎと感動を与え続けている.
足利@2004-09
今日も街角をぶらりと散策.
index