ぶらぶら絵葉書

岡山城西丸西手櫓

岡山城西丸西手櫓は,西丸の西端に位置する江戸時代初期の城郭建造物である.慶長8[1603]年頃の建築と伝えられ,岡山城に現存する数少ない江戸時代の建造物の一つであり,国の重要文化財に指定されている.

西手櫓の築造は,池田氏による城郭整備の一環として行われたと考えられる.慶長8年,備前28万石は池田輝政の次男・忠継に与えられたが,忠継は幼少であったため,兄・利隆が「備前監国」として政務を代行した.利隆は岡山城西端の西丸整備を進め,その一環として西手櫓が建設されたとされる.

西手櫓は城郭建築に典型的な多層構造をもち,石垣の上に木造櫓が載せられている.石垣は当時の積石技術を用いて築かれ,櫓自体には狭間や銃眼が設けられ,城の防御上の重要な機能を担っていた.屋根は瓦葺であり,入母屋造または切妻造の形態が採用されている.

櫓の位置は西丸の西端にあり,西手門や城外の通路を見下ろす形で配置されていたため,守備兵にとって戦略的に重要であった.内部は複数階層に分かれており,上階からは監視・射撃が可能で,下階は武器・弾薬の保管や兵員の待機スペースとして用いられた.

明治期の廃城令によって多くの建造物は取り壊され,さらに戦災によって城郭の大部分が焼失したが,西丸西手櫓は戦火を免れ現存する.岡山城には他に本丸中段に月見櫓が現存しており,西手櫓とともに国の重要文化財に指定されている.約400年間,歴史の証人としてその姿を保ち,江戸時代初期の城郭建築技術や防御体系を伝える貴重な文化遺産である.

@2025-08


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