尾道水道
尾道の千光寺から尾道水道を望む.
尾道水道は,広島県尾道市にある瀬戸内海の水道である.本州側の尾道市中心市街地と向島を隔てる海峡で,通称尾道海峡と呼ばれることもある.東西に細長く延びる海峡の幅は約200から300メートルという狭隘部であり,瀬戸内海航路における重要な水路として古くから海運の要衝となっている.
尾道水道沿岸には重要港湾に指定されている尾道糸崎港尾道港区が立地し,古くから瀬戸内航路の主要商港として機能してきた歴史を持つ.水道に南面する本州側には尾道市中心市街地が発達し,北面する向島には造船所や住宅地が形成されている.この地理的特徴により,尾道は尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市として2015年に広島県初の日本遺産に認定されている.
海峡の交通機関として,明治時代から135年以上にわたって渡船[フェリー]が運航されており,最盛期には9つの航路が存在した.現在は数航路に減少しているものの,日本一短い船旅として親しまれ,地元住民や観光客にとって重要な交通手段となっている.ただし2025年3月には福本渡船が廃業するなど,時代の変化により一部の航路は廃止されている.
尾道水道を横断する道路橋として,尾道大橋が1968年に架橋された.尾道大橋は,広島県尾道市の本州側[尾崎町付近]と向島を結ぶ国道317号の道路橋である.橋長は約386メートル,主径間は215メートル,航路上の桁下高は約36.5メートルであり,尾道水道を横断して自動車・歩行者・自転車の通行を可能にしている.
建設は1966年に着手され,1968年1月に竣工,同年3月4日に尾道大橋有料道路として供用が開始された.当初は有料道路であったが,料金徴収期間の終了を経て2013年4月1日に広島県へ移管され,無料開放された.設計に際しては航路条件や景観,施工性を考慮し,放射形斜張方式の3径間連続鋼床版2主桁斜張橋が採用された.当時,日本で最大支間長200メートル超の本格的斜張橋は初めてであり,技術的に注目された.
構造諸元は,橋長386.45メートル,主塔高さ約72.6メートル,有効幅員8.0メートル[車道幅員7.0メートル]で,鋼床版の連続2主桁形式を採る.生活道路として歩道も備えられ,歩行者や自転車の通行も可能である.位置的には,すぐ西側に1999年開通の新尾道大橋[しまなみ海道接続の有料自動車専用橋]が並行しており,両者は生活道路と高速道路系の機能を分担して地域交通網を形成している.
尾道大橋の建設背景には,尾道という港湾都市の地理条件と,昭和期の高度経済成長に伴う交通需要増大がある.竣工後半世紀を経た現在も,塗装や構造健全性の点検など維持管理が行われており,尾道市民や観光客にとって不可欠な交通インフラとして機能し続けている.
現在の尾道水道は,古くからの海運の要衝としての歴史と,近代的な交通インフラが共存する独特の景観を形成しており,瀬戸内海の代表的な水道の一つとして重要な地理的・文化的価値を有している.
@2014-08
今日も街角をぶらりと散策.
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