白金台日吉坂
白金台に所在する日吉坂[ひよしざか]は,東京都港区白金二丁目と白金台一丁目の境界に位置する坂道であり,現在の東京大学医科学研究所の北方,桜田通りと目黒通りが合流する手前約100メートルの地点に存在する.坂道は目黒通りの一部を成し,道幅が広く,交通量の多い幹線道路として機能している.
坂名の由来については諸説あるが,江戸時代中期に活躍した能役者・日吉喜兵衛の名に因むと伝えられている.日吉喜兵衛は,宝生流に属する能楽師で,江戸の座付役者として知られていた人物である.能楽における名跡「日吉」は複数代にわたって継承されており,坂名がその一人である日吉喜兵衛に由来するという伝承は,地域の歴史的記憶として口碑に残されている.喜兵衛がこの地に住んでいたことが坂名の由来となったとされるが,これを裏付ける文書は現存せず,あくまで口承に基づくものである.また,坂名の表記についても「ひよせ」「ひとせ」「ひとみ」などの異なる表記が存在し,文字表現には一定の揺れが見られる.
地理的特徴として,坂を下ると名光坂に接続し,坂下には加藤清正を祀る覚林寺,通称清正公[せいしょうこう]がある.坂を上ると桑原坂上に至り,その先には東京メトロ南北線・都営三田線の白金台駅やエリトリア国大使館が所在する.現在の都営バス停「白金台駅前」は,白金台駅が開業する以前には「日吉坂上」と呼ばれており,交通施設の名称としても坂名が長く用いられてきた経緯がある.
この周辺は古くから医療機関が集積する地域として知られており,坂上には1906年[明治39年]に芝から移転してきた伝染病研究所,すなわち現在の東京大学医科学研究所が立地する.同研究所は日本の近代医学の発展において中心的役割を果たしてきた.また,周辺には複数の寺院が点在し,交通量の多さを除けば閑静な住宅地としての性格を保っている地域である.
@2016-12
今日も街角をぶらりと散策.
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