

20世紀後半のクロアチアを代表する画家のジュロ・プリティカ(Đuro Pulitika,1992-01-26 – 2006-02-14)の作品。
油彩・カンヴァス作品(59.5×79.2cm)。ドゥブロヴニク近代美術館(Museum of Modern Art Dubrovnik)に所蔵されている。プリティカは生涯を通じてドゥブロヴニクとその周辺、広くはダルマチア地方の風景を独自の様式で描き続けた画家であり、本作もその一貫した主題系列に連なる一点である。
画面の大部分を占めるのは、丸みを帯びたオレンジ色からオーカー色へと連なる丘陵であり、背後の空もほぼ同系統の暖色でぼかされ、大地と天空の境界が溶け合うように描かれている。この画面構成は、プリティカがザグレブ美術アカデミーおよびツェティニェ美術学校での修業を経て確立した、アンリ・マティスやアンドレ・ドランら野獣派(フォーヴィスム)の色彩表現に連なるものであり、現実の写実的な奥行きや遠近法よりも、色彩そのものが持つ感覚的な力を優先する姿勢がよく表れている。
前景には、輪郭を溶かした丸い塊として描かれた樹木や茂みが並び、紺青・濃緑・オレンジ・白といった色面が隣接しながら画面を埋めている。その間を白っぽい小道が蛇行しながら奥の丘陵へと続いており、見る者の視線を画面の奥へと自然に導く構成となっている。画面左下には緑の区画が置かれ、点在する黄やオレンジの小さな丸い形態が花や果実を思わせるアクセントとして機能している。
こうした平面的で装飾的なフォルムの処理と、うねる小道・丸みを帯びた丘というプリティカに特徴的なモチーフの組み合わせは、批評家がしばしば「おとぎ話のような場面」「個人的なアルカディアにおける普遍的調和」と評してきた画家独自の主観的風景観を体現している。対象の実際の姿を写し取るというよりも、色彩と形態を通じて画家自身の感覚・気分・意志を表出することが優先されており、本作における暖色を基調とした画面全体も、冬を越えて萌え出る春の生命力への賛歌として読み取ることができる。
プリティカは2006年12月に没した際、遺言によって自作の一部とドゥルチッチ=マスレ=プリティカ・ギャラリーの所蔵作品64点をドゥブロヴニク近代美術館に寄贈している。
参照:西洋美術史
'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"
