

バロック絵画を代表するネーデルラント連邦共和国[Republic of the Seven United Netherlands]の画家であるレンブラント・ファン・レイン[Rembrandt Harmenszoon van Rijn;1606-07-15–1669-10-04]による作品.
『開かれた上扉による若い女性』は, オランダ黄金時代の画家レンブラント・ファン・レインが1654年頃に制作した油彩画である.現在はベルリン絵画館に所蔵されている.英語ではYoung Woman at an Open Half-Doorと呼ばれ, 過去にはモデル名を含めた別題で言及されてきた経緯がある.
画面には, 半ば開かれた上扉[ダッチ・ドア]に身を寄せる若い女性が描かれている.女性は上半身を前に出し, 軽く首を傾けながら鑑賞者の方を見つめている.その視線は直接的でありながらも柔らかく, 親密さと静かな内省とを併せ持つ.構図は単純であるが, 扉という建築的要素によって空間の内と外, あるいは私的領域と外界との境界が暗示され, 人物像に心理的な奥行きが与えられている.
衣服は豪奢ではなく, 白い下着の上に赤褐色系の上衣をまとっているにすぎないが, 厚塗りと薄塗りを交えた筆致によって布の質感と重量感が的確に表現されている.背景は暗く抑えられ, 光は女性の顔, 胸元, 腕に集中している.この明暗対比によって, 人物は闇の中から浮かび上がるように示され, 鑑賞者の視線は自然に表情へと導かれる.
この女性は, レンブラント晩年の生活の伴侶であったヘンドリッキエ・ストッフェルスをモデルとして描かれた可能性が高いと考えられている.ヘンドリッキエは1640年代後半以降, レンブラントの家に入り, 家政を担うとともに, 多くの作品でモデルを務めた.本作に見られる表情の自然さや距離感の近さは, 画家とモデルの間に存在した私的で親密な関係を反映していると解釈されてきた.
技法的には, レンブラント晩年特有の自由で省略的な筆致が顕著である.細部を厳密に描き込むのではなく, 光の当たる部分とそうでない部分を大胆に分けることで, 形態と存在感を成立させている.このような描写は, 外形的な写実よりも, 人物の存在そのものや内面的な気配を重視する姿勢を示している.
'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"
