カサ・デ・ラ・バル

20世紀のカタルーニャ美術を代表する画家の一人であるフランセスク・ガロバルデス・カルボネル[Francesc Galobardes Carbonell,1930-12-25–2024-01-27]の作品.

アンドラの首都アンドラ・ラ・ベリャに位置する歴史的建造物カサ・デ・ラ・バルを中心とした風景が描かれている.

カサ・デ・ラ・バルは, 1580年に建設された石造りの建造物であり, アンドラの政治的中心地として長く機能してきた.かつてはアンドラの議会が置かれ, この小国の民主的統治の象徴として重要な役割を果たしてきた建物である.その堅固な石造りの外観と特徴的な塔は, ピレネー山岳地帯の伝統的建築様式を体現している.

この作品において, ガロバルデスはカサ・デ・ラ・バルを曇天の下, 重厚な雰囲気の中に描き出している.画面を支配するのは, 灰色がかった雲に覆われた空であり, その下に堂々と佇む石造建築の存在感が際立っている.建物の壁面は灰色を基調としながらも, 部分的に温かみのある茶色やオレンジ色の色調が見られ, 長い年月を経た石材の風化した質感を表現している.背後の山々は暗い茶褐色や灰色で描かれ, 曇天の重苦しい空気感と呼応している.

画面右側には険しい岩山が大胆に配置され, 建物との対比によって, この地域特有の厳しい自然環境を強調している.手前の地面は岩がちで荒涼としており, ピレネー山岳地帯の過酷な地形を示唆している.全体として, 明るく牧歌的な風景というよりは, むしろ重厚で威厳に満ちた, ある種の厳粛さを湛えた表現となっている.

色彩面では, 茶褐色, 灰色がかった色調が支配的であり, 限られた光の中で建物の量感と質感が強調されている.筆触は比較的厳格で構築的であり, 建築物の堅固さと歴史的重みを表現するのに適している.曇天という天候の選択は, この歴史的建造物の持つ重厚さや, 長い年月にわたってアンドラの政治的中心地として果たしてきた役割の重さを, 視覚的に体現しているかのようである.

1971年に銀行員の職を辞して絵画に専念するようになったガロバルデスは, 1500点以上の作品を制作し, 70回を超える個展を開催した.彼の画風は, 印象派の影響を受けつつも, この作品に見られるように, より堅固な形態把握と構築性を重視している.光の効果よりも物質性と量感を優先する姿勢は, 建築物を主題とした作品において特に顕著である.

この作品において画家は, アンドラの政治的・歴史的中心地であるカサ・デ・ラ・バルを, その記念碑的性格を損なうことなく描いている.曇天という天候設定, 厳しい山岳の風景, そして重厚な石造建築という要素の組み合わせは, この建物が担ってきた歴史的役割と, それを取り巻くピレネー山岳地帯の厳格な自然環境とを, 効果的に結びつけている.明るく牧歌的な風景画とは一線を画し, むしろ威厳と歴史の重みを感じさせる作品である.


'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"

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