

跪坐供養菩薩像は, 唐朝後期, 7世紀後期に制作された多彩色仏教彫刻である.この像は元来, 中国甘粛省敦煌の莫高窟第328窟に所在した八体の彫像群の一部であり, 六体の菩薩と二体の仏弟子から構成される組み合わせの一つであった.菩薩像は洞窟南側の仏龕外側に配置され, 礼拝者を主尊像へ導く役割を果たしていた.
制作技法は石造ではなく, 木製の芯材に粘土, 繊維, 藁を混合した素材を塗り重ね, 自然乾燥により硬化させる方法で作られている.この技法により, 彫像は軽量でありながら立体的な表現が可能であった.表面には彩色と金箔装飾が施され, 唐代特有の華麗で精緻な装飾表現が見られる.衣服のひだや宝飾品の細部, 肩から腰にかけての柔らかな曲線は, 当時の彫刻技法の高度な技巧を示している.
姿勢は, 頭部をわずかに前方に傾け, 両手を胸前で合掌印を結ぶものである.上半身には肩にかけられたスカーフと宝飾品の首飾りを身に着け, 下半身は腰布で覆われている.足元には中国仏教美術の基本的特徴である二重蓮華座が配され, 仏尊に対する供養・礼拝の意図が明確に表現されている.
この跪坐供養菩薩像は, 唐代における彩色木彫仏像の典型例であり, 莫高窟の壁画や仏龕彫刻と相まって, 信者に対する視覚的な宗教的導線を形成する重要な役割を担っていた.また, 木製芯材と粘土の混合素材の使用は, 唐代の仏教彫刻における軽量化・装飾表現の工夫を示すものであり, 彩色と金箔による装飾は, 彫刻の立体感と宗教的荘厳さを強調していた.
'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"
