

ヘンリー王子[Henry Frederick, Prince of Wales, 1594/1612]向けに1612年ごろ製作された金装飾甲冑で,後に弟であるチャールズ1世[Charles I, 1600/1649]に受け継がれたもの.
2人はともにジェームズ1世[スコットランド王ジェームズ6世,イングランド王ジェームズ1世]と王妃アン・オブ・デンマークの息子である.兄のヘンリー王子は聡明で人気があり,王位継承者として大いに期待されていたが.1612年に突如として高熱に倒れ数週間のうちに容体が悪化し僅か18歳で急死.これにより,次男であった弟チャールズが王位継承者となり,後に1625年に父王の死去を受けてイングランド王チャールズ1世として即位.
父と同じく王権神授説を信奉するチャールズ1世は専制を強め議会との対立を深め,清教徒革命により処刑された.
この甲冑は近接戦闘用のヘルメット, 首当て, 胸当て, 一対のタセット(腰当て), 背当て, クレット, 腿当て, 膝当て, 脛当て, 足当て, 肩当て, 腕当て, 籠手から構成される完全な野戦用甲冑である.表面は金箔で覆われており, 彫刻と打刻による植物装飾が施されている.この装飾技法は珍しいもので, 通常金鍍金装飾は水銀アマルガム法という危険な工程によって甲冑の表面に融着させる方法が用いられている.
'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"
