埴輪武装男子立像

国宝指定名称は『埴輪武装男子立像』であるが,東京国立博物館では『埴輪 挂甲武人』として展示されている.

この埴輪は衝角付冑と小札甲[挂甲]をまとい武装した人物を表現した全身立像であり, 群馬県太田市飯塚町[長良神社境内]から出土.像高は130.4センチメートル, 幅は38.6センチメートル, 奥行は27.3センチメートル.

1958年[昭和33年]2月8日に重要文化財に指定され, 1974年[昭和49年]6月8日に国宝に指定された.東京国立博物館は1952年に個人[修理に関わった者]から本像を購入して所蔵したと伝えられる.

本像は表面に白・赤・灰などの彩色痕が確認され, 彩色が施されていたことが明らかにされている.長年の経年劣化および過去の補修の影響に対処するため, 2017年から2019年にかけて解体修理・詳細調査が行われた.

装身具の構成は明瞭である.頭部は頬当と錣[しころ]を備えた衝角付冑であり, 胴部は小札を縅して前面で合わせ草摺を含む小札甲[挂甲]である.膝には佩楯とみられる小札製の防具, 脛には小札製の臑当, 肩には肩甲, 両手には籠手が表現されている.左手首に鞆を付する表現があり, 背面には靫[ゆき]を背負う意匠が認められる.甲の着装は紐を蝶結びで結んで行われていた痕跡が十箇所に認められる.右手は大刀の柄にかける所作を示し, 左手は弓を縦に持つ所作を示している.

衝角付冑や小札甲[挂甲]に関する出土実例としては, 千葉県の金鈴塚古墳や群馬県の金冠塚[山王金冠塚]古墳, 藤岡市の諏訪[諏訪神社]古墳などで衝角付冑・挂甲類が出土していることが確認されている.

本埴輪が埴輪として初めて国宝に指定された例であり, 長らく唯一の国宝であったが, 令和2年[2020年]に綿貫観音山古墳出土の埴輪群が国宝に指定されたため, 国宝埴輪は本像と綿貫観音山古墳出土品の両者が国宝に指定されている.

東京国立博物館所蔵.


'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"

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