ぶらぶら絵葉書

新宿西口立体ロータリー

新宿西口の駅前にはかつて立体ロータリーが存在していた.これは高度経済成長期に進められた副都心計画の一環として整備されたものであり, 人と車を分離する先駆的な都市デザインであった.1961年に小田急百貨店が開業し, 1966年に新宿駅西口立体広場が完成したこの駅前広場は, 環状に巡る車道がバスやタクシーの発着点となり, その上部に設けられたペデストリアンデッキが歩行者の動線を担った.さらに地下には小田急エースをはじめとする地下街が広がり, 地上・デッキ・地下の三層構造によって交通と人の流れが立体的に分けられた.

この立体広場の設計は建築家坂倉準三が手がけ, 実施設計・設計監理は東孝光が担当した.この方式は当時として画期的であり, 新宿西口を東京の新しい玄関口として象徴づけるものであった.歩行者は車道を横断することなくビルや駅に接続でき, またバスロータリーは地方からの来訪者を迎え入れる拠点となった.特に地上と地下の二層構造の広場をつなぐらせん状車路は, 新宿駅西口の象徴的な存在として多くの人に親しまれた.

しかし時代が進むにつれて, この立体構造は複雑さが目立ち始め, 初めて訪れる人にとっては動線が分かりにくいという問題を抱えるようになった.さらに, 駅前広場や地下街の老朽化も進み, 慢性的な混雑に対応できなくなったことから, 大規模な再整備の必要性が指摘されるに至った.小田急百貨店本館も2022年10月に55年余の営業を終了し, 解体されることとなった.

この立体ロータリーは西口の近代都市化を象徴する空間であったが, 新宿駅直近地区の再開発に伴い, らせん状車路は2025年1月15日に通行止めとなり, 長年親しまれた立体構造は徐々に姿を消していくこととなった.この再開発により, 新宿駅西口駅前広場は人中心の空間へと生まれ変わることが計画されている.

@1998


今日も街角をぶらりと散策.
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