ぶらぶら絵葉書

鯖街道口

京都における鯖街道口とは, 若狭小浜から京都に至る街道, すなわち鯖街道の最終地点にあたる場所を指す呼称である.鯖街道は, 若狭湾で獲れた鯖を中心とする海産物を京都に運び込むための物流路であり, とりわけ江戸時代を通じて重要な役割を担った.小浜から朽木・大原を経て京都の出町に至る若狭街道がその代表路であり, 京の台所を支える動脈とされた.

現在鯖街道口として知られる石碑は, 京都市左京区出町の賀茂川に架かる出町橋西詰に建てられている.この場所は若狭街道の京都側終点にあたり, 賀茂川と高野川の合流点付近に位置する.石碑には鯖街道口と刻まれており, 2002[平成14]年に鯖街道終着の地として設置された.出町桝形商店街の近くにあり, 商店街の歴史的背景とも密接に関わっている.

鯖街道の名称は, 若狭から運ばれた鯖が特に有名であったことに由来する.小浜から京へは約75キロ前後の道程であり, 行商人たちは塩漬けにした鯖を背負い, 一昼夜かけて運び込んだ.京都に着く頃には塩が適度に浸み込み, 絶妙な塩加減となった鯖は京の人々に重宝された.この鯖は特に焼き鯖や鯖寿司などに加工され, 今なお京都の食文化に深く根付いている.

出町は古くから賀茂川と高野川に挟まれた交通の要衝であり, 若狭街道の京都側入口として大原口とも呼ばれていた.若狭街道を通じて運ばれた鯖や海産物はここで京の市場に入り, 周辺の社寺や町人層の生活を支える物資として流通した.出町桝形商店街は昭和初期に本格的な商店街として形成されたものであり, 鯖街道の終着点に立地する地域として繁栄してきた.現在も石碑が商店街近くに立ち, 地域のアイデンティティを示す象徴となっている.

鯖街道は2015年に文化庁により日本遺産海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 〜御食国若狭と鯖街道〜として認定され, その文化的価値が改めて評価されている.現在でも毎年鯖街道ウルトラマラソン大会が開催され, 小浜市から京都市出町柳まで約76キロを走るイベントとして親しまれている.

すなわち, 鯖街道口は単なる街道の終点ではなく, 若狭と京都を結ぶ経済的・文化的交流の記憶を刻む地点である.現在では商店街と学生街が交錯する生活空間にあって, 往時の賑わいを今に伝える歴史的なランドマークとして, 地域の文化的遺産を物語る重要な場所となっている.

@2022-01


今日も街角をぶらりと散策.
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