いしかわ赤レンガミュージアム
いしかわ赤レンガミュージアムとして使われている旧金澤陸軍兵器支廠の兵器庫3棟は,明治後期から大正初期にかけて,すなわち明治44年[1911年]から大正2年[1913年]頃にかけて建設された赤煉瓦造の倉庫群であり,帝国陸軍の兵器・弾薬・装備の保管を目的とした施設として整備された.これらは当時の陸軍省による全国的な兵器補給体制の一環であり,加賀金沢における戦略的拠点として設けられた「陸軍第九師団」に付属する後方支援拠点の中核であった.
3棟の兵器庫はいずれも赤煉瓦造2階建で,壁体にはフランドル積みという煉瓦工法が用いられており,壁面に施された帯状の白色モルタル目地が美観と構造の両面で機能している.屋根構造には切妻造およびキングポストトラス[小屋組]構造が採用され,内部は大空間を支える無柱構造となっている.これは弾薬や大型の軍需物資を効率的に搬入・保管するための機能設計であり,床面は煉瓦敷きまたはコンクリートで仕上げられていた.各棟には観音開きの鉄扉を備え,耐火性と防犯性に配慮した構造が当初より意識されていた.外観に施された意匠も,単なる軍用倉庫にとどまらず,明治後期の煉瓦建築技術と意匠性の水準を体現するものとして評価されている.
これらの建物は戦後,金沢市内における軍事施設の廃止とともに長らく用途を失い,一時は取り壊しも検討されたが,1990年代以降,保存の重要性が市民や専門家の間で認識されるようになった.平成20年[2008年],これらの兵器庫は「赤れんがミュージアム」として再生され,文化財的価値を生かした展示施設へと転用された.現在,3棟のうち1棟は常設展示施設として,金沢の都市計画史,辰巳用水の歴史,水の土木技術,市民文化を紹介する空間として活用されており,もう1棟は企画展示や地域行事に活用されている.残る1棟も外観保存を前提に維持管理されており,敷地内に復元された辰巳用水の分流とあわせて,市民の憩いと学びの場として親しまれている.
@2025-04
今日も街角をぶらりと散策.
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