ぶらぶら絵葉書

広島本通商店街

広島本通商店街は,広島市中区の都心部に位置する代表的なアーケード型商業地であり,中四国最大級の商店街として知られている.紙屋町から八丁堀にかけての東西約577メートルにわたってアーケードが設けられ,約200店舗が軒を連ねている.来街者数は平日で約6万人,日祝日には約10万人に達し,多くの買い物客や観光客で賑わっている.アーケードは全天候型で,天候に左右されることなく快適な買い物環境が整えられている.

商店街は地元住民にとって日常生活の拠点であるとともに,観光客にとっては原爆ドームや広島平和記念公園,広島城などの観光拠点と結びついた都市空間の一部を成している.東端は広島金座街商店街と並木通りに接続し,北側には中の棚商店街,南側には袋町裏通りが控え,紙屋町の地下街「シャレオ」や八丁堀方面とも繋がる広島最大級の繁華街の中核をなしている.

本通商店街の起源は,西国街道として城下町広島を東西に貫いていた街道にあり,江戸時代からその道筋は基本的に維持されてきた.明治・大正・昭和初期にかけては,老舗に加え百貨店や映画館,料亭が立ち並ぶ一大商業エリアとして発展し,「すずらん形」のかわいらしい照明が商店街の象徴となった.昭和初期には,広島市の中心市街地の一角として,華やかで文化的な雰囲気を持ち,多くの市民に親しまれていた.

1945年8月6日の原子爆弾投下により,本通一帯は爆心地至近にあったため壊滅的被害を受け,街路や建物は完全に消失した.その後,財政的制約の中で市民と関係者の懸命な努力によって,復興都市計画の一環として再建が進められた.戦後の仮設アーケードは雪によって倒壊するなどの困難もあったが,昭和30年代以降は店舗が戻り始め,歩行者数も回復し,昭和50年代から60年代にかけては,全天候型のアーケードが本格的に整備され,都市型商店街としての機能が確立された.

平成以降は,全国的な中心市街地の空洞化や郊外型大型ショッピング施設の進出が進む中でも,多様なテナント構成と地域文化の発信によって,本通商店街は独自性を保ち続けている.飲食,ファッション,アクセサリー,時計,眼鏡,薬品,生活雑貨,書籍,文具など,幅広い業種の店舗が並び,100年以上の歴史を持つ老舗も数多く現存している.広島東洋カープとの連携も特色の一つであり,応援グッズやイベントが商店街の魅力を高めている.

2014年にはアーケードのLED照明が導入され,カープやサンフレッチェ広島をイメージした多彩な演出が行われ,照明学会からの表彰を受けるなど先進的な取り組みも評価された.無料の季刊誌「本通情報手帖φ[ウー]」の発行や,地元女子大生を中心とした本通SmS[ショッピング・モール・シスターズ]による清掃活動やイベント運営など,地域との連携にも積極的に取り組んでいる.加えて,外国人観光客の増加に対応するため,多言語表記やキャッシュレス決済の導入,文化イベントの開催など,国際的対応力の強化も図られている.

また,商店街の統一的景観づくりや快適性・安全性の向上に向けた取り組みも進められており,都市空間としての魅力が維持されている.創業100年以上の老舗が多数存在することも,本通商店街の重要な特徴であり,江戸時代から続く商業文化の継承者としての価値を今に伝えている.

交通アクセスの良さも本通の強みであり,アストラムライン,バス,路面電車の停留所が集中しているため,市内外からの来街者にとって利便性の高い立地である.商業施設との共存によって,活発な商業活動が維持されている.

広島本通商店街は,広島市の都市的象徴であり,また戦後復興の精神を体現する空間でもある.買い物や食事だけでなく,広島の歴史や平和,文化を感じ取ることのできる場所として,地域住民と観光客の双方に価値ある都市空間を提供している.国際平和文化都市ひろしまの中心に位置するこの商店街は,中四国を代表する商業・文化拠点として今後もその重要性を増していくことが期待される.

@2015-04


今日も街角をぶらりと散策.
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