釈迦仏一鋪[しゃかぶついっぷ]は,中国・敦煌莫高窟に所在する仏教壁画・塑像群の一つであり,隋[581/618]の時代に制作された仏伝図の中でも最も象徴的な構成の一つである.
仏伝図[ぶつでんず]とは,仏教における開祖である釈迦牟尼仏,すなわちゴータマ・シッダールタの生涯を描いた絵画・彫刻・壁画などの視覚的表現を指す.また,一鋪とは,仏伝や仏像の特定の場面・群像構成を表す単位であり,ここでの釈迦仏一鋪とは,釈迦牟尼[ゴータマ・シッダールタ]を中心とする三尊形式の仏像群,すなわち釈迦如来・脇侍菩薩・弟子像などを一組として表現したものである.
釈迦如来像は説法印を結び,慈悲と威厳を併せ持つ表情を浮かべている.表面には金箔と彩色が施され,衣文は浅く柔らかな線で彫り出され,写実的な肉体美と霊的な静謐さが融合されている.これは当時の北周から隋初の様式から唐代初期に至る過渡期に特徴的な意匠である.
全体の構図は左右対称で調和が取れており,精神性の高い空間構成がなされている.
釈迦仏一鋪は,莫高窟における塑像美術の精華を象徴する作品であり,仏教芸術の中でも隋代の造像様式と精神文化の結実を如実に示すものと評価されている.
'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"