

バロック絵画を代表するネーデルラント連邦共和国[Republic of the Seven United Netherlands]の画家であるレンブラント・ファン・レイン[Rembrandt Harmenszoon van Rijn;1606-07-15–1669-10-04]による1655年頃に制作されたとされる油彩画.現在ニューヨークのフリック・コレクションに所蔵されている.この作品はレンブラントの騎馬肖像画の中でも特に謎に包まれた存在として知られ, 美術史家たちの間で長年議論の対象となってきた.
画面には東洋風の衣装を身にまとった若い騎手が描かれている.人物は馬上で前方を見つめ, わずかに体をひねった姿勢をとっている.背景には荒涼とした風景が広がり, 岩山と薄暗い空が画面を支配している.この風景の不穏な雰囲気は, 騎手の孤独な佇まいをいっそう際立たせている.
作品の最大の謎は, 描かれている人物が誰であるかという点である.「ポーランドの騎手」という題名自体, 後世につけられたもので, 実際にポーランド人が描かれているかどうかも定かではない.衣装は確かに東欧風の要素を含んでいるが, それが具体的な個人の肖像なのか, あるいは理想化された人物像なのかについては, 今なお結論が出ていない.
レンブラントの筆致は晩年期の特徴を示しており, 光と影の劇的なコントラストが画面全体を支配している.人物の顔や衣服の質感は, 厚塗りの絵具によって立体的に表現されている.特に騎手の顔に当たる光は, 彼の若々しさと同時に, どこか憂いを帯びた表情を浮かび上がらせている.
この作品は寓意的な意味を持つ可能性も指摘されてきた.騎手は人生の旅路を行く者の象徴とも解釈でき, 荒涼とした風景は彼が直面する試練を暗示しているとも考えられる.あるいは, キリスト教騎士道の理想を体現した存在として描かれたという説もある.
レンブラント作品の真贋をめぐっては20世紀に大規模な見直しが行われたが, この「ポーランドの騎手」についても一時期その帰属が疑問視された.しかし現在では, 様式的特徴や技法の分析から, レンブラント本人の作品である可能性が高いとする見解が主流となっている.
この絵画の魅力は, その謎めいた性格と, レンブラント特有の心理的深みにある.騎手の表情には決意と不安が同居し, 彼がどこから来てどこへ向かうのかという問いかけが, 見る者の想像力をかき立て続けている.
'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"
