

敦煌莫高窟[Mogao Caves]の322窟西壁龕にある唐代の天王像.
天王は仏法と仏国土を守護する武神であり,大乗仏教における護法神群の一員として,一般に四天王として配される.敦煌莫高窟に残る唐代の天王像は,中央仏像の左右を固める武人的な護法像として造形され,力感に富む体躯,甲冑風の衣装,威厳ある表情を特徴とする.天王像は,仏法を守護し,邪悪から洞窟・礼拝空間を護る役割を担っている点で,仏龕[仏壇]構成上,重要な位置を占める.
第322窟は,唐代初期の造営と考えられる洞窟であり,西壁中央に阿弥陀浄土の龕を備え,その左右に四天王像が安置されている.天王像は西壁龕内に立つ.像は粘土による塑造で,高さ約2メートルの堂々たる立像であり,鎧甲をまとって邪鬼を踏みつける姿をとる.右手には武器を持ち,左手は腰のあたりで軽く構えられている.
衣の襞や甲冑の細部には高度な写実性が認められ, 彩色も一部残っており, 当時の塑像技術の水準を伝える.量感豊かな体躯表現, 重心のかかった姿勢, 衣文の流れなどは, 唐代彫塑芸術の成熟を示すものである.これらの特徴は盛唐期に典型的となる造形的要素を先取りしており, 初唐における造形革新の過程を知る上で重要な資料となっている.
'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"
