雪舟・秋冬山水

「この絵を書いた雪舟は室町時代の人。雪舟は日本で初めて自画像を描いたことでも知られている。そして、ヨーロッパでも同じ頃初めて自画像を描いたアルブレヒト・デュラーが活躍している。
そういうわけで、雪舟とデュラーは比較の対象となるわけだね。

でも、この『秋冬山水図』はなんと20世紀抽象画家の巨人と呼ばれるピエト・モンドリアンの絵と似ている要素があると言われる」

「海を越えるだけではなくて、時代を超えてシンクロし合う画家達といったところかしら。

それとも、モンドリアンの抽象画には実は日本の水墨画の隠れた影響があったっていうことになるのかしら」

「何がしかの影響は、それはあったのかもしれないけど、時代を超えた芸術家の魂がシンクロしたというのが素直なところじゃないかな。
誰が誰の影響を受けたということじゃぁなくてね。

そうそう、この山水図も実は南宋の宮廷画家夏珪の『山水画』を基にして書かれたとされているよね」

「その場合は、雪舟の『山水図』は夏珪の『山水画』の影響を受けているといえるわね。

でも、夏珪の『山水画』と雪舟の『山水図』とでは大分違いがあるわ」

「そこの辺りが、雪舟の『山水図』にピエト・モンドリアンの抽象画を見ることが出来るといわれるところ。

絵を構成している全ての線が響きあっているんだ」

「相似形をしているのよね。

まず、右の岩山の線は、左の岩山の線と相似形。

岸辺の岩は楼閣前の岩と相似形。

右の木立の線は断崖の輪郭線と....」

「何だか、よーく見てみるとまだまだありそう。
この絵は単なる水墨画じゃぁないことが分かるね。

これは、もう20世紀抽象画だって言ったて通用するよ」