トルコ共和国

首都アンカラ[Ankara]
人口8,566万人[2024]
面積78万1,000km2
※日本:37万8,000km2
名目GDP1兆3,224億ドル[2024]
※日本:4兆262億ドル[2024]

トルコは欧州と中東, そしてアジアの結節点に位置する地政学的に重要な国家であり, その経済構造は伝統的な農業から現代的な製造業・サービス業へと大きく変化してきた国である.経済規模においては世界第19位前後[名目GDP, IMF 2023年推計]の新興市場の一つとして位置づけられ, OECDやG20のメンバーでもある.人口は約8,500万人であり, 購買力平価ベースでは世界第11位前後の経済規模を有する.

経済構造の基盤として農業は依然として重要である.小麦, 大麦, 綿花, 果物, 野菜, ナッツ類など多様な農産物を生産し, 特にヘーゼルナッツ[世界生産の約65-70%], ドライフルーツ[イチジク, アプリコット], チェリーの輸出において世界最大のシェアを持つ.また, 小麦, 大麦, レンズ豆の生産も世界上位に位置している.しかしGDPに占める農業の割合は現在約6%まで低下し, 全就業人口のうち農業従事者の割合も約17-18%まで縮小している.

製造業はトルコ経済の中核であり, GDPの約20-22%を占める.主要分野は自動車産業, 機械, 家電製品, 鉄鋼, 繊維産業である.特に自動車産業は輸出の柱であり, 年間生産台数は約130万台で世界第14位前後の自動車生産国となっている.フォード・オトサン[Ford Otosan], オヤック・ルノー[Oyak-Renault], トファシュ・フィアット[Tofaş-Fiat]の三大メーカーが産業を牽引し, 生産車両の約80%が輸出されており, 欧州市場との結びつきが強い.フォード・オトサンは商用車分野で欧州最大級の生産基盤を有し, オヤック・ルノーは乗用車, トファシュ・フィアットは小型車を中心に生産している.

家電製品や白物家電の分野ではアルチェリック[Arçelik]が中心的役割を果たし, ベコ[Beko], グルンディッヒ[Grundig]などのブランドを展開する.欧州市場においては白物家電で第3位のシェアを有しており, 輸出競争力が高い.繊維・衣料品は伝統的な輸出産業であり, トルコは世界第5位の繊維輸出国として位置づけられ, 低コストと技術力を背景に市場競争力を維持している.

トルコ経済を支えてきたのは複合企業体である大財閥グループである.最大のコチ・ホールディング[Koç Holding]はエネルギー, 自動車, 家電, 金融を中心とするトルコ最大の財閥であり, 単独でGDPの約2.5%を占める規模を持つ.サバンジュ・ホールディング[Sabancı Holding]は金融, エネルギー, 小売, 工業分野に強みを持ち, とりわけアクバンク[Akbank]を通じた金融事業が中核である.これに加えてエネルジサ[Enerjisa]を通じた電力分野でも影響力を有する.エルデミル[Erdemir]は鉄鋼業を担うトルコ最大の製鉄会社であり, オヤック財閥[Oyak Grubu]が支配している.また, ドーアン・ホールディング[Doğan Holding]はメディアやエネルギー分野に影響力を持ってきたが, 近年はメディア資産を売却し事業構造を転換している.従来「4大財閥」と称される場合, 一般にコチ[Koç], サバンジュ[Sabancı], エチバシュ[Eczacıbaşı], ドーアン[Doğan]を指すことが多い.これら大財閥は雇用と輸出の両面でトルコ経済を支えている.一方で, コチ[Koç], サバンジュ[Sabancı], ドウシュ[Doğuş], ドーアン[Doğan]を「4大財閥」とする見解もある.特にドウシュ財閥は自動車[Volkswagen, Audi, Porscheなどの輸入代理], 金融[Garanti銀行に出資], 観光・不動産開発などに強みを持ち, 21世紀において規模と影響力を大きく伸ばしている.そのため「ドウシュを含めて4大財閥」と表現されるケースが増えている

エネルギー分野においては一次エネルギー需要の約70-75%を輸入に依存しており, 特に石油と天然ガスが中心である.天然ガスはロシア, アゼルバイジャン, イランからのパイプライン供給に大きく依存してきたが, 液化天然ガス[LNG]の輸入拡大, トルコストリーム・パイプラインの稼働, 2020年に黒海で発見された4,050億立方メートル規模の新規ガス田開発により, エネルギー安全保障の改善が試みられている.再生可能エネルギーでは風力発電と太陽光発電の導入が進展し, 総発電量に占める再生可能エネルギーの比率は約40%に達している.

サービス産業においては観光業が重要な役割を果たしている.コロナ禍前の2019年には年間約5,200万人の観光客を受け入れ, 観光収入は約345億ドルに達し, 世界第6位の観光大国であった.地中海・エーゲ海沿岸のアンタルヤ, ボドルム, チェシュメといったリゾート地や, イスタンブールのハギア・ソフィア, ブルーモスク, トプカプ宮殿, さらにカッパドキアの奇岩群などは国際的な観光資源として高い吸引力を持つ.また金融, 通信, 小売も成長を続け, サービス業全体でGDPの約55%を占めている.

金融業では, イスバンク[Türkiye İş Bankası], ガランティBBVA[Garanti BBVA], アクバンク[Akbank], ヤプ・クレディ[Yapı Kredi]などの大手銀行が市場を主導する.イスタンブール証券取引所[Borsa İstanbul]は新興市場の中でも重要な役割を果たしており, 時価総額は約4,000億ドル規模に達している.

総じてトルコ経済は多様化しており, 農業から工業, さらにサービス業へと構造転換を遂げつつある.過去20年間の平均GDP成長率は約5%で推移し, 一人当たり所得も上昇傾向を示してきた.しかし同時に, エネルギー輸入依存, 慢性的なインフレーション[2023年には一時60%を超過], トルコリラの為替不安定性, 高い対外債務依存といった課題を抱えており, これらが中長期的成長の制約要因となっている.特に2018年以降のリラ急落は輸入コストを押し上げ, インフレを加速させ, 金融政策運営を困難にしている.また, 政治的不安定性や地政学的リスクも投資環境に影響を与えており, 持続的な経済発展のためには構造的課題の克服が不可欠である.

主要企業

世界遺産など

 

posted by N.T.Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.

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