ぶらぶら絵葉書

堀川団地[堀川商店街を内包する商住複合団地]は, 京都市上京区堀川通今出川以南, 西陣地域に位置する戦後初期の集合住宅団地であり, 戦災を免れた京都においても顕著であった住宅不足の解消と, 都市中心部における生活機能の再建を目的として建設された.戦前, この地には堀川通沿いに堀川京極商店街と呼ばれる繁華な商店街が存在したが, 第二次世界大戦末期に実施された建物疎開によってその多くが失われ, 空地化した.堀川団地は, その跡地利用として構想されたものであり, 伝統的商業地区の再生と近代的生活空間の導入とを同時に実現しようとする, 都市再編の実験的試みであった.

建設は1950[昭和25]年から1953[昭和28]年にかけて京都府および京都府住宅協会によって進められ, 全6棟が段階的に完成した.団地群は北から順に上長者町団地・出水団地3棟・出水団地2棟・出水団地1棟・下立売団地・椹木町団地の計6棟で構成され, 堀川通の東側に連続的に配置された.各棟は鉄筋コンクリート造3階建または4階建で, 1階を店舗, 2階・3階を住宅とする店舗併用集合住宅, いわゆる下駄履き住宅団地として計画された.これが現在堀川商店街として知られる空間の原型である.

1階の店舗には, かつての堀川京極商店街の商人たちが多く入居し, 戦前からの商業機能の連続性を部分的に継承した.これにより, 戦後の復興過程で失われた地域コミュニティと経済的基盤を再構築する役割を担った点に, 堀川団地の社会的意義がある.また, 住民と商人が同一建物内に共存する構成は, 生活空間と生業空間を有機的に結びつけるものであり, 都市の自立的な再生をめざした戦後初期の社会的実験でもあった.

建築的には, 簡潔な水平線を基調とするモダニズム的構成を採り, 瓦屋根や出桁といった伝統的意匠を排した機能主義的造形が採用された.一方で, 軒高を抑えて街路景観のスケール感を維持し, 連続するアーケードによって歩行空間の一体性を確保するなど, 京都の都市景観との調和を重視する設計上の工夫も見られる.このように, 堀川団地は, 伝統都市の構造を尊重しながら近代建築技術を導入した, 京都的モダニズムの初期的表現と評価される.

堀川団地の計画は, 戦前の長屋型街区を刷新しつつも, 既存の路地ネットワークを部分的に継承しており, 単なる住宅供給ではなく都市構造の再編成を伴う都心再開発型団地の嚆矢であった.1950年代以降, 日本の住宅政策は郊外型団地[後の千里・多摩ニュータウンなど]へと展開していくが, 堀川団地はその先駆として, 都心居住と商業機能を融合させた都市住宅の一典型を提示した点に意義がある.

その後, 建物の老朽化と住民の高齢化が進行したため, 京都市は再整備事業を進めており, 耐震補強や住宅設備の更新のほか, 商店街機能の再生や地域交流施設の導入などが段階的に実施されている.

京都府京都市上京区桝屋町＠2014-10

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