ぶらぶら絵葉書

古地老稲荷神社

古地老稲荷神社は,東京都港区白金台一丁目の桑原坂に面して鎮座する稲荷社であり,その創建の経緯は江戸時代後期に発生した火災と深い関わりをもっている.1772[明和9]年に起きた目黒行人坂大円寺からの出火,いわゆる,目黒行人坂の大火により,江戸市中は深刻な被害を受け,周辺住民の間に火災に対する強い不安が広がった.

このような社会的不安を宗教的に鎮めようとする動きが起こり,1829[文政12]年,火伏せを祈願するために古地老稲荷[当時は「古地郎」または「古地楼」とも表記されていたとされる]が,現在の白金台・日吉坂上付近に設置された.設置後,周辺で火災が起きなくなったという事実が霊験として受け止められ,火伏せの稲荷として地域に広く認識されるようになった.

神社はその翌年,1830[文政13]年に社殿が造営されたとされ,1915[大正4]年には現在地である桑原坂沿いに遷座された.この地は,八芳園の北縁に接する閑静な住宅地に位置し,白金台の高台の端部にあたる.

社号である古地老[こじろう]の由来については諸説あるが,確たる史料的裏付けは乏しく,口碑的伝承によってその名が残されてきた.創建事情や祭神の詳細も明確には記録されていないが,火伏せの神としての信仰が地域に定着している点は確かである.

現在の古地老稲荷神社の境内は,石鳥居と玉垣に囲まれ,朱塗りの複数の鳥居が参道を形成し,その奥に小規模な木造の社殿が鎮座している.稲荷社に特有の狛狐像が両脇を守護しており,神前には素朴ながら手入れの行き届いた空間が広がっている.社殿には伝統的な彫刻や意匠が施され,地域の民間信仰の痕跡を現在に伝えている.

@2016-12


今日も街角をぶらりと散策.
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