春日大社赤糸威鎧

春日大社には赤糸威鎧2口が伝わるが、こちらはそのうちの源義経が奉納したと伝えられる大鍬型赤糸威竹に虎金物の鎧。こうした大鎧は平 将門、藤原純友による承平天慶の乱(10世紀)には完成されていたと考えられている。東国は武家の揺籃の地だったが、大鎧も挂甲が東国などで改良されて京へともたらされ優雅さに磨きが掛かり、再び東国へと還流していったのだろう。鎧の左右の開いている場所、ここは矢壺と呼ばれる鎧のアキレス腱。矢が射込まれるのを防ぐために、左には鳩尾板と呼ばれる金属板、右には栴檀板という弓を引くことを考慮した板が付けられた。この時代の大鎧としては鎌倉時代作で厳島神社に伝わる『浅黄綾威鎧』も是非見ておきたい。

第1次国宝シリーズ/第4集/鎌倉時代/1968年9月2日発行