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ミニマックス原理

次のような利得行列で表現出来るゲームを考える。

    プレイヤー2
    1 2 3 min max
プレイヤー1 1 4 -1 -2 -2  
  2 -3 0 3 -3  
  3 3 1 2 1 1
  max 4 1 3    
  min   1      


プレイヤー1が最大化プレイヤーであり、プレイヤー2が最小化プレイヤーである。
ここで、プレイヤー1が$i=1$という戦略を採ったとするとその時に考えられる最悪の状態は、最小化プレイヤー2が


\begin{displaymath}
min(4,-1,-2)=-2
\end{displaymath} (6.2)

となる戦略$j=3$を採ることである。
同様にして、プレイヤー1が$i=2$を採った際の最悪の状態は、


\begin{displaymath}
min(-3,0,3)=-3
\end{displaymath} (6.3)

となる。
そして、プレイヤー1が$i=3$を採った際の最悪の状態は、


\begin{displaymath}
min(3,1,2)=1
\end{displaymath} (6.4)

となる。
従って、プレイヤー1にとって、考えられる最悪の状態の中で最良の戦略は


\begin{displaymath}
max(-2,-3,1)=1
\end{displaymath} (6.5)

となる戦略$i=3$を採ったときとなる。
一般に、利得行列$A=(a_{ij})$が与えられた時、最大化プレイヤー1は相手が利得を最小化しようとしていることを考慮して、自分が戦略$i$を採った時に最悪の場合でも得られる利得


\begin{displaymath}
max(a_{i1},a_{i2},\cdots,a_{in})=min_{j} a_{ij}
\end{displaymath} (6.6)

を考える。この値をプレイヤー1の戦略$i$についての保証水準(security level)という。
プレイヤー1は戦略の集合$\Pi_{1}=\{i\}$の中から適当な戦略を選んで、この保証水準の中から最大のものを採ることが可能。そして、その値が保証される利得の最大値ということになる。


\begin{displaymath}
max(min_{j} a_{1j},min_{j} a_{2j},\cdots,min_{j} a_{mj})=max_{i} min_{j} a_{ij} = v_{1}
\end{displaymath} (6.7)

この$v_{1}$を利得行列のマックスミニ値(maximin value)といい、プレイヤー1の戦略をマックスミニ戦略(maximin strategy)という。
このような最大化プレイヤーの行動原理をマックスミン原理(maximin principle)といい、逆に、その裏返しの最小化プレイヤーの行動原理をミニマックス原理(minimax principle)という。

定義 (ミニマックス原理)
ゲーム理論における合理的選択の基準の1つ。戦略を決定するに当たって、相手側の戦略(行動)で結果が最大利得となる場合同士を比較して、その中で自身の損失を最小化する行動を選択するという行動基準のこと。

定理 (ミニマックス定理)
ゼロサム2人ゲームで両プレーヤーが自身の利得を最大化あるいは損失を最小化するよう、すなわち、「最悪の選択肢のうちで、最善の対応を選ぶ」ように、それぞれマクシミン原理とミニマックス原理に沿って行動したとき、そのゲームが鞍点を持つならば純粋戦略で均衡点を見出すことができる。鞍点が存在しない場合も混合戦略の組み合わせと確率をミニマックスで考えると、両プレーヤーにとっての最適戦略(妥協点)が見つかる。

ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)が1926年にゲッチンゲン数学協会で行った講演で最初に示された。その内容は1928年の論文『Zur Theorie der Gesellschftsspiele』(室内ゲームの論理)に公表された。

定義 (ゼロサムゲーム)
各プレーヤーの利得(正負の支払い)の総和がゼロになるゲームのこと。一部プレーヤーの受け取りが、そのまま残りのプレーヤーの支払いとなる。

ゼロサムゲームにおいては、ミニマックス解(同じことだが、マックスミニ解)がナッシュ均衡となる。


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平成23年5月2日