
REAグループ(REA Group Ltd.)は、オーストラリア・ビクトリア州メルボルンの近郊都市リッチモンド(Richmond)を本拠とする、主に住宅・商業用不動産のオンライン広告プラットフォームの運営や、不動産関連データ・金融サービスの提供を行う企業。メディア大手のニューズ・コーポレーション(News Corp)が過半数(約61%)の株式を保有。時価総額は約約155億米ドル(2026)。
REAグループ(REA Group Ltd.)の起源は、1995年にオーストラリア・メルボルン東部の郊外ドンカスターにある一軒のガレージで立ち上げられた不動産情報サイト「realestate.com.au」に遡る。事業を興したのは、カール・サブリャク(Karl Sabljak)とその妻カーメル・サブリャク(Carmel Sabljak)、カールの兄弟であるスティーブ・サブリャク(Steve Sabljak)、そしてビジネスパートナーのマーティン・ハウエル(Martin Howell)の4人である。カール・サブリャクとハウエルは、当時ロイヤル・メルボルン工科大学(RMIT)でコンピューターシステムの管理業務に従事しており、1995年8月にrealestate.com.auのドメインを登録したのが事業の始まりであった。当時のオーストラリアでは家庭へのインターネット普及率は極めて低く、不動産広告といえば新聞の折り込みや紙面の分類広告が主流であった。そうした状況の中、物件情報をオンライン上で検索可能な形にするという着想は、まだ海のものとも山のものともつかない事業構想であった。設立当初のオペレーションは小規模で、資金も潤沢とは言えない中での船出であったが、この着眼こそが後にオーストラリア最大の不動産情報プラットフォームへと成長する礎となる。
創業初期の事業拡大にあたっては、マッコーリー銀行(Macquarie Bank)からの出資を受けるなど、外部資本の導入も進められた。そして創業からわずか4年後の1999年、同社はオーストラリア証券取引所(ASX)に株式を上場する。上場時の時価総額はごく小規模なものであったが、これは同社が単なるベンチャー企業から公開企業へと脱皮する重要な転機であった。もっとも、2000年前後のいわゆるドットコムバブル崩壊の余波は同社にも及び、経営基盤の強化が急務となる。この局面で転機となったのが、2001年にニューズ・コーポレーション(News Corporation)傘下のニューズ・コーポレーション・オーストラリアが出資に応じたことである。同年、サイモン・ベイカー(Simon Baker)が最高経営責任者に就任し、2008年までの7年間にわたって同社の舵取りを担うことになる。ベイカーの在任期間中、同社は単一のオーストラリア国内ウェブサイトから、複数国で事業を展開するグローバル企業へと変貌を遂げていった。2004年までにニューズ・コーポレーション・オーストラリアの持株比率は44%に達し、同社の経営における同グループの存在感は一段と強まった。
2000年代半ばに入ると、realestate.com.auは月間数百万人規模のユニークビジター数を獲得し、オーストラリア国内における不動産情報サイトとしての地位を確立していく。2007年は同社にとって対外展開の画期となった年であり、香港最大の英語系不動産情報誌を発行していたスクエアフット(SquareFoot)を買収し、アジア市場への足掛かりを得た。同じ年には、イタリアのカーサ・イット(casa.it)の株式の過半を取得したほか、ルクセンブルク、フランス、ドイツ、ベルギーで不動産サイト群を運営していたアットホーム(atHome)グループも傘下に収め、欧州大陸への進出を果たしている。国内向けには商業用不動産に特化したリアルコマーシャル・ドット・コム・ドット・エーユー(realcommercial.com.au)を立ち上げ、住宅用不動産だけでなく商業用不動産分野にも事業領域を広げた。
もっとも、この急速な国際化の過程で経営体制にも変化が生じている。2008年、取締役会はベイカーを最高経営責任者の職から解いた。同年12月には社名を「realestate.com.au Ltd」から「REA Group Limited」へと改称し、単一サイトの運営会社という枠組みを超えた企業グループとしての性格を鮮明にした。
2010年、同社はrealestate.com.au向けの初めてのiOSアプリケーションを公開し、スマートフォンを通じた不動産検索という新たな利用形態に対応した。2011年にはカーサ・イットの完全子会社化を完了し、イタリア事業における足場を固めている。2013年には中国語圏市場を意識したmyfun.comを立ち上げ、アジアでの事業展開をさらに加速させた。
2014年は同社にとって北米市場進出の起点となる。米国の不動産情報サイトrealtor.comを運営するムーブ(Move, Inc.)の株式20%を取得し、これが北米市場への初めての本格的な参入となった。2016年には、マレーシアを拠点とする東南アジアの不動産情報企業アイプロパティ・グループ(iProperty Group)およびブリックズ・ドット・エムワイ(Brickz.my)を買収し、タイのシンク・オブ・リビング(thinkofliving)やプラカード・ドット・コム(Prakard.com)も傘下に加えた。同年、国内ではフラットメイツ・ドット・コム・ドット・エーユー(flatmates.com.au)を買収し、シェアハウス向けサービスにも進出している。
2017年には、インドの不動産デジタルマーケティングプラットフォームであるエララ・テクノロジーズ(Elara Technologies)に出資し、同社が展開するハウジング・ドット・コム(Housing.com)やマーカーン・ドット・コム(Makaan.com)といったブランドとの関係を築き始める。2018年にはこの出資比率をさらに引き上げ、2020年には支配的な持分を取得するに至った。同じく2018年、金融機関向けに不動産データサービスを提供するホームトラック・オーストラリア(Hometrack Australia)を完全子会社化し、広告事業に加えてデータ分析事業を経営の柱の一つに育てる方針を明確にした。この事業は後にプロップトラック(PropTrack)というブランドへと発展していく。
2021年5月、同社は東南アジア(マレーシアおよびタイ)における事業資産を、同地域の競合であったプロパティグル(PropertyGuru)へ譲渡し、その対価としてプロパティグル株式の18%と取締役会の議席を取得するという事業再編を実施した。長年にわたり地域の主導権を争ってきた両社が、資産統合という形で決着をつけた出来事である。同じ2021年には、住宅ローンの申込・電子申請サービスを手がけるシンポロジー(Simpology)の株式34%を取得するなど、不動産検索という中核事業から金融サービス領域への事業拡張も進めた。
2024年9月、REAグループは英国の不動産情報サイト大手ライトムーブ(Rightmove)に対する買収提案を検討していることを明らかにし、ライトムーブの株価は一時大きく上昇した。結果として正式な買収提案には至らなかったものの、この一件は同社が国内市場にとどまらず、世界の不動産テクノロジー業界における主要なプレーヤーとして認識されていることを改めて示す出来事となった。経営体制の面では、長らく最高経営責任者を務めたオーウェン・ウィルソン(Owen Wilson)が2025年10月をもって退任し、翌11月からはキャメロン・マッキンタイア(Cameron McIntyre)が新たな最高経営責任者に就任している。
第1版:2026-09-04.
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