NIPSEA Groupは,日本ペイントグループのアジア事業体の中核であり,建築[装飾]塗料,自動車補修・自動車用コーティング,工業用コーティング,海洋・重防食など幅広い分野で製品・ソリューションを提供する企業群である.持株会社である日本ペイントホールディングスの事業セグメントの一つとして位置づけられ,拠点はシンガポールに置かれている.
同グループの起源は1962年に遡る.日本ペイントとシンガポールのWuthelam Holdings[ウットラム・ホールディングス]が合弁でアジア展開のために発足させたのがNIPSEAであり,その名称は「Nippon Paint Southeast Asia」の頭字語である.Wuthelam Holdings[ウットラム・ホールディングス]は,シンガポール国籍のGoh Cheng Liangが設立した企業グループで,一族が所有している.Goh Cheng Liangは1955年にシンガポールで開業し,日本ペイントのディストリビューターとなった後,1962年に日本ペイントと合弁でNIPSEAを設立するに至った.現在は総帥のゴー・ハップジン氏[東京大学工学部卒業]が率いており,現在のウットラムグループは,投資業を営む資産管理会社として位置づけられている.
最初の合弁会社設立後まもなく日本国外で最初のニッペン工場が建設され,以後この合弁体は東南アジアでの事業基盤を拡大した.1970年代にはタイ,マレーシア,フィリピンなど東南アジア各国へ展開を進め,1980年代には自動車・電機産業のアジア進出に合わせて自動車用・工業用コーティング事業を拡大した.1992年には中国本土市場に参入し,その後ベトナム,インド,スリランカ,トルコ,エジプトなどへも事業領域を広げている.こうした段階的拡張は,アジアにおける装飾用塗料から産業用コーティングまでの総合供給体制を確立するうえで決定的であった.
資本関係と統治の面では,長らく合弁体として運営されてきたが,2014年に日本ペイントホールディングスがNIPSEA事業を連結子会社化し,2021年1月に完全子会社化を完了した.この完全子会社化の前段となったのが,2020年8月に公表されたウットラム・グループとの複雑な資本取引である.この取引では,日本ペイントホールディングス側がアジア合弁事業の持分を100%に引き上げ,インドネシア事業を取得することに合意した一方で,Wuthelam側は日本ペイントが発行する第三者割当増資を引き受けて出資比率を39.6%から58.7%に引き上げ,日本ペイントを子会社化した.この結果,現在ではNipsea International Limited が日本ペイントホールディングスの議決権の55.07%を所有する親会社として位置づけられている.
この取引の特異性は,日本ペイントHDが自己資金をほとんど使うことなく,ウットラムとの合弁だったアジア事業[日本ペイントHDが51%,ウットラムが49%出資]を完全に買収できる仕組みとなっていることである.つまり,ウットラムとの合弁事業の買収資金をウットラム自身から調達したという構造である.
現在のNIPSEA Groupは,アジアを中心に多数の国・地域で事業を展開し,日本ペイントグループの成長ドライバーとして位置づけられている.日本ペイントホールディングスの開示では,NIPSEA Group[Asia]の2024年度売上収益は9,144億円であり,同セグメントは22の国・地域で事業を営むとされる.2021年1月にアジア合弁事業100%化が完了した現在の資本構造では,NIPSEA事業とインドネシア事業は日本ペイントホールディングスの完全支配下にある一方で,日本ペイントホールディングス自体はWuthelam Holdings傘下のNipsea International Limitedが過半数を保有する構造となっている.
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